LIFULLのAI戦略、予測分析はマーケティングをどう変えるのか?:オーディエンス分析プラットフォーム「AIXON」を導入(1/2 ページ)
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLはAI(人工知能)をどう活用しているのか。同社のデータ戦略責任者に聞いた。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(以下、HOME’S)」の運営で知られるLIFULL(ライフル)は、2017年10月に台湾発のテクノロジー企業であるAppier(エイピア)が提供するAIプラットフォーム「AIXON(アイソン)」を導入している。AIXONはAIを活用したオーディエンス分析に強みを持ち、コンバージョン予測やキャンペーンレスポンス予測、類似ユーザー推定など、マーケティングに必要なさまざまな予測分析を、専門知識がなくても使える分かりやすいUIで提供してくれるものだ。
LIFULLは、設立20年に当たる2017年に「あらゆるLIFEを、FULLに。」という新たなビジョンを掲げ、前身のネクストから社名を変更して全面的なリブランディングを実施している。同社の中期事業計画によれば、HOME'Sを核に世界一のライフデータベースを構築し、1人1人の顧客に最適なソリューションを提供するという。
そのためのポイントの1つとなるのがAI(人工知能)などのテクノロジーの活用であり、AIXON導入はその第一歩と位置付けられる。
LIFULL Chief Data OfficerでHOME'S事業本部グループデータ戦略部部長の野口真史氏に、LIFULLの事業戦略推進におけるAIの役割と今後の展望について尋ねた。
住み替えのニーズが生まれる瞬間を他社に先駆けてキャッチ
――AIXON導入の経緯を聞かせてもらえますか。
野口 HOME’Sは家を買おう、借りよう、住み替えをしようとする人を集めてマッチングするサイトです。住み替えは、進学や就職、結婚、子どもの誕生などがきっかけになります。こうしたライフイベントを捉えることが重要になってきますが、これはそう簡単ではありません。
――グループ内に就職情報やブライダル情報などのメディアを擁していている競合他社では、そこが強みになっているともいわれますが、HOME’Sが単独で住み替えをしそうな人を見つけるのはなかなか難しい。そこで、外部のオーディエンスデータを持っている事業者と協力する必要があったと。
野口 これまでも、パブリックDMPを使って、過去にコンバージョンした人と類似するオーディエンスに向けて広告を配信する取り組みは既に実施していました。ただ、実際にはどうしても精度が高くならないところがあります。さらに、他社に先駆けて住み替えしようとしている人を予測し、アプローチするには、やはりAI活用が必要になります。そこで、AIXONに白羽の矢が立ちました。
――自社で独自にAIを開発するという選択肢もあったと思うのですが。
野口 自社で全てやるとなると、まずデータサイエンティストのような専門の人材を確保する必要があります。AIのスキルセットを持つ人材はますます貴重になっています。社内でやることを諦めたわけではありませんが、独自AI開発のために事業のスピードを緩めたくはありません。そこで、外部の良いツールを使っていこうと考えました。
ユーザーのWebでの行動パターンを予測し、広告をターゲット配信
――今できることをやろうしたとき、その最適な選択肢がAIXONの導入だったというわけですね。具体的にはどういう場面でAIXONが使われているのでしょう。
野口 今回のAIXONの導入範囲はHOME'S全体ではなく、不動産会社のマーケティング支援事業が対象になります。同事業では、HOME’Sを訪れたユーザーのデータを活用し、物件を扱う不動産会社に送客を行っています。現状AIXONが使うデータは、HOME’Sのサイト内での行動ログが中心です。例えば、過去にコンバージョンにつながったユーザーの行動ログや、ページのタグに埋め込まれた閲覧物件の価格帯などをAIXONにフィードすると、AIXONが一連の行動パターンを教師データにして学習し、コンバージョンにつながる確率の高いセグメントを予測します。予測したセグメントに対し広告を配信するようにすれば、より高い確率でコンバージョンにつながるはずです。一度作ったセグメントは再利用することもありますし、違うものを作ることもあります。継続的なメンテナンスが不可欠な精度の高いモデリングを、深層学習のテクノロジーを使い効率的に行える仕組みができたと考えています。
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