法人向け企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」がABMを視野に入れる理由――佐久間 衡氏(ユーザベース):リード研所長が聞く(1/3 ページ)
企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」で、マーケティング領域での活用を視野に入れたサービスが始まっている。同社の狙いを事業責任者に聞いた。
リード研究所とは
マーケティング×ITの最先端の動向をB2B中心にお伝えしているITmedia マーケティングですが、発行元である当社アイティメディア自体もまた、「TechTargetジャパン」「キーマンズネット」といったメディアを核にした「リードジェネレーション」を事業とするB2B向けデジタルマーケティングカンパニーとしての一面を持っています。
具体的には、コンテンツを閲覧した会員のプロファイル情報を、関連商品に興味関心を抱くリード(見込み客)情報として、本人のパーミッション(同意)を得た上でスポンサー企業に提供しています。
そこでサービスの企画開発とコンサルティングを担う社内シンクタンク的存在が「リード研究所」なのです。
この連載では、アイティメディア リード研究所所長の小柴 豊が、B2Bマーケティングの現在とこれからについて、業界のソートリーダーに話を聞きます。
今回は、企業・業界分析のオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」を展開するユーザベースを訪問します。同社は2008年、外資系投資銀行に勤務していた梅田優祐氏と新野良介氏、そして梅田氏と高校の同級生であった稲垣裕介氏の3人で創業。B2B向けの企業・業界情報プラットフォームであるSPEEDAで頭角を現し、2013年には経済ニュースプラットフォームの「NewsPicks」を開始(2015年に分社化)。両事業を核に知名度を高めつつ、順調に業績を伸ばしています。2016年9月にはセールスフォース・ドットコムおよびSansanと連携し、SPEEDAに「自動ターゲティング」機能を追加するなど、気になる動きを見せています。「経済情報で、世界をかえる」というミッションを掲げる同社が目指す世界とは何か、そしてABM(アカウントベースドマーケティング)に取り組むB2BマーケターにとってSPEEDAがどのような役割を果たすのか。日本事業統括執行役員の佐久間 衡氏に話を聞きました。
原点は「超ニッチだけど自分たちが欲しいサービス」
小柴 佐久間さんはもともと、共同経営者の梅田さん、新野さんと同じ会社にいらっしゃったとか。
佐久間 衡
さくま・たいら 京都大学大学院で数学を専攻。研究者を志していたが、インターンシップでその業務の幅広さと奥深さに魅かれ、外資系投資銀行の投資銀行部門に入社。以来、6年にわたって東京、ロンドンで財務戦略アドバイザリー業務に従事し、20件以上のM&A案件、資金調達案件を手掛ける。自身の経験をより広い分野に応用する職を探している際、知り合いだったユーザベース経営陣の誘いを受け、ユーザベースへの転職を決断。
佐久間 はい。私はM&Aや大規模資金調達のアドバイザー業務をしていて、そこで新野や梅田に出会いました。ユーザベースの設立は2008年で、私は2013年から一緒にやっています。SPEEDAの事業は、もともとは戦略系のコンサルティングファームや投資ファンドなどを対象に始まりました。
小柴 超ニッチなマーケットですよね(笑)
佐久間 日本だと大手は30社くらいしかないですね。ただ、ニッチではありましたが、自分たちが求めているサービスだという肌感覚があって、価値を提供できると思っていました。投資銀行では、毎日提案書を作ります。そのときに、その企業に関するありとあらゆる情報を集める。Googleも使うし、国会図書館などにも行って、いろいろなレポートをかき集める。こういった情報収集活動に数時間、下手すると数日かかることもあって、提案書作成の前段階で徹夜になってしまうような状態だったんですよね。しかも、集めた資料は見やすいフォーマットにはなっていない。情報を取ってくるのも加工するのも大変。そこを何とか解決できないか、というのがSPEEDAの発想です。
小柴 具体的にはSPEEDAでどういったことが調べられるのでしょうか。
佐久間 SPEEDAはすごくシンプルなサービスです。財務データや市場規模などの統計データ、企業に関するニュースといった情報を、いろいろなところから取得し、SPEEDAに集約しています。そして、Googleで検索するように欲しい情報をワンストップで簡単に探せる。さらに、そこで出てきたデータはワンクリックで「Microsoft Excel」のファイルにダウンロードできるし、PDFや「Microsoft PowerPoint」のファイル形式で企業概要のレポートも簡単に作れる。これがSPEEDAの価値です。情報収集から加工、分析、企画というバリューチェーンの前半部分を自動化できるので、SPEEDAを使うことで、よりビジネスパーソンが分析や企画に時間を割け、付加価値を出せる、ワクワクする仕事に集中できることを目指しています。
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