手軽なツールの導入でマーケティングを余計に難しくしていないだろうか:【連載】コンテクストマーケティング序論 第2回(1/2 ページ)
企業のWebサイトにおいて、コンテンツを的確に届けるというニーズが高まっています。今回はそれを実現する上で、どういうツールを選定すればよいのかを考えます。
前回、インターネットの活用シナリオが時代とともに変化していることを説明しました。また、単なる「Webマーケティング」がチャネルを超えてユーザーごとに最適化した「デジタルマーケティング」に進化する中で、最大限の効果を引き出すためのツールの選択が重要になってきていることを述べました。
今回はそうしたマーケティングツールの中でも広く使われるアクセス解析ツールを題材に、手軽な運用が長期的にどういう影響を与えるのか、事例を踏まえながら解説します。
手軽なマーケティングツールの功罪
Webサイトを運用している会社において、アクセス解析ツールは最も身近なマーケティングツールとなっています。これは基本的にはページビュー(PV)やユニークユーザー(UU)などを定量的に計測する採用します。
アクセス解析ツールは比較的古くから活用されています。特に2005年にGoogleが買収したUrchinの製品を活用して「Google アナリティクス」のサービスして以降は、無料で利用できることもあり、多くのWebサイトにおいてGoogle アナリティクスが標準のアクセス解析ツールとして利用されるようになりました。
それ以外にも企業向けのアクセス解析ツールが幾つか提供されており、ニーズに合わせて採用されていますが、多くのツールは、JavaScriptを埋め込む、もしくは小さな画像を埋め込んでその表示回数でアクセス解析を実行する仕組みになっています。最近は、ストレージコストが下がってきたことや、BIツールが手軽に利用できる環境が整ってきたこともあって、サーバ側でデータを蓄積してアクセス解析できるものもあります。
コードを埋め込むタイプのツールでは、該当ページ全てに何らかのコードを記載し、レポートを確認するためには別のツールで参照するという運用になります。Webサイトの運用にCMS(コンテンツ管理システム)を利用している場合、フッターなどにコードを一括で入れるなこともできるので、比較的簡単に利用できます。
しかし、手軽に利用できるということは、手軽に間違った運用をしてしまうことにもつながります。とある企業のWebサイト担当者と話したときに聞いたのですが、その会社では部門によって使いたいアクセス解析ツールが異なるため、サイト内で複数のJavaScriptが埋め込まれることになったそうです。もともと部門ごとに別のサイトを持っており、それぞれの担当者のこだわりのツールが別々に採用されていったのですが、その結果として各サイトが共通して載る大本の企業サイトにも影響が出てしまい、運用が非常に複雑になっているとのことでした。
また別の会社では、PVが多過ぎてGoogle Analyticsが無料で使えなくなることが危惧されるため、一定のPV/UUを超えないように、チェックするデータを減らしているという本末転倒な運用をしていました。
どちらのケースも、アクセス解析をすること自体が目的化しており、解析したデータをどう活用するのかというところまでたどり着いていないのです。
データをどのように活用するか
アクセス解析に限らずマーケティングツールは比較的安価なサービスが多いため、さまざまなツールをパッチワークのように組み合わせて活用している企業も多くあります。
しかし、手軽に導入できるからと次々とツールを増やしていくものの、継続してデータをどう使っていくのか、本当にそのツールは必要なのかということがきちんと検討されないために、当初は想定していなかった時間やコストが掛かってしまう場合があります。ツールを手軽に採用するのはいいのですが、利用の仕方を見直すプロセスが抜けてしまってはいけません。
デジタルマーケティングを実践していく上では、幾つか不可欠な要素があります。具体的には、サイトの中で回遊している訪問者の「プロファイル」や、行動履歴の注目したい点を「コンバージョン」として捉え、個別の訪問者に最適な情報を提供する「パーソナライズ」を実践するといったシナリオを考えることです。つまり、単にPV/UUという「森を見る」視点ではなく、その森の中にある「木を見る」という視点の取組みです。このようなシナリオを実践するためには結局、アクセス解析ツールだけでは不十分であり、それ以外のツールも利用しなければなりません。
シナリオを実践するためのツールは数多く提供されています。「プロファイルの生成」「コンバージョンの取得」「パーソナライズをするための連係」、そして効率化を図るための「A/Bテスト」ツール。個々のユーザーのコンテクスト(文脈)に最適化した「コンテクストマーケティング」を実践するには、これだけの前準備が必要になります。
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