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ベネッセの事例が教える「大きな組織で高速PDCAを回すコツ」【連載】小川 卓の「高速PDCA」入門 最終回(1/3 ページ)

高速PDCAを実践してWebサイト改善に取り組む先進企業へのインタビュー第2弾。今回はベネッセコーポレーションの担当者に話を聞きました。

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 前回「新規Webサイトで「いきなり高速PDCA」は可能か?――「THEO」の事例に学ぶ」では、Webサイト開設時からPDCAに取り組んだ事例を紹介しました。今回は実際に筆者が改善に関わったお客さま事例の中から、大きな組織の中で新しくPDCAに取り組む体制を作ったベネッセコーポレーションの事例を、同社の早野亮輔氏と筆者の対談で紹介します。

 PDCAの理論的な部分は理解していても実際に取り組んでみると思うようにいかないと悩むWeb担当者は少なくありません。今回は特に大きな組織の中でそうした課題を抱える人に向けて、参考にしていただける内容になっているかと思います。

受注の半数以上がWebサイト経由になって

早野さんと小川さん
(写真左)ベネッセコーポレーション 営業基盤本部 チャネル開発部 デジタルマーケティング課 早野氏亮輔氏、(写真右)筆者

小川 まずは御社にとってのWebサイトの位置付けを教えていただけますか。

早野 ベネッセはもともとお客さまへのプロモーションの手段としてDM(ダイレクトメール)を活用していました。DMは現在も変わらずお客さまとの大切な接点の1つですが、DMだけでは受注することはできません。そこで2012年から2013年頃にかけて、受注メディアとしてWebサイトへの取り組みを強化してきました。現在は受注全体の半分以上がWebサイトから、その中でも若い保護者層を中心に、約6割がスマホからの受注となっています。

小川 Webサイトを運営する人員体制はどのようになっていますか。

早野 弊社はカンパニー制という組織体制を取っています。私自身はゼミカンパニーというところに所属して「進研ゼミプラス」や「こどもちゃれんじ」のサイトの編集、運営をしています。私のように各ゼミを横断する立場の人と、それぞれのゼミに張り付いているメンバーを合わせて30人程度の体制です。

小川 早野さんは社内横断的な立ち位置なんですね。昔からそのような体制を取られていたのでしょうか?

早野 いいえ。もともと各ゼミを担当する部署と横断的な仕事をする部署は、違う組織に属していました。しかし両者が組織として近づき連動した方が効率が上がるだろうということで、2015年から同じ体制の中に入りました。

小川 それぞれの役割について、具体的に教えていただけますか。

早野 各ゼミの課は、幼児、小、中、高の年代別に入会と資料請求を促すことを主なミッションとしています。一方で社内横断的な課は、年代にとらわれない動きやテレビCMからの送客の他、各エリアや店舗事業への送客がミッションに含まれます。私はというと、共通の基盤整備や計測回りの整備、そして今回のテーマでもあるPDCAを横断的に回す役割ですね。

小川 そのような役割の中で、早野さんの部署の具体的なゴールは送客ということになるのでしょうか。

早野 私以外のメンバーは各ゼミへの送客がゴールです。横断的な受け口として、入会の手前で発生する資料請求をグループのKPIとしています。他にはイベントの予約数や体験授業をKPIとしているグループもあります。その中で私は各ゼミの入会数がKPIです。先ほどお伝えした基盤を整えるという役割を通して、どれくらい効率化できているかというところを見ています。

小川 早野さん自身は当初からそういう役割だったのでしょうか?

早野 いいえ、前職はWebのプロモーションを担当していました。ベネッセに来た当初は英語教材担当で、その次はシステム開発部と、いろいろ経験しています。社内にはシステム開発をする組織がありませんので、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)的なことをしていました。

 今の業務を担当するようになったのは昨年(2015年)からです。2012〜2013年頃からWebへの取り組みを強化してきましたが、当初はゼミ、カンパニー、サービスごとにそれぞれが計測、改善をしていました。それを全横断的な取り組みにしようという課題感、基盤を整える必要性が出てきてアサインされました。

既存のサービスを尊重して社内横断的な調整をスムーズに

小川 私もリクルートで社内横断的な調整をする部署にいたので、早野さんの苦労が分かります(笑)。会社全体と各ゼミでは必ずしも利害関係が一致しないという悩みがあると思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

早野 リソースの配分はやはり入会数にコミットするところが優先されます。マス連動に関しては均等配分です。コーポレートサイトでの露出に関しては確かに“言ったもん勝ち”のようなところもありますね。

 ただ、これまで各ゼミで個別最適化していたものを壊すつもりはなく、既存の価値に全体の観点という付加価値を付けて拡大していきたいと考えています。それぞれのゼミを尊重しながら他ゼミの知見も共有でき、ベネッセグループ全体でお客さまがどのように動いているのかが見えるようになるということで、各ゼミの理解も得られています。

小川 計測周りの整備も早野さんの役割だとおっしゃっていましたが、計測ツールの運用管理は社内横断のチームで担当されていますか。

早野 はい。社内からの問い合わせや分析・解析に関する相談にもそのチームが対応しています。

小川 逆に、社内に対して「こういう解析結果が出たんだけど、使ってみない?」という働きかけをすることはありますか。

早野 自分が直接的にコミットしているところ以外は受け身が多いです。「こんな数字取れますか?」という相談を社内からもらって動くといった感じですね。そのような形でコンスタントに連絡を取るのは50人くらいでしょうか。サイト数でいうと200サイトほどが対象になります。

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