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一時は赤字転落も アシックスのV字回復を支えた「ブランド構築」の考え方(1/3 ページ)

一時は赤字に転落しながらも、いまや営業利益が1000億円を超え、海外売上比率は80%以上まで成長し、見事なV字回復を遂げたアシックス。その裏には、ものづくり企業としての誇りを守りながらも、顧客目線でグローバルブランドとしての信頼を積み上げた変革の物語があった。

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 一時は赤字に転落しながらも、いまや営業利益が1000億円を超え、海外売上比率は80%以上まで成長し、見事なV字回復を遂げたアシックス。その裏には、ものづくり企業としての誇りを守りながらも、顧客目線でグローバルブランドとしての信頼を積み上げた変革の物語があった。

 同社の事例には日本企業がグローバルで戦うためのブランド戦略のヒントが詰まっている。そこで本記事では、グローバル・イノベーション・ファーム I&COが開催したイベント「I&CO Foresight’s 25 日本を再び、世界の舞台へ」の第2部「Making Japan Matter - グローバルで真価を発揮するブランド戦略」から、アシックス常務執行役員の甲田知子氏と、競争戦略を専門とする一橋大学特任教授の楠木建氏が語り合ったセッション内容をお届けする。モデレーターは、I&CO APACでCOOを務める間澤崇氏。

ブランドは、真っ当な企業活動に対する顧客からの“ご褒美”

 「ブランドの本質を捉えるには、“微分的”と“積分的”という2つの発想があります」

 楠木氏はこう語る。微分的なブランディングとは、短期の変化率に注目して「認知度が上がった」「好感度が上がった」といった手近なKPIで成果を測ろうとするものを指す。結果、インフルエンサーを使って無理やりバズらせるような、安直な施策に手を出しがちだ。

 他方、長期にわたってビジネスのあらゆる場面で顧客視点に立ち、日々の努力を積み重ねながら信頼の総量を増やしていこうと考えるのが、積分的なブランディングだ。

 「商売で努力した結果、事後的なご褒美として発生するのがブランドであり、長きにわたって良い商売をした証として、強いブランドが生まれます。間違っても『商売を楽にするためにブランドを強くしよう』などと、微分的に考えるべきではありません」と楠木氏は強調する。つまり、ブランディングは企業の強さの“原因”ではなく“結果”であり、“ブランディング”よりも“ブランデッド”といったほうが正しいというわけである。

 この積分的なブランディングの視点に立つと、ブランドの構築には、広報やマーケティングのようなブランドを活用する部門だけでなく、全ての従業員が関与していると考えられる。楠木氏は一例として、ファーストリテイリングを挙げた。

 同社では「LifeWear(究極の普段着)」という企業理念が全従業員に浸透しているからこそ、商品構成や棚割りはもちろん、サプライヤーとの関係構築や出店計画のような企業活動の隅々にわたって「LifeWearだからこれはやるけれど、LifeWearだからこれはやらない」という明確な判断基準があり、誰もが企業理念を体現できている。それがじわじわと企業の外へと染み出し、顧客に伝わることで、ブランドがつくられていく。

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