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「再現性がない」と言わせない マーケKPIを徹底的に管理する方法顧客起点でLTVを最大化するトヨクモのマーケティング戦略(1/3 ページ)

今回はトヨクモ流のKPI設計、組織運営、部門連携、日々の業務プロセス、そしてそれを支えるテクノロジー活用の「型」について、実践で培われたノウハウを解説します。

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中井康喜(なかい・やすよし)

トヨクモ マーケティング本部 プロモーショングループ/StrategicGrowthグループ マネージャー


 マーケティング施策を実行しても、成果が安定しない、再現性がない……そんな悩みを抱えるマーケターは少なくなありません。その背景には、個々の能力に依存し、「成果を出し続ける」ためのマネジメントや仕組みが確立されていないケースが多くあります。

 安否確認サービス2やkintone連携サービスを提供するトヨクモでは、「顧客起点」を徹底しながら、継続的に成果を上げるためのマネジメント・仕組みづくりに注力しています。今回の記事では、KPI設計、組織運営、部門連携、テクノロジー活用といった「マネジメントと仕組み」の観点から、再現性のある成果を生み出す秘訣を解説します。

「顧客起点」を貫く トヨクモ流KPIマネジメント

 成果を出し続ける組織において、KPIは単なる数値目標ではありません。それは、チーム全体の進むべき方向を示す「羅針盤」であり、目標達成に向けた共通言語となります。適切なKPIマネジメントは、個々の活動が最終的な成果にどう貢献しているかを可視化し、属人化を防ぎ、データに基づいた意思決定を促進するための基盤となります。

 トヨクモが採用するPLG(Product-Led Growth)モデルでは、従来の営業主導型モデルで重視されがちなMQL(Marketing Qualified Lead)の「数」だけを追うことは、必ずしも本質的ではありません。PLGでは製品体験が核となるため、実際に製品(無料トライアル)を利用し価値を感じ始めた検討顧客、すなわち「PQL」(Product Qualified Lead)の質と量、そしてその後の「アクティベーション」(利用開始率)、顧客との長期的な関係性を示す「チャーンレート」(Churn Rate、解約率)「LTV」(顧客生涯価値)を最重要指標として位置付けています。

 もちろん、チャネル別のUU(ユニークユーザー数)やCVR(コンバージョン率)、コンテンツの数やエンゲージメント率、特定の広告キャンペーンにおけるCPA(顧客獲得単価)などもプロセス指標として計測・分析します。しかし、これらは常にPQLの質向上やLTV最大化という最終ゴールへの貢献度という文脈で評価されます。短期的な獲得効率だけでなく、ファネル全体を見渡し、短期(アクティベーションなど)・中期(定着率)・長期(LTV)の成果をバランスよく測る視点を重視しています。


写真はイメージ、ゲッティイメージズ

 トヨクモのKPI設計の根底には、「顧客起点の徹底が中長期的な事業成果につながる」という思想があります。これは、事業成果指標(ARR:年間経常収益)と顧客視点指標(無料トライアル数、アクティベーション率、LTV、チャーンレート)を密接に連携させることで体現しています。

 例えば、チャーンレートの低位安定は、顧客が製品価値を感じ、満足している証左であり、それ自体が重要な顧客視点の指標です。そして、チャーンレートの抑制は、そのままLTVの向上、ひいては安定的なARR成長に直結します。このように、顧客の成功(価値実感と継続利用)を測る指標が、そのまま事業の健全性を示す指標となるよう設計しています。単に売り上げやリード数を追うだけでなく、「顧客が成功しているか?」をKPIを通じて常に問い続けています。

 これらのKPIは、GA4やTRENDEMON、kintone、Google スプレッドシートなどを活用して可能な限り自動計測・可視化します。そして、週次・月次の定例会議でデータに基づき要因分析と改善アクションを議論し、その決定事項を記録・共有する。この「計測→可視化→分析→アクション→共有」のサイクルを回すこと自体を「仕組み」として定着させています。


KPI管理シートの例。マーケティング本部プロモーショングループ(画像提供:トヨクモ、以下同)

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