「再現性がない」と言わせない マーケKPIを徹底的に管理する方法:顧客起点でLTVを最大化するトヨクモのマーケティング戦略(2/3 ページ)
今回はトヨクモ流のKPI設計、組織運営、部門連携、日々の業務プロセス、そしてそれを支えるテクノロジー活用の「型」について、実践で培われたノウハウを解説します。
KPIを絵に描いた餅にしない 実行力を高める組織・連携の仕組み作り
顧客起点のKPIを設定しても、それを達成するための「実行力」がなければ絵に描いた餅になってしまいます。トヨクモでは、組織体制や部門間の連携プロセスにも「仕組み」を取り入れ、実行力を高めています。
顧客視点を根付かせるチームビルディング
本連載の第一回『「THE MODEL」から脱却して解約率0.7%を実現する過程で私たちがやったこと』で触れた通り、マーケティング関連業務は、主に「プロモーショングループ」(認知〜PQL獲得)と「Strategic Growthグループ」(PQLナーチャリング〜LTV向上)が担います。
各グループ内には専門担当(コンテンツ、デジタル、顧客サポートなど)がいますが、重要なのはチーム全体に「顧客視点」を文化として醸成・維持するための具体的な仕組みを意図的に導入している点です。
- 定例での「顧客の声」共有: サポートへの問合せ、アンケート結果、NPS、ユーザーインタビューでの発言などを定期的に共有
- ペルソナ/カスタマージャーニーマップの活用: 施策立案時に必ず立ち返り、「顧客にとっての価値」を問う
- ドッグフーディング(自社サービス利用)の推奨: 顧客目線での体験・理解を深める
- 成功/失敗事例のオープンな共有:結果だけでなくプロセスや学びを共有し、心理的安全性を確保。Slackなどでの積極的な情報共有も推奨
これらの活動を通じて、「顧客のために」という意識を日常業務の当たり前にしています。
部門連携を“仕組み”で円滑化する
PLGの成功には、プロモーション、Strategic Growth、カスタマーサポート、製品開発といった部門間のスムーズな連携が不可欠です。トヨクモでは、この連携を個人の関係性や努力に依存せず、「仕組み」として機能させることに注力しています。
具体的な仕組み
目的別・部門横断の定例会議体
「PQL→商談化率改善会議」「製品フィードバック会議」など、目的を明確にした会議を設定し、アジェンダ事前共有、ファシリテーション、議事録共有を徹底。
情報共有ルールとツール
情報共有においては、「ストック型情報/フロー型情報」と「過去/現在/未来の時間軸」の視点が重要です。ストック型(決定事項など)は蓄積と検索性、フロー型(社内メッセージや予定など)は迅速な共有を重視し、それぞれの性質に合うルールとツールを選びます(私たちは、kintone、Slack、トヨクモ スケジューラーなどを活用しています)。このような情報の特性と時間軸を考慮したルールとツール活用が、効果的な情報共有と組織の情報活用能力向上につながります。
さらに、これらの仕組みを円滑に機能させるためには、以下の「共通認識・文化」の醸成が鍵となります。
- 共通言語、共通目標:「顧客起点」「LTV」などの定義をそろえ、部門を超えた共通目標(OKRなど)を設定
- 相互理解と尊重の文化:各部門のミッションや業務内容への理解を深め、リスペクトし合う文化を育む。これは一朝一夕にはできませんが、意識的なコミュニケーション(部署紹介LT会の実施など)を通じて醸成
- 役割と責任範囲の明確化:RACIなどを参考に、連携プロセスにおける各部門・担当者の役割と責任範囲を明確にする
重要なのは、属人的な関係性に頼らずとも、必要な情報連携や意思決定がスムーズに進む「連携体制」を構築することです。
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