LINEの中小企業向け事業の現在 最新サービスと事例を知る:新サービス「LINEチラシ」も発表(1/2 ページ)
企業のマーケティング担当者にとってLINEは「大手の企業向けサービス」「費用が高そう」「運用が難しそう」なのか。LINEのSMB(中堅・中小企業)向け事業の現在についてまとめた。
LINEが2019年9月11日に開催した「LINE Biz-Day for SMB」より、LINEの広告事業におけるSMB(中堅・中小企業)向けの取り組みとこれからについてまとめた。
「人材不足」「お金」「集客」の分野でLINEができること
基調講演で最初に登壇したLINE代表取締役社長の出澤 剛氏はLINEを巡る概況と「アフターデジタル」の世界について触れた。
日本国内におけるLINEのMAU(月間アクティブユーザー)数は2019年6月時点で8100万。1日当たりのユーザー数をMAUで割ったアクティブ率(DAU/MAU比率)は86%を誇る。これまでのLINEはこの圧倒的なリーチを基に、膨大なデータに基づく精緻なターゲティング、AI(人工知能)などを駆使して主に大企業のマーケティングを支援してきた。
しかし今日、人々のあらゆる体験がデジタル化する中で、規模にかかわらずあらゆるビジネスに変革が求められるようになった。「Closing the distance」をミッションに掲げるLINEとしては、町のお店のような小さなビジネスであってもLINEのテクノロジーの恩恵を受けられるようにしたい。具体的には、「人材不足」「お金」「集客」の分野でLINEの技術やサービスが貢献し得ると出澤氏は考えている。
音声認識と音声合成、チャットbotを活用して顧客応対を自動化できれば、顧客体験向上だけでなく働き方改革という点でもメリットがある。LINEは現在、これを実現すべく飲食店の電話予約を自動化するサービス「DUET」の開発を進めている。また、町のお店のレベルでもモバイル決済の導入が少しずつ進んでいるが「LINE Pay」はこの潮流をけん引する代表的なサービスだ。そして集客の点では、2018年から進めてきた「リデザイン」でLINE公式アカウントを月額料金0円からでも始められるようにし、さらに新たなサービス(後述)を続々と投入している。
出澤氏は「ここから3年くらい、今までにないスピードで世の中が変わっていく。総合的なソリューションを提供して皆さまのお手伝いをしていきたい」と結んだ。
地域のビジネスとLINEユーザーの距離を近づけるための機能強化
次にステージに立ったLINE執行役員(広告ビジネス事業担当)の池端由基氏は、地域の事業主や店舗と消費者の距離を近づけるためにLINEの果たす役割が大きくなっていると語った。
LINE公式アカウントを通じて地域との接点を作っている事業主は首都圏のみならず日本全国に広がる。地域のビジネスによるアカウントとLINEユーザーが出合いやすい環境を作るため鍵となるのが「Local Search」機能だ。現在、LINEではホームタブやトークリスト、ニュースタブ上部の検索バーに特定の場所を入力して検索することで、指定したエリアの店舗(LINE公式アカウント開設している店)を探すことができるようにしている。また、2019年8月に始まった「OpenChat」においても、エリア軸で話題を検索できる。
2019年11月にはLocal Search機能を強化し、エリア内にある店舗のランキング表示やマッピング表示、店舗が提供しているクーポンの表示などにも対応する機能強化を予定している。
「地域・コミュニティーと密着したサービスを通じて、そのエリアのサービスとユーザーの距離を近づけることを引き続き進めていきたい」と池端氏は語る。
LINEとSMBの距離を近づけるためにやってきたこと
続いて登壇したのはLINE広告事業本部マーケットグロース事業部事業部長の川代宣雄氏だ。この1年、川代氏はさまざまな企業のマーケティング担当者にインタビューしてLINEに対する印象を尋ねた。そこで得た声で多かったのが「大手の企業向けサービス」「費用が高そう」「運用が難しそう」といったものだ。
川代氏のマーケットグロース事業部は、そうしたSMBの課題解決を担う組織として2018年10月に立ち上げられた。「どの規模の事業主にも」「予算に合わせて」「簡単に」LINEを活用してもらえるようになることを目指している。
LINEが目指すのはSMBを含む全てのビジネスがより簡単により効果的なマーケティングを実現できるようにすることだ。そのためにさまざまな機能強化も行っている。具体的には以下のような新機能が用意されている。
シンプルQ&A(スマートチャット)
LINE公式アカウントの新機能。AIを用いてユーザーからの簡単な質問に自動返信が可能になる。19のよくある問い合わせのカテゴリーに対して回答メッセージを設定するだけで、運用負荷が大きいワンツーワンのコミュニケーションをSMBでも手軽に実現できるようになる。使い方など難しい質問には有人のチャットで回答できるよう切り替えることができる。
LINE CPDスタンプ
「LINEプロモーションスタンプ」の新メニューとして、ダウンロード数×単価で配信可能な「LINE CPD(Cost per Download)スタンプ」を提供する。LINEプロモーションスタンプは従来、掲載期間を保証した出稿のみに対応していたが、従量課金型で出稿できるようになる。最低出稿額も従来の1000万円から200万円に引き下げる。ダウンロード数の指定も可能で掲載期間に縛られない柔軟な運用もできる。2019年11月にトライアルを提供開始し、その後正式リリースを予定している。
友だち追加広告(LAP)
LINE公式アカウントの友だち追加を促す「友だち追加広告」を、LINE公式アカウントの管理画面上から出稿できるようになる。予算、性別、地域、興味関心などの項目を設定して1万円からの少額出稿が可能。課金体系はCPF(Cost Per Friend)。ランディングページの作成が不要な点もコスト・運用負荷軽減につながる。広告を配信した場合に獲得できる友だちの数を管理画面上でシミュレーション表示することもできる。LINE Ads Platform(LAP)のアカウント開設は不要。2019年冬リリース予定。
予約機能
予約対応のためのツールとして「LINEチャット」を活用する店舗に向けて、各LINE公式アカウントのホーム画面上に、チャット予約に対応していることや予約の空き状況などを可視化する。2019年冬以降リリース予定。
レビュー機能
他のユーザーが利用した店舗のレビューを閲覧したり、自分が利用した店舗のレビューを入力することが可能になる。前述のLocal Searchとの組み合わせでユーザーの利便性が向上する。2019年冬以降リリース予定。
チャットコマース機能(仮)
LINEのトーク画面上でチャット形式で商品を買うことができるようになり、全ての購買体験がLINEだけで完結する。ユーザーはコミュニケーションを取りながら手軽に買い物ができ、店舗は購買をきっかけとしたユーザーとの長期的な関係構築を実現することが可能になる。2020年春以降リリース予定。
LAPにセルフサーブ機能
従来、LAP上で広告配信を行うためには、代理店を介してアカウントを開設したり、審査などの複雑な手順を踏む必要があり、それがSMBでの活用における大きなハードルとなっていた。また広告配信まで1カ月ほどのリードタイムが必要だった。これを、Webブラウザからセルフサーブでアカウント開設や配信設定、クレジットカード決済までできるようにする。2019年11月リリース予定。
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