花王とサッポロビール 実は今までLINEを使っていなかった2社が新LINE公式アカウントで実現したいこと:柔軟なアカウント運用がもたらすメリット(1/2 ページ)
2019年2月に開催された「LINE Biz-Solutions Day 2019」から、LINE公式アカウントのリデザインを機にLINE導入に踏み切った花王とサッポロビールの事例を紹介する。
2018年12月にLINEは企業向けアカウントサービスの内容を一新。5つあった企業向けアカウントサービスを「LINE公式アカウント」に一本化した。
価格体系も大幅に見直された新たなLINE公式アカウントは、ユーザー企業から見ればこれまでよりも参入の障壁が下がったといえる。主に中堅中小企業にチャンスが広がったと捉えられているが、実は大企業にとってもメリットは大きい。
これまでは一律で月額250万円のコストが必要だったこともあって、大企業であってもブランドやキャンペーンごとにアカウントを持つのは難しかった。しかし、新料金プランにおいては固定費が大幅に下がったため、目的に応じた柔軟なアカウント運用がしやすくなったのだ。
2019年2月20日に開催された「LINE Biz-Solutions Day 2019」では、今回のリデザインを機にLINE導入を決めた花王とサッポロビールの事例が紹介された。本稿ではその内容をレポートする。
やっとブランドごとにアカウントを運用できるようになった
花王コンシューマーリレーション開発部部長の鈴木愛子氏は、入社以来クリエイティブとマーケティングの両面から花王のブランディングに関わってきた。デジタルマーケティングは2017年から担当している。
意外なことに、花王ではこれまでLINEアカウントを運用しておらず、今回のサービス刷新を機にLINE導入を決めたのだそうだ。鈴木氏によれば、LINEのユーザー数の多さには以前から魅力を感じていたものの、10の事業部があり複数のブランドを抱える花王が全社で1つのアカウントを運営するのは無理があったという。
これまでの公式アカウントは基本的にメッセージを一斉配信していたため、顧客から見れば自分に関係ないブランドのメッセージはノイズにしかならなかった。例えば、紙おむつのブランド「メリーズ」の情報は子育て世代には響くが、単身者には不要だろう。
全社アカウントでは使いにくいからといって、ブランド単体でアカウントを運用するには、これまでのメニューは費用面での負担が重かった。そんな中で今回のLINEのサービス刷新は、花王にとって「渡りに船」だったようだ。
鈴木氏は「『まずはやってみよう』と判断ができるのが、リデザインのメリットの1つ」と語る。もちろん、行き当たりばったりでただやってみようということではない。だが、LINEを使う目的をしっかり持った上で気軽に新しいことに挑戦できるようになったこと自体は、大きなチャンスといえる。
花王がLINEを導入する目的として、鈴木氏はまず「顧客との接点作り」を挙げる。今回、LINE公式アカウントを開設した特定保健用食品の「ヘルシア」では、継続購買が課題だった。かたや化粧水の「キュレル」では情報発信や流通対策でのLINE活用を考えている。LINEの位置付けが異なる2ブランドだが、現時点で鈴木氏が共通して期待しているのは、これまでとは異なる顧客との新たな出会いだ。
鈴木氏はLINEという新しい接点で新しい顧客に出会い、その先に双方向で好意や信頼を育む構えで、運用開始から6カ月間程度はあえて明確な数値目標を持たずに顧客とのコミュニケーションを図っているという。
花王では当面、ブランドごとにアカウント運用をするつもりだが、今後は商品カテゴリーごとの情報発信なども視野に入れている。例えば洗濯洗剤や住居用洗剤といった商品については、ブランド別よりもカテゴリーの中で利用シーンに合った情報を発信した方が顧客には便利かもしれない。「お客さまはどのような情報を求めているのか、顧客視点に立ったときにどのようなアカウント運営が適切なのかを今後の運用で見極めていきたい」(鈴木氏)
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