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アクセンチュアが考える新たなCMO像、マーケティングの知見で企業全体をつなぐ「コラボレーション主導型マーケター」の時代へ(1/2 ページ)

これからのCMOが担うべき新たな役割とは何か。

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 アクセンチュア インタラクティブが2018年11月に発表したグローバル調査レポートによると、顧客体験(Customer Experience:CX)は企業にとってますます重要な課題となっている。従来型の体験では顧客を満足させることができない。CXを推進するためには組織の壁を越え全社一丸となった取り組みが必要となる。顧客の声を製品・サービスに反映させるため、社内の各部門やパートナーと連携を図ることこそがCMO(最高マーケティング責任者)の新たな役割となる――。それが、同調査の結論だ。実際、同調査の対象企業の90%が、CMOにはさまざまな事業部門をつなぐ役割があると認識している(関連記事「「CMOには事業部門間をつなぐ役割がある」と9割が認識――Accenture Interactive調査」)。

 本稿では、この調査結果とそれを踏まえて今日本企業がなすべきことについて、アクセンチュア インタラクティブと傘下のアイ・エム・ジェイが開催した記者説明会で語られたポイントを紹介する。

CMOの役割は広告宣伝だけではない

 最初にアイ・エム・ジェイ執行役員マーケティングアナリティクス&サイエンス本部長の山本崇博氏が、調査結果の概要を振り返った。

 調査は2018年7月から8月にかけて行われた。対象になったのは、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリアの幅広い業界においてマーケティングの意思決定を行う上級役職者250人。調査はオンラインで実施され、さらに10人に対しての詳細な電話インタビューも行っている。

 レポートの中心となる「新しいCMO像」が求められる背景には、顧客のブランドに対する期待がこれまでに以上に高まっているという事実がある。アクセンチュアの過去の調査によると、88%の顧客は自分の体験をより自分に合った魅力的なものにパーソナライズしてくれることを望んでいる。そして、最適な商品やサービスが提供されなければすぐにどこか他で購入をしてしまうという顧客が48%もいる。一方で87%の組織は、従来のやり方では顧客を十分に満足させられていないことを理解している。

 CMOに期待される役割は着実に増えている。従来、CMOの役割といえば、ブランドオーナーであり、広告や広報が主な担当領域であった。成果の計測もチャネル(顧客接点)ごと、あるいはキャンペーンごとに分断されていた。

 しかし、チャネルは増える一方であり、定額制サービスなども増える中で、必ずしも売ることがゴールではなくなりつつある。マス広告にデジタル広告、さらに店舗や購入後のカスタマーサービスも含め、あらゆるチャネルを一元化した体験を提供できなければ、顧客に継続して購入してもらうことはできない。

 CMOの新たな役割として山本氏は「コラボレーション」というキーワードを挙げる。冒頭で触れた通り、調査対象の90%が、CMOにはさまざまな事業部門をつなぐ役割があると認識している。CFO(最高財務責任者)が財務を軸に企業を横断して組織変革に当たるのに対し、CMOは顧客のインサイト(洞察)を軸に企業を横断し、アップデートするというのだ。


アイ・エム・ジェイの山本崇博氏

CMOに求められるスキル

 調査対象を、組織・部門をつないで社内のマインドセットを浸透させる役割を重要視する「コラボレーションマーケター」と「従来型マーケター」に分け、それぞれに対して、常に協力しているチームがあるかを聞くと、全ての部門において前者の方が協力している比率が高かった。特に協力が密になっているのが「カスタマーサービス」(差分35%)、「情報システム」(同30%)、「営業」(同27%)の3つだ。

 コラボレーションマーケターは最適な関係性を構築するために、各プロジェクトが企業全体でコラボレーションをするよう推奨する。セクショナリズムを排し、アジャイルチームやクロスファンクショナルチームを作り出す。顧客視点でオペレーション戦略を描き、推進する。

 コラボレーションマーケターの存在は、競争を勝ち抜く上で欠かせない。実際、顧客との関係構築において自社が競合企業よりも勝っていると回答した従来型マーケターはわずか68%であるのに対し、コラボレーションマーケターは95%であり、27ポイントも高い。

 マーケターに求められる役割が拡大しているということは、同時にそのスキルが複雑化していることを意味する。「広告宣伝に依存するのではなく全社のエクスペリエンスにコミットする新しいタイプのコラボレーション主導型CMOが求められている」と山本氏は語る。

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