ソフトバンク流データドリブンな意思決定、分析はスマホ一画面から始まる:全社視点の「経営ダッシュボード」を手に入れるということ(1/2 ページ)
経営のスピードを速めるデータ分析とはどのようなものであるべきか。クラウド型BIツール「Domo」を導入したソフトバンクに学ぶ。
ソフトバンクについて語られることの1つとして、徹底したデータ至上主義がある。ビジネス書などによれば、同社ではあらゆる事柄を数値で考える企業文化が浸透している。データの見せ方も重要で、ソフトバンクグループ代表の孫 正義氏に見せる資料は、A4用紙1枚にまとめて一目で分かるように構造化するのが暗黙の了解になっているというのだ。
ソフトバンクでは「大風呂敷」と見られがちな壮大なビジネス目標を掲げる一方で、それを着実に実現するために、問題を緻密に数値化して迅速に意思決定を行う。そのため、社員一人一人のデータリテラシーは高い。彼らの多くは重回帰分析などデータに関する一通りの知識を備え、「Microsoft Excel」を自由自在に使いこなして日々さまざまな分析に取り組んできた。
しかし、そこに課題が生じていたという。それは何か。そしてどう解決したのか。ソフトバンクの藤平大輔氏(コミュニケーション本部 デジタルメディア統括部 統括部長 兼 法人事業戦略本部 デジタルマーケティング事業統括部 統括部長)に話を聞いた。
データのサイロ化を乗り越えて
――あらゆる事柄を数値で考えるといわれるソフトバンクは、データ活用において他の多くの企業と比べれば、はるか先を行っていると思われます。そうした企業が抱える課題とは何でしょう。
藤平 ソフトバンクでは確かにデータドリブンな意思決定が徹底しています。しかし、Excelをベースにしたものが多いため、各部門でデータが閉じてしまい、その部門の人しか分からないことが増えていました。部門間で参照すべき数字が異なるといった課題もあり、会社として健全な姿になるには、全社的にスピーディーに意思決定を行うための統一的なデータ基盤が必要と考えました。
――そこで、2018年4月にクラウド型BIツール「Domo」を本格的に導入したのですね。Domo導入の対象になった業務内容は具体的にはどのようなものですか。
藤平 2つあって、1つがコミュニケーション本部における、いわゆる「出し広」の部分。メディアをまたがるマーケティングROIの最適化に関わる業務です。もう1つが法人事業開発本部における、案件化から予算の達成までの戦略推進です。それぞれ違うアプローチから始めていますが、ゴールとして見据えているのは全社としての「経営ダッシュボード」です。単に数値を可視化するだけでなくアクションにつなげられるように使っていきたいと思っています。また、マーケティングや営業といった部門の中に閉じたもので終わらせるつもりはありません。広くいえば財務や人事のような他部門まで含め、経営層が会社の状況を見られるようにして、瞬時に判断を下せるようにしたいと考えています。
――Domoを導入した結果、何が変わったのでしょう。
藤平 これまでは各部門に閉じていたデータが一つのツールで見られるようになりました。社員が会社全体の方向性を理解した結果、経営者意識を持つように変わったと実感しています。視野が広がることで「やらされ感」がなくなり、自分自身を変革することができるようになったと感じています。
――会議のためのデータではなく、全社で議論するための共通のデータを得られるようになったと。
藤平 コンシューマー側では、アトリビューション分析には重点的に取り組んできました。私たちのビジネスでは契約は店頭で行われますから、来店に効果的なメディアをアトリビューション分析で把握することが必要になるのです。Domoを使うと、代理店やメディアが持っているデータも合わせ、リアルタイムに集計すればいろいろな気付きが生まれます。例えばある商品の発売時には、今までとは異なるメディアが効果的であると分かっています。Domo導入前は集計に1カ月程度かかっていたので、このような示唆をキャンペーン期間中に得ることはできませんでした。キャンペーン期間中に示唆を得ることができれば、状況に応じてリソースの割り当てを途中で切り替えた方がいいという判断ができます。
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