「Oracle CX Audience」と「Oracle Infinity」はマーケターの仕事をどう変えるのか:Oracle Customer CX Cloud Suiteに2つの新製品(1/2 ページ)
「Oracle Modern Customer Experience 2018」で発表された2つの新製品が担う役割について「Oracle Marketing Cloud」担当シニアバイスプレジデントのシャシ・セス氏のプレゼンテーションを紹介する。
2018年4月11〜13日、Oracleは米国シカゴにて「Oracle Modern Customer Experience 2018」を開催した。同社で「Oracle Marketing Cloud」担当シニアバイスプレジデントを務めるシャシ・セス氏は2日目の基調講演に登壇し、Marketing Cloudや「Sales Cloud」「Service Cloud」「Commerce Cloud」など顧客ライフサイクル全体を包括する製品群「Oracle Customer Experience(CX) Cloud Suite」の強化内容を発表した。本稿では、その強化の軸となる2つの新製品「Oracle CX Audience」「Oracle Infinity」の詳細について解説する。
製品強化で重視したマーケティングの収益最優先
「私は出張で多くのCEOやCMOと対話を重ねる機会が多い。最近、その中で見えてきた興味深い事実は、CMOたちがチームの最も優先度の高い目標として、収益を掲げるようになったことだ。2年前、同じ質問をCMOにしたとしたら、おそらくブランドビルディングが一番の目標で、収益は二の次だっただろう」
セス氏は本題の前に重要なポイントを共有したいと、こう切り出した。また「3人に2人のCMOが既に収益に関する目標を設定している」というデータを紹介し、現在大きな変化が起こっていることを強調した。一口に収益目標と言っても「新規顧客の獲得」「顧客エンゲージメント」「顧客LTVの向上」「解約の減少」とさまざまであるが、そもそもこのような目標を掲げること自体、今までのマーケティング部門にはなかった変化だというのだ。
変化の背景としては、モバイルデバイスに時間を費やすユーザーが増えていることが大きく影響している。テレビ番組をラップトップPCやタブレットで視聴することは珍しいことではない。一人一人のユーザーに最適なタイミングでコミュニケーションを取ることで、行動を促しやすい環境が整っている。場合によっては、その瞬間に購買を促すことさえ可能かもしれないのだ。
「この大きな変化に適応するため、マーケター自身が変わらなければならない。後から振り返ったとき、2018年は多くの人にとって、大きな変化の年だったと評価される年になるだろう」とセス氏は述べる、
正確なターゲットセグメンテーションのためのOracle CX Audience
セス氏は、モダンマーケティングで最も基本的な戦略は、データドリブンでプロセスや意思決定を進めることにあると述べる。
通常、使用するデータが増えれば増えるほど、アナリティクスでより多くのバイヤーインサイトが得られる。意思決定に不可欠なインサイトが増えれば増えるほど、顧客理解やターゲット最適化が進み、目標を達成しやすくなるといってもいい。この顧客理解とターゲット最適化というニーズに対し、用意されたのがOracle CX Audienceである。これを使うことで、ターゲットを正確に把握し、ワンツーワンマーケティングに必要なパーソナライズしたコンテンツを利用して、顧客との会話をスムーズに展開できるはずだ。
CX Audienceでは、より精緻にオーディエンスセグメントを作成するため、デモグラフィックデータをはじめ、Webの行動データや興味関心データ、そして購買履歴などのファーストパーティーデータも使う。さらに、B2C向けキャンペーンオーケストレーションの「Oracle Responsys」やB2B向けマーケティングオートメーションの「Oracle Eloqua」といったツールにセグメントをプッシュし、キャンペーン展開に役立てることができる。
セス氏は、CX Audienceがオーディエンスセグメント作成に要する時間がほぼゼロである点を強調する。ここに数時間もかかるようでは、ロイヤリティーの高い顧客にアプローチするタイミングを逸してしまうことになりかねない。リアルタイムマーケティングが可能になることで、ホットなタイミングを逃さず、成果につなげることができるというのだ。
専門知識がなくても使える
今回の機能強化を通じて、「マーケターの仕事をシンプルなものにしたい」とセス氏は言う。 CX Audienceは、キャンペーンを運用するマーケターが数学や統計、複雑な方法論を学ばなくても、簡単な操作でオーディエンスセグメントを作成できる。
ある保険会社が新しい保険商品をリリースすることになり、マーケターが最も適切な販売ターゲットを探しているとしよう。従来のターゲティングでは、データベースから必要な情報を取得するために難しいSQLクエリを書く必要があったが、もうその必要はない。チームの誰かに依頼する必要さえない。CX Audienceのグラフィカルなインタフェースを使って、マーケターは状況に応じて自由自在にターゲットオーディエンスを作成することができるようになる。デモンストレーションでセス氏は、ユーザーのプロファイルデータやセールスのトランザクションデータおよびWebの行動履歴、「Oracle Data Cloud(旧Bluekai)」からリアルタイムで提供されるデータを組み合わせ、新商品向けのセグメントを作成してみせた(図1)。
CX Audienceでは、あらかじめ用意されたセグメントを使うことや、作成したセグメントをドリルダウンしてより詳細なものにすることもできるという。キャンペーン展開が始まったら、ボタンをクリックするだけで、セグメントの中でどのぐらい多くの人にリーチできているかも確認できる。もっと多くの人にリーチしたいなら、別のオーディエンスセグメントを持ち込み、より正確なターゲティングになるよう、セグメントを変更できる。この作業を繰り返していると、やがて完全なセグメントに到達することができる。
最適化のための反復は、キャンペーン展開に入ってからも継続する。キャンペーンの展開中は、アナリティクスツールのデータを利用し、実行状況を評価するKPIをモニタリングできる。どんなコンテンツを提供すれば顧客エンゲージメントを高めることができるのか。どんなメールにすれば開封率が高まるのか。反復を続けながら、売り上げコンバージョンを最大化させることができるわけだ。
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