人工知能「Salesforce Einstein」はECをどう変えるのか?:Salesforce Commerce Cloudの提供価値(1/2 ページ)
「Salesforce Commerce Cloud」の概要と人工知能「Salesforce Einstein」がECにもたらす価値について紹介する。
Salesforce Commerce Cloudの前身は、2016年6月に買収したエンタープライズ向けコマースプラットフォームDemandwareの製品だ。Demandwareは日本でも2015年から独自に事業展開をしてきたが、2016年9月にCommerce Cloudとして正式にセールスフォース・ドットコムの一員となった。
Commerce Cloudはアパレルやスポーツブランドをはじめ全世界55カ国、約2200のブランドにECサイト基盤を提供しており、月間4億4000万ユニークユーザーのショッピング体験を支えている。
本稿では、2017年7月4日にセールスフォース・ドットコムが開催した「Salesforce Trailhead live Tokyo」におけるセッション「Salesforce Commerce Cloud + Einstein AIで実現するユニファイドコマース 〜成功するコマースプラットフォームに向けて」の内容から、Commerce Cloudが消費者のショッピング体験をどのように支援しているかを解説する。
EC市場で成功するためにブランドがやるべきこと
EC市場はグローバルでも成長基調にあり、日本では2010年に8兆円弱だったものが、2016年実績で大体15兆円規模までに拡大している(経済産業省調べ)。この成長市場に追随するため、ブランドはどんなことに留意すべきなのか。セールスフォース・ドットコム コマースクラウド リードソリューションエンジニアの平部優樹氏は、消費者がECサイトに求める要件を
- モバイル
- シームレスな体験
- 夢中にさせる提案
の3つに集約して語る。
モバイルデバイスを持つ消費者はインターネットに常に接続しており、自分が今いる場所から情報収集したり、商品を購入したりすることは当たり前になってきた。
実は、デジタルにおける売り上げはリアルの店舗での体験が大きく影響する。消費者としては、せっかく店舗に行くなら、手ぶらではなく商品を持って帰りたいし、店舗に在庫がなかったとしても、気に入った商品をデジタルで購入することがある。つまり、デジタルチャネルとリアルチャネルそれぞれで得た情報が相互に引き継がれることが重要だ。
また、例えばアパレルの店舗に行き、販売員から今年人気の流行色やシルエットのトレンドを踏まえた上で似合いそうな商品を提案してもらうといった意見から購買意欲が湧くことがある。自分をよく理解してくれて、自分だけの提案をしてくれると消費者はうれしいものだ。
消費者にブランドを訴求し、リアルとデジタルの体験を統合している事例として、平部氏はadidasの取り組みを紹介した。同社は量販店に大量に卸す販売モデルからグローバルECサイト中心のモデルに徐々に転換し、成功している。
adidasでは、「mi adidas(マイアディダス)」というサービスを展開している。ここで消費者はスニーカーの型を選んだ上で、つま先と中足部、ひも、かかと、ソール、マークと、サイズやデザインを細かく指定し、オリジナルスニーカーを作ることができる。
効率性を考えると、メーカーとしては積極的に展開しにくいサービスのはずだが、adidasはここでダイレクトにブランドを訴求し、消費者の期待を超えるサービスを提供することで、売り上げを増大させている。平部氏はこの事例から「商品での差別化からブランドの世界観や顧客体験全体での差別化にシフトしなければならないことを学ぶべき」と強調する。
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