LINEとTwitterの幹部が語る、これからのマーケティングにおけるSNS活用:「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」特別講演レポート(1/2 ページ)
「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」から、LINE 上級執行役員の田端信太郎氏とTwitter Japan 代表取締役 笹本 裕氏による特別講演の要点をレポートする。
2017年5月10〜12日、東京ビッグサイトで「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」が開催された。初日の特別講演にはLINE 上級執行役員コーポレートビジネス担当 田端 信太郎氏とTwitter Japan 本社副社長兼日本オフィス代表取締役 笹本 裕氏が登壇し、マーケティングにおけるSNS活用の最新動向について語った。同じリクルート出身で現在はそれぞれの立場で新たな広告ビジネスを手掛ける両氏。2つのメジャーなソーシャルプラットフォームは日本企業のマーケティングをどう変えるのか。本稿では両氏の講演の要点をレポートする。
「スマートポータル」としてのLINE
田端氏は「LINE活用で実現する統合マーケティングについて」と題した講演で、コンシューマー向けサービスとして全世界に2億人以上のユーザーがいるLINEを「企業サービスの入り口」とする考え方を示した。
日本人の2人に1人がアクティブユーザーというLINEは、当初からスマートフォンネイティブであるという点で、他のソーシャルメディアと一線を画している。そのLINEが掲げる現在のミッションは「Closing the distance」。人と人のつながりだけではなく、消費者と企業、ブランド、店舗などの距離も縮めていこうという考え方だ。
同社では現在、メッセージングプラットフォームを土台に、さまざまな企業サービスのプラットフォームとして機能する「スマートポータル」戦略を進めている。APIをオープン化することで多くの企業と提携し、「LINEを入り口とすることで、ユーザーは企業アプリをインストールすることなくサービスを利用できる」(田端氏)というのだ。
多くの企業はWebサイトと別にスマホ用ネイティブアプリをリリースしている。だが、ある統計(※1)によれば83%ものアプリは、存在はしていてもユーザーに見つけてもらえない「ゾンビ状態」にあるという。また、たとえインストールしてもらったとしても、実際に月に10回以上使われるアプリは平均9個しかない。多くのネイティブアプリが使われていない現実があるからこそ、最もよく使われるアプリの1つであるLINEがポータルとして有用になってくる。
※1. Adjust「The Undead App Store The course for discovery in 2015」
メルマガや電話ではリーチできない世代の登場
LINEが取り込もうとしているのは、企業のネイティブアプリに対するニーズだけではない。例えば電子メールをLINEがリプレースしていくことも視野に入れている。
現在、多くの企業はユーザーのメールアドレスを集めてメールマガジンや製品・サービスの情報を送付しているが、その開封率は年々下がっている。しかも、LINEをコミュニケーションツールとして活用する若年層には、メールアドレス自体を持たない人も増えている。電子メールの存在感がますます薄れ、将来的には有名無実化してしまう可能性は否定できない。
電話についても同様のことがいえる。若者は電話を好まない。また、問い合わせに対して企業がコールバックしても、知らない番号では電話に出てもらえないことさえある。一方で、彼らはLINEでのやりとりには積極的だ。
「電子メールや電話にこだわる営業と、LINEでも商談を進められる営業ではどちらが効率的で、若者から多くの注文が取れるか明らかだ」と、田端氏はビジネスシーンにおけるコミュニケ―ションツールとしても、LINEの優位性を強調する。
大企業から中小企業までビジネスに欠かせない基盤に
企業にとって、消費者への情報発信媒体としてもLINEの存在はもはや欠かせない。大企業向けの「LINE公式アカウント」は月額250万円〜という料金設定だが、利用企業は280社を超える。一方で、ローカル店舗や中小企業向けにも「LINE」へのニーズは高い。月額5400円から利用できる「LINE@」の認証済みアカウント数は25万件を突破した。また、2016年からサービス開始した運用型広告「LINE Ads Platform」では、数十万円程度の比較的小規模な予算から広告展開が可能だ。
さらに、最近では法人向けサービス「LINE WORKS」も展開している。ここでは、企業の従業員が顧客とのコミュニケーションに利用できる仕事用のアカウントを月額300円から発行できる。
「今やナショナルクライアントからネイルサロン、美容室などの小規模事業者までがLINEアカウントを開設し、マーケティングからカスタマーサポート、セールスまで含むビジネス基盤としている。その流れはますます加速していく」と田端氏は述べる。
消費者がLINEをコミュニケーションの基盤とする以上、企業もまたそこに乗らざるを得ない。LINEのビジネス活用はもはや単なる「選択肢の1つ」ではないのだ。
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