「Pokemon GO」の波に乗りたい販促担当者がARについて最初に知っておくべきこと:マーケターのための「AR」短期集中講座 前編(1/2 ページ)
「Pokemon GO」の大ヒットで「AR」が注目を集めている。そこでARを利用した集客や販促企画を検討しているマーケターに向け、基礎知識と活用例、うまくいく施策のポイントを前後編で解説する。
Nianticとポケモンが共同開発した「Pokemon GO」は、本格的に AR(Augmented Reality、拡張現実)を活用としたスマートフォン(以下、スマホ)のゲームとして、空前絶後の大ヒットとなった。サービス開始直後に比べればブームは落ち着きを見せてきているものの、まだまだマスメディアやインターネットで大きな話題になっている。Pokemon GOを通じてARという技術を知ったという人も多いだろう。そして、一部の企業のマーケティング部門では、にわか知識の経営層や上司から「Pokemon GOのようにARを使って集客できる販促企画を何か考えられないか」という圧力が高まっていることと推察される。
そんなムチャぶりを形に変え、成功を収めるためにまず何を知っておくべきか。現場レベルに必要な考え方を2回に分けて解説しよう。
今さらながらARとは何か
Pokemon GOにおいては、アプリを立ち上げてスマホを片手にうろうろ歩いていると、カメラを通して見ている風景の上に突然、3Dで動くポケモンが現れる。あたかも現実世界でポケモンと遭遇したような、冒険心をくすぐる演出である。現れたポケモンがいる方向にカメラを向け、しっかりと狙いを定めてモンスターボールをぶつけて捕らえたポケモンをコレクションし、育て、他の参加者のポケモンとバトルを楽しむのがゲームの趣旨だが、ポケモンがいる風景を写真に撮って友達に共有すること自体を楽しんでいる人も少なくないと思う。
このように、現実の風景にコンピュータ(Pokemon GOの場合はスマートフォン)上で映し出されたデジタルデータを重ね合わせて人間から見た現実世界に付加(時には削除、減衰)して「拡張」することを指す技術、それがARなのである。
Pokemon GOがARを利用した理由を考える
今回Nianticが話題性を高めるために最新の技術を投入したのかというと、そういうわけではない。実はARの歴史は古く、50年以上前から研究をされている。1990年代にARブームと呼ばれる時代を経て、2007年にはARを使ったゲームも誕生した。そういったことを知る人からすれば「今さらAR?」という疑問が湧いても不思議ではない。
では、NianticはここにきてPokemon GOになぜ、わざわざARを採用したのか。理由はポケモンの世界観を表現するのにARが適切だったからに他ならないと筆者は考える。
背景には、「Pokemon GO」のベースとなったゲーム「ポケットモンスター」における設定(いわゆる「世界観」)がある。このゲームの世界ではポケモンと人間が共存し、主人公(サトシ)は仲間と共にポケモンマスターを目指して旅をする。トレーナーが飼っているポケモンも存在するが、町の外を歩くことで野生のポケモンと遭遇することは日常茶飯事なのである。ゲームの中の世界は「マサラタウン」や「トキワシティ」といった架空の都市名を冠しているが、(ポケモンが登場することを除けば)比較的現実に近い。故に、ARを使うことで自分自身があたかもポケモンの世界で冒険するポケモントレーナーになったかのようなユーザー体験が生まれることになり、結果としてポケモンファンに大いに受け入れられたのだろう。
最初にARありきではなく、あくまでも表現したい企画、面白いアイデアがあり、それを表現する手段としてARが適切であったからこそ、ユーザーに受け入れられたのである。
この点を見落として単にARを活用したキャンペーンやイベントを企画してもうまくいかないし、実際に失敗したケースもたくさん見てきた。「ARはダメだ」と結論付ける前に、その企画にARを利用する必然性があるのかをまず検討する必要があるだろう。ARはあくまで手段であり、Pokemon GOに夢中になっているユーザーは別にARであること自体を特別に望んではいるわけではないのだ。
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