残念なWebサイトで御社はどれだけ損をしているのか:「デジ損」から会社を守る 第1回
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの遅れはそのまま機会損失へと結び付きます。鍵になるのが顧客体験(CX)。ここがうまくいかない企業はどれだけ損をしているのでしょうか。
企業のWebサイトには日々、多くの訪問者が何かしらの目的を持ってアクセスしてきます。しかし、表示されるコンテンツがいつも同じでは、訪問者の目的や期待になかなか応えることはできません。
探そうとしていたことと関連が薄く、琴線に触れないことで、当然その訪問者はサイトから離脱してしまいます。つまり、企業はビジネスへとコンバージョンする機会を逸しているのです。この見えない機会損失を私たちは「デジ損」と呼んでいます。
多くの企業はWebサイトを世界に向けたコミュニケーション戦略やブランディング戦略の中心として据えていると思います。しかし一方で、お金も手間もかけたそのWebサイト自体がデジ損の根源になっていることが多いのです。今回はその実情をお伝えします。
CX向上でROIは3倍になるのに……
企業が生き残るため、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの必要性が盛んに語られています。DXとは、第3のプラットフォームと位置付けられているクラウド、ソーシャル、ビッグデータ、モバイルなどのITソリューションを活用して、ビジネスに変革を実現していくことです。
DXは「攻めのIT投資」への転換ともいわれていますが、多くの日本企業で対応の遅れが指摘されています。
DX時代において、顧客体験(CX:Customer eXperience)の重要性は増すばかりです。実際、サイトコアがパートナーのアバナードと2016年に実施したグローバル調査の結果(外部リンク)では、CXへの1ドル投資に対して3ドル、つまり3倍のROIが得られることが判明しました。
マーケティング担当者はCXの向上を強く望んでいますが、実際にそれを実現できている企業は少数です。サイトコアがアバナードと実施した、世界11カ国1440人のCIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)などを対象にした共同調査では、企業の95%が「CXに改善の必要がある」と回答しています。
もちろん、日本企業においても、CX向上の成功例はほとんど見られないのが実情です。
不快な体験をして離脱したユーザーは二度と戻ってきてくれない
スマートデバイスやSNSの普及で、企業がWebサイトをデジタルマーケティングの中核ツールとして戦略的に使う動きが活発になっています。これはB2CかB2Bかに関係ありません。調べ物はもちろん、商品の購入、交通機関やサービスの予約なども、オンラインで完結させることが当たり前になっています。Webサイトの重要性はますます高まっており、その役割は変貌を遂げてきているわけです。
そうはいっても、Webサイト上に単にコンテンツの量を増やしさえすれば顧客の満足度向上につながるわけではありません。情報が多いだけのWebサイトはむしろ「情報が探しにくい」「欲しい情報にたどり着くのに手間がかかり過ぎる」「スマホだと表示される文字が小さい」など、ユーザーに不快な印象を与えているケースも多いのです。
Webサイトが使いにくければ、多くのユーザーは離脱してしまいます。企業に対してクレームを寄せるユーザーもいるでしょう。そうした人は改善後に再訪してくれるかもしれませんが、多くの顧客は何も言わずに立ち去るのみです。そして黙って離脱したユーザーは、二度と戻らない可能性が高いのです。なぜなら、ごく限られた例外分野を除けば、顧客の選択肢はいくらでもあるからです。
逆にいえば、デジタル(アプリやWebサイト)上の顧客体験の良さだけで、新規参入の企業が既存の業界を破壊している例も出てきていることを、ご存じのことかと思います。
アクセンチュア インタラクティブがマーケティングの意思決定を行う上級役職者250人を対象に実施し、2018年11月に発表したグローバル調査レポートでも、88%の顧客は自分の体験をより自分に合った魅力的なものにパーソナライズしてくれることを望んでいるという結果が出ています。そして、最適な商品やサービスが提供されなければ、すぐにどこか他で購入するという顧客が48%もいるのです(関連記事:アクセンチュアが考える新たなCMO像、マーケティングの知見で企業全体をつなぐ)
デジ損を防ぐパーソナライズ
このようにCXの水準が低ければ、大きな機会損失につながります。経営者やマーケティング責任者は、あらためてその認識を持つべきでしょう。
デジ損を回避する手段として最も有効な方法がWebサイトのパーソナライズ、つまりアクセスしてきた個々のユーザーに最適な情報コンテンツを、最適な形で提供することです。
ユーザーに向けて常にパーソナルなコンテンツを最適な状態で提供できるようになれば、自社サイトのイメージやリピート率の向上が期待できるようになり、デジ損を大幅に減らすことにつながります。
パーソナライズを実現し、より精度を高めていくためには、各ユーザーの属性を蓄積・分析し、その結果を基にコンテンツを選定・配信する仕組みが必要になります。次回以降では、パーソナライズ化に向けて取り組むべき具体的なツボ(TIPS)について紹介します。
執筆者紹介
安部知雄サイトコア マーケティング グループ アジア地域担当本部長。国内大手鉄鋼メーカーで世界各国への機械販売に従事。世界市場におけるマーケティング力やコミュニケーション力の重要性を再認識し、マーケティングコミュニケーションエージェンシーへと転職。外資系企業の日本参入を多数支援し、クリックテック・ジャパン立ち上げにも携わる。2016年5月より現職。
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