ロレアル→Amazon→J&J 敏腕マーケターに聞く「AI時代に重要となる2つの力」:新連載:私がマーケターになるまで(1/3 ページ)
日本ロレアル、アマゾン ジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゴディバ ジャパンなどを渡り歩いてきたトレジャーデータCMOの宮野淳子さんにインタビュー。これまでのキャリアとともに、外資企業と日本企業、B2CとB2Bでマーケターに求められるスキルについて話を聞いた。
新連載:私がマーケターになるまで
第一線で活躍するマーケターは、どのような経緯でマーケティングの世界に入り、どんな挑戦や失敗を経験してきたのか──。インタビューを通じ、“あの人”のキャリアレシピをひも解いていく。
ITmedia ビジネスオンラインでは新連載「私がマーケターになるまで」を立ち上げた。
第1回目の本記事では、日本ロレアル、アマゾン ジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゴディバ ジャパンなどを渡り歩いてきたトレジャーデータCMO(チーフマーケティングオフィサー、最高マーケティング責任者)の宮野淳子さんを取り上げる。各社でこれまでどのような業務を担当してきたのかを聞くとともに、外資企業と日本企業、B2CとB2Bでマーケターに求められるスキルについて話を聞いた。
「ロレアル パリ」日本立ち上げで重視した、パーソナライズの考え方
宮野さんは、日本ロレアル(以下、ロレアル)に入社し、マーケターとしてのキャリアをスタート。化粧品ブランドであるロレアル パリの日本立ち上げを担当した。
入社当初のロレアル パリは、日本において“百貨店で1番安い”ブランドとしての立ち位置(アフォーダブル・ラグジュアリー)を狙っていた。宮野さんは「限られた予算で大きな競合に勝つ必要があった」と振り返る。
「百貨店では、お客さまの肌の悩みや購買情報をまとめた『カルテ』を作成しています。これをデータベース化して、ダイレクトマーケティングを実施しようと考えました」
例えば、美容部員のメンバーが店頭で顧客と会話した内容を、「週末に遊園地に行くため、日焼け止めを購入」といった具合に記録。その後、「週末の遊園地はいかがでしたか?」などと一言添えて、DMでサンプルの案内などを送付すると、顧客は「この店員さんは自分のことを覚えてくれるのか」と感じてくれる。今では各社がCustomer Data Platform(CDP、カスタマーデータプラットフォーム)などのツールを活用して実現しているパーソナライズの施策を、”マニュアル”で実現していたというわけだ。
その後、ロレアル パリはドラッグストアでの販売をメインとする戦略に方針転換した。その流れで、それまでに作成したデータベースは全て破棄することに。宮野さんはドラッグストア化粧品でも、パーソナライズ戦略を実現できないか考えた。「百貨店での経験から、一人一人にパーソナライズしたコミュニケーションをできれば、売り上げが上がると分かっていました」
デジタル上でパーソナライズ施策を展開しようと考え、メール会員施策を強化。1年間で数十万人の新規会員登録を記録した。
会員向けに毎月イベントを開催。ヘアケア、メイクなどさまざまなテーマで講師を招き、顧客同士が交流する場も設けた。
「毎月約100人のお客さまに参加いただいていましたが、集客はお金をかけることなく、会員向けのメール1本だけで完結していました。データベースにお客さまの好きなもの、肌の悩みなどの情報を記録していたので、私はイベント前にそのデータベースを確認してからご挨拶にうかがい、一人一人と個別の会話ができます。当時は『宮野さんに会いに来ました』と言ってイベントに参加してくれる方がたくさんいましたね」
その後、アマゾン ジャパンでソーシャルマーケティング・ファッションマーケティング部門を統括後、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。コンタクトレンズ「アキュビュー」の戦略立案を担当し、市場規模の拡大に尽力した。
その後、ゴディバCDO(最高デジタル責任者)を経て、2024年11月にCDP大手・トレジャーデータのCMOに就任した。
宮野さんはもともとトレジャーデータのユーザーだった。パーソナライズした体験を提供するには、全てのチャネルで収集したデータを統合し、可視化する必要があった。これまでの経験からデータ活用の重要性を感じる中、トレジャーデータのCDPに強い信頼を置いていたという。
今後は同社のブランド力向上に注力する方針だ。2025年7月にはサッカー選手の吉田麻也氏をスポークスパーソンに起用。日本国内での認知拡大を強化する。
「日本ではCDPの認知度が5割ほど。トレジャーデータ自体の認知度もまだそこまで高くありません。単に認知を高めるだけでなく、このブランドをどのように見せていくとお客さまに好んでもらえるのか、長く愛用いただけるのかをしっかり設計した上で、認知獲得とブランディングを両方実現していきたいです」

サッカー選手の吉田麻也氏をスポークスパーソンに起用。吉田選手の日本、欧州、米国という異なる文化や環境に果敢に挑み続け、各地でリーダーとして活躍する姿が、日本人3人がシリコンバレーで創業したトレジャーデータが多様な市場に向き合いながら進化を続けてきた歩みに重なると説明する(プレスリリースより)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
色んな外資マーケターに聞いてみた 実際「フレーム」なんて使えない、「思考力」を鍛えた方がいい理由
“勝ち手法”だった「インフルエンサーマーケ」 急激に失速した2つの要因
D2Cの“勝ち手法”だった「インフルエンサーマーケティング」が急激に失速した。「D2C」を取り巻く市場は厳しい中、企業は従来の「インフルエンサーマーケティング」の認識をアップデートする必要がある。「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。20代で「モンスト」開発部長に スピード出世を遂げたMIXIエースの「マネジメント論」
MIXIを代表するゲーム事業『モンスターストライク』は2023年に10周年を迎えた。10年たった今でもその人気ぶりは衰えず、世界累計利用者数が6000万人を超える。そんなモンストを支える開発組織には、29歳という若さで部長に就任したエース社員がいるらしい。Geminiを業務で使いこなす! Google Cloudが指南する「プロンプト入力」4つのポイントは?
GoogleのAI「Gemini」を業務で使いこなすには──? Google Cloudの担当者がレクチャーした。