広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く(4/5 ページ)
多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」 という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込む。
電通デジタルが約9割の内製化を実現し、スピーディーな開発を可能にしているのは、電通データアーティストモンゴルとの特別な連携体制だ。
「電通データアーティストモンゴルは、社員の75%が日本語を話せます。JICAの『モンゴル工学系高等教育支援事業』で日本に留学し、日本の文化を理解した優秀なエンジニアを採用しているからです」
単に言語が通じるだけではない。オフィス間で常時接続するモニターを設置し、同じ空間にいるかのような環境を構築している。電通ジャパンの管轄として位置付けることで、日本の商習慣への対応も含め、シームレスな協業を実現しているのだ。
こうした開発体制の下、電通デジタルはAIを活用してビジネスを変革してきた。しかし、山本氏が見据えるのは、さらにその先の未来だ。
AI時代に電通デジタルが見据えるもの
ここまで見てきた効率化や自動化の成果は通過点に過ぎない。本当の目的は、AIを活用し、人間がより本質的な仕事に集中できる環境を作ることだ、と山本氏は強調する。
「現在、多くのマーケターがメルマガ作成などの事務作業に追われ、“本来やりたかったこと”に時間を割けていません。AIがそうした作業を代替することで、人間は『洞察』に集中できるようになります」
山本氏が強調するのは「観察」「考察」、そして「洞察」の違いだ。観察はありのままを記述すること、考察は傾向を見つけること。そして洞察は、人々の心の奥底で何が起きているのか、その本質を見抜くことだという。
「マーケターが本当にやりたいことは、データの裏にある社会現象やインサイトを見つけることのはず。それを実現するには『人々の心の奥底で何が起きているのか』といった本質的な部分に集中できる“洞察の時間”を生み出すことが重要です。しかし、これまでは『時間がないから』という理由で、なかなかその域まで到達できなかった。AIを活用することで、人間が新たな領域に到達できる可能性が広がったのです」
その結果、マーケターに求められる本質的な資質は「クリエイティビティ」になっていくと山本氏は指摘する。クリエイティビティを発揮するマーケティングを通じて、人々を幸せにするマーケターが、これからの社会では重宝されるのだ。
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