広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く(5/5 ページ)
多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」 という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込む。
日本企業が海外で羽ばたくカギになる
ここまで紹介したような世界観は、日本企業の海外展開に向けた、新たな可能性を示唆していると山本氏は続ける。
「私は、AIは言語を超えた体験設計を可能とする、と考えています。第3次産業革命、つまりIT革命の際、日本は今一つ成長しきれなかった。その背景の一つとして、サービスは言語に依存してしまうため、日本が設計した良い体験を、言語の影響で世界に展開しきれなかった、という点がありました」
日本がこれまで得意としてきた製造業の分野では、物理的な機能や品質で勝負できた。しかし、デジタルサービスは言語によるコミュニケーションが不可欠ゆえ、日本人向けに日本語で作られたサービスでは伸び悩んでしまったのだ。
しかしこの課題は、AIの登場によって変わりつつある。
「近い将来、日本人向けに作られた体験設計であっても、AIを使えば言語を変えるのはもちろん、見た目も声色も簡単に変えられるようになるでしょう。つまり、各国に合わせたローカライズが可能になる。ここに、日本の企業が海外で大きく羽ばたくチャンスがあると考えています」
電通デジタルは、グローバル企業としての強みを生かし、まずアジアなどで試した成功事例を日本に逆輸入するなど、事例を増やしていく方針だと話した。
デジタル化の先にある「人にしかできない価値」を追求する
インタビューを通じて山本氏が繰り返し強調したのは、AIは人間の仕事を奪うものではなく、人間がより本質的な仕事に集中できるようにするツールということだ。
「5年後、10年後には『本当にこんなに働く必要があるのか』という議論も必要になるかもしれません。オフィスワークの大半がAIで解決されるようになったとき、あらためて『人間の幸せ』について考え直さなければならない時代が来ると思います」
電通デジタルの取り組みは、単なる業務効率化を超えて、マーケティングの本質的な変革を目指している。AIネイティブな組織づくりを通じて、クリエイティビティを最大限に発揮し、人々を幸せにするマーケティングの実現。それは、AI時代における日本企業の新たな競争力の源泉となるかもしれない。
まずは自社の業務の中で「AIに任せられること」と「人間にしかできないこと」を整理することから始めることが重要になるだろう。その先に、より創造的で価値ある仕事に集中できる未来が待っているはずだ。
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