広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く(3/5 ページ)
多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」 という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込む。
山本氏はこう続ける。
「人間が見ると文字だらけで読みにくいサイトは、SEOで評価されません。しかし、AIが情報を集約し、人間に分かりやすく要約して提示するのであれば、データベース型のサイトの方が価値が高い。既にわれわれのサービス内でも、こうしたサイトの方がAIに参照されやすいことを確認しています」
この新しいアプローチに最も関心を示しているのが金融業界だという。
「金融商品は複雑がゆえに、これまでは簡単に説明してコンバージョンにつなげることが重視されてきました。しかし、その説明では納得しない層も一定数存在します。Generative Engine Optimizationの出現によって、『AIが読み込んで分かりやすく教えてくれるなら、契約を前向きに検討したい』という層にアプローチできるようになるのです」
山本氏は、今後AIの利用が一般化することで、ユーザーの検索行動も変化すると予測する。
「まだマニアックな使い方かもしれませんが、今後AIが普及すれば、『複数の商品の良し悪しやスペックを表にして提示してほしい』といった要望が増えるでしょう。そうなると、SEOでは評価されてこなかった情報量の多いサイトこそが、AIにとって価値ある情報源になるのです」
予測を大きく上回る成果を実現 好調の背景に2つの要因
紹介した3領域での取り組みは、数字としても明確な成果を示している。
2025年6月時点で、電通デジタルの広告運用におけるレポート業務を削減した件数は、社内目標の約3.4倍という好成績を叩き出した。当初の予測を大きく上回る成果だった。
「既存技術での予測を超えるスピードで改善が進んでいます。例えば、プラットフォーマーのサイトからレポートをダウンロードして集計する作業は、人間なら10分かかるところをAIなら2分で完了できます」
トランスフォーメーション事業においても、半期終了時点で当初目標売上の200%以上を達成。AI活用によるDX支援のニーズが急拡大していることを示している。
これほどの成果を短期間で実現できた背景には、もう一つ重要な要因がある。
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