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データの有効活用には「仕組みと組織」をこう変えろ Webサイトで結果を出すためのPDCAサイクル実践方法(後編)小川卓の「学び直しWebサイト改善」(1/2 ページ)

WebマーケティングでPDCAサイクルは非常に重要です。ただ、PDCAサイクルはあくまでも仕組みです。仕組みを実行するには人や組織、文化も必要になります。

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執筆者紹介 小川卓(おがわ・たく)

UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)

Webアナリストとしてこれまでマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務。


 前回は、PDCAサイクルの重要性や止まってしまう原因と具体的な解決策を紹介しました。

 PDCAサイクルはあくまでも仕組みです。仕組みを実行するには人や組織、文化も必要になります。「データを基に判断すること」についての社内理解向上や、体系立てて実行する人員が欠かせません。

 最終回となる今回は、その具体的な内容を解説していきます。

データドリブンな文化を作る 3つの要素

 Webマーケティングやデジタルマーケティングの世界において、「データドリブン」という言葉自体は頻繁に使われますが、実際にデータを活用した継続的な改善活動(PDCAサイクル)を組織に定着させるのは容易ではありません。

 ここからの内容は、特に経営や担当者の上司となるマネジメント層の方々にとって非常に重要な内容となります。

 それでは、データドリブンな文化を構築し、Webサイトの継続的な改善を実現するための具体的な方法について解説します。


写真はイメージ、ゲッティイメージズ

 データドリブンな文化とは、単にデータを収集・分析することではありません。データを基に改善を進めるための組織が作られ、運用されている状態を指します。

 私は、データドリブンな文化ができている状態とは以下の3つを指すと考えています。

(1)全員が納得できている数値目標(ゴールとKPI)がある

 KPIは、成功確率を上げるための方針決めと取捨選択であり、単なる評価指標やベンチマークではありません。そのため、KPI設計は担当者を明確にして草案を作成し、チーム全体で真剣に議論して決定する必要があります。

 そして、決定したKPIは必ず周知し、Webサイト、ビジネス、組織・個人の評価に活用することで、組織全体の意識統一を図ります。

(2)「データ分析」「データ人材育成」「データに基づいた評価」の環境が整っている

 これらの環境が整っていれば、分析や施策にチャレンジしやすくなり、改善に向けたモチベーションを維持することができます。

1.データ分析環境:分析を実現するための環境やツールの準備

 データを分析する環境が整っていなければ、PDCAの「Do=実行」しかできません。

 まずは、ユーザーを把握するための適切なツール選びとそのための予算を確保しましょう。その際、分析に向けた適切なデータ取得設計や各種権限の調整も必要となります。

 さらに、ツールの使い方や考え方が分からない場合のサポート体制も重要になります。困った時に頼れる場所が分からない状態になると、動きが止まってしまい、ちょっとしたきっかけでデータを活用しなくなってしまいます。

 下の画像は、私が以前リクルートに勤めていた際に作成していた、解析ツール用のポータルサイトです。よくある質問や最新の情報、セミナー資料や動画などを用意して500人程度の利用者を支えていました。


解析ツール用のポータルサイトの例

2.データ人材育成の環境:社内勉強会やチーム内での情報共有会の実施

 データ分析の環境だけが整っても、分析できる人材がいなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。ツールの使い方はツールベンダーからやインターネット上で学べますが、データの見方や分析方法を身に付けるのは簡単にはいきません。

 私のおすすめは、3段階のレイヤーを作り、それぞれに必要な知識を身に付けてもらうことです。それぞれのレイヤーで必要な知識は変わってきますが、まずはベースをしっかりそこえることで、必要な人材が育ちやすくなり、ビジネスゴールにつながらない余計な工数の削減も行いやすくなります。


データ人材育成の例

3.データに基づいて評価する環境:ゴールやKPIに貢献することが評価につながる

 ビジネスゴールやKPIにひもづいた人事評価項目を必ず設けましょう。

 実施した施策でいい結果が出ているのにそれが評価されないと、やる意味を見失いモチベーションが下がってしまいます。

 結果による数値目標を設定しにくい段階では、施策数(活動量)を評価として設定することもあります。もちろん定性的な評価の仕組みも外せませんが、同じくらい定量目標を明確にして責任を持たせる・持つことが大切です。

(3)自社のデジタルマーケティングの「ステージ」を理解し常に次を目指す

 自社の組織をよりデータドリブンな組織にしていくには、まずは自分たちの状態(ステージ)を理解する必要があります。以下は、私がデジタルマーケティングを6つの項目×5つのステージに分けたマップになります。

 それぞれの項目に対して、今自分たちがどこにいるのか、どのように次のステージを目指して進めていけばよいかの参考にしてみてください。


デジタルマーケティングにおけるステージ

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