「ユニファイドコマース」が小売業界の新常識になる、これだけの理由:Salesforce「Connections 2025」レポート(1/2 ページ)
今小売業界では、AIが買い物体験をどう変えるかに注目が集まっているが、もう1つ、重要なテーマがある。
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今小売業界では、AIが買い物体験をどう変えるかに注目が集まっている。AIエージェントが広がれば、顧客がAIと相談しながら買い物をする──という光景が“当たり前”になるかもしれない。
実は、小売業界で今注目を集めている重要なテーマがもう1つある。それが「ユニファイドコマース」だ。
6月11日から12日にかけ、米Salesforceはシカゴでマーケター向けの年次イベント「Connections 2025」を開催した。イベントの2日目、小売業向けにAgentic Commerce時代への基礎固めとして、大きく取り上げられたテーマはユニファイドコマースであった。
ユニファイドコマースの定義には決まったものはないが、Salesforceではあらゆるチャネル、データ、バックエンドシステムを単一の“プラットフォーム”に統合するアプローチとしている。
「ユニファイドコマース」が小売業界の新常識になる、これだけの理由
毎年1月にニューヨークで行われる小売業界向けイベント「NRF Retail's Big Show」(通称NRF)。2025年の同イベントで話題を集めたのは、何といってもAIである。2024年の生成AIからエージェンティックAIへ、小売業界からの関心と期待は衰える兆しを見せない。このAIに次いで、2番目に注目を集めた重要なテーマがユニファイドコマースで、「Connections 2025」でも大きく取り上げられた。
ここで浮上する疑問が、オムニチャネルコマース(あるいはO2O:Online to Offline)とユニファイドコマースは何が違うのかである。
店舗、ECサイト、モバイルのチャネルを統合するのは、どのチャネルを利用する場合でも、一貫性のあるショッピング体験を提供するためだ。顧客により良い体験を提供する。目指していることは共通するが、2つの最大の違いは統合の深さにある。チャネルの統合にとどまらず、バックエンドシステムまで含めた統合を実現するのがユニファイドコマースである。
オンラインショッピングは、店舗での買い物と同様に、私たちの生活に定着した。しかし、既にオンライン上で購入履歴があっても店舗では別人として扱われた、別の店舗にあるはずの在庫が実際にはなくて、買えなかったなど、誰もが少なからず残念な経験をしている。顧客体験の質の低さは、ビジネス機会の損失に直結する。分かってはいても、店舗中心でビジネスをしてきた老舗の小売業のバックエンドシステムはとても複雑で、それぞれのシステムの連携に負荷がかかっている。
なぜ今、ユニファイドコマースが世界の小売業からの注目を集めるようになったのか。個別取材で確認したところ、Salesforceのニティン・マンタニ氏(SVP/GM, Salesforce Commerce and Retail Clouds)は、その理由を2つ挙げてくれた。
まず、1つは前述のテクノロジー統合の問題に解決策が出てきたためだ。店舗、ECサイト、モバイルと、チャネルが増えるたびに個別に導入したバックエンドシステムをプラットフォーム上に統合するアイデアが現実のものになった。
もう1つは、新型コロナウイルスの流行で消費者の購買行動が変化したことだ。BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)の仕組みを導入する小売業が増えていることからも分かるように、チャネル横断型の体験への需要が高まってきた。「ユニファイドコマースの考え方自体は以前からあり、マルチチャネルあるいはオムニチャネルと呼ばれていた。テクノロジーが追いついたことで、ユニファイドコマースに関する議論の機会が増えた」とマンタニ氏は解説した。
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