Webサイト改善には欠かせない 「運用レポート」を成功させる3つのポイント:小川卓の「学び直しWebサイト改善」
今回は、Webサイトの継続的な運用と改善に欠かせない運用レポートについて、活用されやすくなるポイントと併せて解説します。
執筆者紹介 小川卓(おがわ・たく)
UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)
今回は、Webサイトの継続的な運用と改善に欠かせない運用レポートについて、活用されやすくなるポイントと併せて解説します。
Webサイト改善に欠かせない「運用レポート」とは?
運用レポートとは、Webサイトの状態を判断するために、定期的に決まった項目や条件で作成したレポートを指します。ダッシュボードだったり、資料だったりと形式はさまざまですが、Webサイトの「健康診断」をするためのものです。
アクセス状況やCV(コンバージョン)などを集計して、社内やチームに共有することで、状況報告や課題感の統一をスムーズにして改善や意思決定に役立てます。
運用レポートの活用シーン
- 目標達成への進捗状況と今後の予測を確認する
- 急激な数値の増減を把握し調査を行う
- 各施策が、どの指標に影響を与えたのか確認する
運用レポートがうまく活用されないケースでは、数値やグラフを羅列できたことに満足して、その後は眺めるだけになってしまいがちです。本来、運用レポートは、数値の変化に対して、さらなる分析や対策が必要かを判断するために活用すべきものです。
例えば、下記の健康診断結果のうち、より多くの方に理解されやすいのはどれでしょうか。
(1)結果だけ
LDLコレステロール:150mg/dl
(2)結果+比較対象
LDLコレステロール:150mg/dl
基準値:70mg/dl-139mg/dl
前回:135mg/dl
(3)結果+比較対象+対策
LDLコレステロール:150mg/dl
基準値:70mg/dl-139mg/dl
前回:135mg/dl
※脂質異常症の可能性あり
- 肉類のおかずより魚介類や大豆製品のおかずを心がけましょう
- アルコール、菓子、間食、甘い飲み物は控えましょう
結果だけではなく、比較対象や対策まで書いてあると次に向けて動きやすくなりますよね。これをWebサイトに当てはめてみると下記のようなイメージになります。
(1)結果だけ
エンゲージメント率:22%
(2)結果+比較対象
エンゲージメント率:22%
先月のエンゲージメント率:35%
自社内類似ページのエンゲージメント率:50%
(3)結果+比較対象+対策
エンゲージメント率:22%
先月のエンゲージメント率:35%
自社内類似ページのエンゲージメント率:50%
※ファーストビューで離脱されている可能性あり
- スクロールも少なく読了率も低いため、ファーストビューを確認しましょう
- 流入経路で異なるか確認しましょう
比較することで変化が分かるようになり、気付きから仮説も浮かびやすくなります。
どのような項目を運用レポートに入れるべきか?
Webサイト全体の数値をツリー構造で考え、「KGI」「KPI」「KPIの間接指標」に極力絞りましょう。
注意点として、運用レポートはたくさんのデータを細かく追加できます。例えば、GA4やサーチコンソール、広告関連のデータと、全体像から詳細まで作成していこうとすればキリがありません。
その時には必要だと思い、一過性の項目をやみくもに追加しても、それ以降は誰も見ない項目となるかもしれません。
レポートの内容やページが増えていくほど、作成にも時間がかかります。見る量が多くなることで、見てくれる人もだんだん減ってきてしまいます。
下記を意識して、多くの人が活用しやすいレポート作成を心掛けてください。
運用レポート作成時の注意点
- 個別の施策の分析など、一時的に原因を調べるための項目を入れない
- KGIにもKPIにも関係のない項目を入れない
- 「このデータを入れたい」といった要望は精査した上で反映させる
運用レポートを成功させる3つのポイント
ここまでお伝えした通り、運用レポートは活用できなければ意味がありません。そこで、運用レポートを成功させる3つのポイントを紹介します。
(1)運用の手間をなるべく楽にする
運用レポートの作成や数値の反映に時間がかかるほど、見てもらうまでに時間がかかります。レポートの新鮮さがなくなり、活用されなくなっていきます。
そのため、数値の取得は自動化しましょう。自動化できないものは、そもそも運用レポートに入れないか、省力化するための仕組みづくりが必要となります。
私のおすすめは、まずは「Looker Studio」や「Spread sheet」などの機能で出せる範囲で作ってみることです。その上でどうしても必要なデータがあれば、調整をしましょう。
(2)運用レポートと施策管理表を一体化すると分かりやすくなる
運用レポートは変化を捉え、目標の進捗確認、施策を評価する上で大切という話をしました。これらを把握するために欠かせないのが、施策が「いつ、どういう目的で実行されたか」という情報です。
施策を行ったのに数値に影響がなかった場合は、施策の効果が出ていなかった可能性が高いです。反対に、施策を行っていないのに数値が変化した場合は、外部要因があるのだと気付くことができます。
作成するには、データを出すチームと施策を実行するチームの双方の協力が必要ですが、用意できるとWebサイトに関わる全員が見てくれる運用レポートになります。
(3)気付きは文章でまとめる
(1)と(2)が実現されると、運用レポートから気付きを発見しやすくなります。
しかし、作成者自身は理解できたとしても、他の見る人が同じように解釈してくれるとは限りません。
見る人の興味によって、変化が少なくインパクトの薄い箇所を見ていたり、直近の数値だけで判断されてしまったりすることもあります。面倒だからと、数値を読み解かないといったケースもあるでしょう。
このような課題を解決し、重要なポイントを理解してもらうためには、文章で伝える必要があります。気付きを文章で追加しましょう。
1ページのサマリーシートを作ってもよいですし、吹き出しで気付きを入れて、画像にして送ってもよいです。短い時間で大勢の方に理解してもらえるよう工夫しましょう。
今回は、運用レポートの考え方やおさえるべきポイントを解説しました。まだ運用レポートを作成していない方は、これを機にぜひチャレンジしてください。すでに作っている方は今回の内容を元にブラッシュアップできるポイントがないかを考えてみましょう。
次回は、第1回でも解説したPDCAについて、より具体的な内容を紹介していきます。
執筆者 小川卓
おがわ・たく UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)。Webアナリストとしてマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。
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