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「品数多すぎ→反響分からん」問題、どう解決? DAISO流・アイデアを生み出す極意(1/2 ページ)

ヒット商品をどんどん生み出し続けるDAISO。同社では、商品数が多くて、一つ一つの商品への反響が見えないという課題があった。

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この記事は、顧客プラットフォーム「coorum」の開発・運営を行うAsobica(東京都品川区)が開催した「CX+ Summit 2025 『CX to BX』"ホンネデータ"からはじめるビジネス変革」のセッションをレポートした記事です。

 デジタル化が加速し、顧客の行動や価値観が多様化する現代。企業が持続的な成長を遂げるためには、顧客一人一人に深く寄り添い、「選ばれるブランド」としての確固たる地位を築くコミュニケーション戦略が不可欠だ。

 しかし、あふれる情報の中で顧客の“ホンネ”を捉え、真に心に響くコミュニケーションを設計することは容易ではない。

 ロイヤル顧客プラットフォーム「coorum(コーラム)」を手掛けるAsobicaは5月16日、「CX+ Summit 2025 『CX to BX』"ホンネデータ"からはじめるビジネス変革」を開催した。本稿では、その中で行われたセッション「従業員やお客様の声を活かした、"ホンネ"起点の価値創造」の模様をレポートする。

 登壇したのは大創産業(以下、DAISO)の山田亜梨沙氏と、Asobicaの佐藤頌太氏。DAISOは国内約4300店舗、海外約1000店舗を展開し、月間約1200種類もの新商品を世に送り出す巨大リテール企業だ。その圧倒的な商品数と店舗網は、顧客との多様な接点を生む一方で、個々の商品が持つ真の価値や、顧客が実際にどのように商品を使い、何を感じているのかを網羅的に把握することが困難だったという。DAISOはこの課題をどう解決したのか。

品数が多くて、商品への反響が見えない──DAISOはこの課題、どう解決?

 Asobicaの佐藤氏は、企業が考える価値と顧客が感じる価値の間にはしばしば「ズレ」が生じると指摘した。このズレを解消し、顧客の本質的なニーズに応えるためには、顧客自身から「教えてもらう」姿勢が不可欠だという。

 「商品の価値・お店の価値を決めるのは消費者、生活者の皆さんです。この方々がどう感じているのかを理解し、すり合わせていくことが重要です」(佐藤氏)

 この考え方を裏付けるように、DAISOでは顧客の想定外の活用法からヒット商品が生まれるケースが数多く見られた。園芸用の「加圧式霧吹き」が窓サッシの掃除に活用されたり、子ども用玩具の「ミニ洗濯機」が大人の化粧道具洗浄用に人気を博したり、「ラップホルダー」が折り畳み傘の収納に使われたり──。これらは、企業側の初期の想定を超えた顧客の「ホンネ」の利用シーンであり、新たな商品開発や訴求改善の貴重な種となっていった。


企業の意図とは異なる使用体験例(セミナー資料より)

 ただし、これらの発見は「たまたま見つかる」ものに過ぎなかった。こうした現状を受けて、DAISOとAsobicaは顧客の声を「もれなく見つけ出し」、事業推進につなげる仕組みづくりに着手したのである。

リリース前に相談 「DAISOアプリ」もファンと共創

 顧客の「ホンネ」を体系的に収集し、価値創造につなげるための核となる取り組みが、2023年12月に始動したファンコミュニティー「DAISOの輪」である。

 立ち上げの背景について、DAISOの山田氏は次のように説明した。

 「以前はWebサイトやSNSなど、私たちからの一方的な発信が主で、お客さまと双方向でつながる場所がありませんでした。また、膨大な商品数ゆえに、一つ一つの商品に込めた思いや価値が伝わりにくいという課題もありました」

 「お客さまが、何に価値を感じてくださっているのか。そのズレを把握し、ニーズに合った商品開発や売り場作りをするためにも、直接交流し、声を集める場が必要だと考えました」(山田氏)

 こうした背景から作られた「DAISOの輪」では、ユーザーがDAISO商品を使ったアイデアやおすすめ商品を共有する「みんなでシェア」や、特定のテーマでファン同士が語り合う「DAISOの輪サークル」、コミュニティ限定のコラム記事など、多様なコンテンツが展開されている。


DAISOの輪の機能(セミナー資料より)

 特筆すべきは、このコミュニティが単なる意見収集の場にとどまらず、「共創」の舞台となっている点だ。

 例えば、数字や数の数え方を学ぶ知育玩具「かずカード」の英語学習への活用法をファンが提案。これをきっかけに、そのファンがDAISO公式YouTubeチャンネルに出演するなど、ファンと共同でコンテンツを制作するまでに発展した。

 ヒット商品の一つ「プチブロック」シリーズ(※)では、ファンが集うサークルでの議論や座談会から生まれた声をもとに新商品開発を進める。また、ファンが作成したプチブロックオリジナル作品を実際の店舗のデジタルサイネージで紹介するなど、顧客の熱量がダイレクトに商品や販促に反映されている。

※参考:ダイソーの「プチブロック」がすごすぎる 知られざる“熱狂”の世界

 店舗の在庫状況が手元で確認できる「DAISOアプリ」の開発においても、ファンの声が重要な役割を果たした。リリース前にファンから使用感や欲しい機能について意見を募り、実際の機能改善に生かした結果、アプリストアランキングの上位に位置する人気アプリとなっている。


「DAISOアプリ」の開発でも顧客の声を生かす(セミナー資料より)

 このように、DAISOは顧客を「パートナー」として捉え、特別な体験を提供することでブランドへのエンゲージメントを深化させている。ファンとの積極的なコミュニケーションを通じた取り組みが、新たなファンを生み続けている。

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