「スシロー」「Chompy」に学ぶ テイクアウトやデリバリーが伸長する飲食業界のアプリ活用術:顧客とのエンゲージメントを築く(1/2 ページ)
コロナ禍で飲食業界は大きなダメージを受けたが、一方でテイクアウトやデリバリーの利用は拡大している。その状況を最大限に生かし、将来につながるリターンを得るためには、どのような戦略を打ち出すべきなのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によって私たちのライフスタイルは大きく変わり、そのことがビジネスにも影響を及ぼしている。外出機会の大幅な減少は店舗を持つ業態の企業に大きなダメージを与えた。特に飲食業界の被害は甚大だ。
逆風に立ち向かうべく、飲食業界は新たなビジネス機会を模索している。テイクアウトやデリバリーなどの新たな体験を提供することで顧客との関係を維持し、事業を継続して未曽有の危機を乗り越えようとしているのだ。
これらの努力を実りあるものとするためにはデジタルの活用が欠かせない。特にスマートフォンとそこにインストールされたアプリは、個人と直接結び付く接点として重要だ。
2020年7月16日、モバイルアプリ計測プラットフォームを提供するAdjustとCXプラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドはオンラインセミナーを共同で開催。回転すしチェーン「スシロー」を運営するあきんどスシローの竹中浩司氏(営業企画部 企画課 主任)と東京・渋谷を商圏とする国内発のフードデリバリーサービス「Chompy(チョンピー)」を提供するシンCEOの大見周平氏、Adjust日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏によるパネルディスカッションの形式で、デリバリーやテイクアウトならではの体験価値を実現するためのポイントや、アプリ活用の方法について語り合った。パネルディスカッションのモデレーターを務めたのはプレイド取締役の高柳慶太郎氏。本稿ではその内容を基に、顧客とのエンゲージメントを築くためのアプリ活用についてまとめる。
コロナ禍におけるアプリユーザーの変化
高柳氏が最初に掲げたテーマは「コロナ禍の数カ月で、アプリユーザーにどのような変化が見られたか」だ。
佐々氏は、「世の中でコロナの話が一気に広がったタイミングから、デリバリーアプリのインストール数は大きく上昇した。セッション数も引き続き上昇傾向にあり、コロナを機にインストールしたユーザーがかなり定着してきていると考えられる」と、データの推移を示した上で、フードデリバリー関連アプリの盛り上がりを解説した。
大見氏は実際にフードデリバリーアプリを提供する企業の所感として「Chompyはまだ小さな規模のアプリだが、成長率は毎週10%。業界全体としてもかなり伸びたと感じている」と話した。Chompyのオペレーション範囲は渋谷駅から3km圏内。緊急事態宣言前の3月初旬は渋谷中心部のオフィスからの注文が多かったが、緊急事態宣言後の4月初旬には恵比寿周辺の住宅街からの注文が増えるなど、ユーザー層の変化も感じたという。
竹中氏は、自社の公式アプリ「スシローアプリ」のダウンロード数について言及した。スシローアプリはもともと来店予約をするためのアプリという側面が強かったため、来店者数が減少すると同時にダウンロード数も低下し、従来の週数万件から3000件台まで落ち込んだ。その状況はゴールデンウイークまで続き、ようやく回復が認められたのは5月中旬以降になってからだそうだ。
来店者数の減少にただ手をこまねいていただけではない。外出自粛期間中にはテイクアウトを強化するための工夫も行った。アプリでは、これまでもトップページ下部にテイクアウトを注文できるページへの遷移ボタンを設置していたが、分かりにくかったことから、視認性が上がるようにデザインを変更。また、以前から計画されていたことではあったが、遷移先のネット注文サイトもデザインをリニューアルした。
テイクアウトに関しては、ネットで注文して店員と会わずにおすしを持ち帰れる「自動土産ロッカー」も話題になった。これらの施策の成果もあってテイクアウトは大きく伸びた。これまでの店内飲食とテイクアウトの売上比率は9対1であったが、自粛の影響が最も強かった4月末から5月初旬にかけては、多くのお客様がテイクアウトを利用された。現在は再び店内飲食が増えてきてはいるが、6月度のテイクアウトの売り上げも堅調で、前年比200%で推移している。
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