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お客さまとともに成長するHubSpot流「フライホイール」の回し方マーケティングファネルを超えて

「フライホイール」とは認知から始まる単線的な顧客獲得のプロセスを循環型のものとして捉え直した新しいマーケティングの考え方だ。これに基づき世界でビジネスを拡大するのがHubSpot。同社の社員にフライホイールの神髄を聞いた。

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 「2020年に働きたい企業 第1位」(注)として知られるHubSpotは無料のCRM(顧客関係管理)を中心にマーケティングや営業、カスタマーサービスのためのツールをSaaSの形態で提供し、世界中でビジネスを拡大させている。SMB(中堅中小企業)を主とする同社の有料顧客アカウントは現在7万8千社を超えた。共同創業者であるブライアン・ハリガン氏の共著書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経ビジネス人文庫)は日本でもよく読まれており、HubSpotユーザーでなくてもそのマーケティング哲学の一端に触れた機会がある人は少なくないはずだ。

※注 求人情報検索サイトを運営するGlassdoorが選出した「Best Places to Work 2020」ランキングに基づく

 HubSpotのユニークなところは、「インバウンド」と呼ばれる同社独自のビジネス手法を顧客やパートナーと共有している点だ。単にツールの販売にとどまらず顧客の成長を支援する姿勢は広く支持されている。「Smarketing」と呼ばれる、マーケティングと営業が一体化(Sales+Marketing)した活動を実践。そのプロセスのほとんどはオンラインで完結する。「アポなし営業」などは一切しない。スタートアップに多いSaaS系企業にとっては、HubSpotがロールモデルとなるケースも少なくないだろう。

 そのHubSpotが、従来のマーケティングファネルに代わる新たなフレームワークとして2018年に提唱したのが「フライホイール」だ。本稿はHubSpot日本法人のHubSpot Japanで実務を担うエキスパートたちの話を基に、フライホイールの神髄を分かりやすく解説する。

「フライホイール」とは何か

 日本語で「はずみ車」を意味するフライホイールは、自動車のエンジンなど回転運動を利用する機構に使う部品の一つで、回転の速度が速くなればなるほど生み出すエネルギーを増す。

 HubSpotにおけるフライホイールの中心には顧客が存在する。そして、マーケティング、営業、カスタマーサービスといった自社内の各部門が顧客を取り囲むように配置されている。各部門が協力して顧客の興味を引き、信頼関係を築き、満足させて自社の推奨者に転換するという図式だ。このサイクルを回して顧客に価値を提供し続けることでLTV(顧客生涯価値)が高まり、それが結果的に自社の持続的な成長につながる。

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「ファネル」から「フライホイール」へ

 フライホイールが「輪」の形になっているのは、顧客が新しい顧客を連れてきてくれることで、新しいプロセスが始まるためである。B2Cでは「口コミマーケティング」「ブランドアドボケイト」などといった概念がよく知られるところだが、B2Bにおいても社内のある部門での利用が紹介を得て別の部門へ拡大するケースはよくある。

 中心にいる顧客に対して企業がやるべきことは次の3段階に分かれる。

  • Attract(引きつける)
  • Engage(信頼関係を築く)
  • Delight(満足させる)

 マーケティング、営業、カスタマーサクセス/サービスの各部門は、各段階で顧客に「質の高い体験」を提供する必要があるのだ。

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企業と顧客の関わり方における3つの段階

HubSpot社員が持つ部門別のKPI

 当然のことながら、HubSpot自身のビジネスプロセスもこのフライホイールに基づいて設計されている。フライホイールをスムーズに回すため、HubSpotではマーケティング、営業、カスタマーサクセス/サービスそれぞれがどんなKPIを持っているのか。

マーケティング

 HubSpot Japanでシニアマーケティングマネージャーを務める土井早春氏は自身のKPIについて「主に月次経常収益(MRR:Monthly Recurring Revenue)の期待値とMQL(Marketing Qualified Lead)由来の収益の2つ」と話す。1つ目のMRR期待値の構成要素は「MQLの数」「平均受注単価」「クロージングレート」で、この3つ全てを増やすことを目指している。もう1つを「MQL由来の」としているのは、収益全てがマーケティング由来のものとは限らないので、マーケティングが貢献した収益を区別しているという意味だ。

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HubSpot Japanの土井早春氏

営業

 営業のKPIはMRRの実績値、すなわち売り上げである。同社セールスマネージャーの杉江 昂氏は「営業プロセスを複数のフェーズに分け、それぞれのフェーズにどのぐらい案件があるかを可視化し、次の一手を決めるためのパイプラインマネジメントをしている」と話す。

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HubSpot Japanの杉江 昂氏

カスタマーサクセス/サービス

 受注後を担当するカスタマーサクセス&サービスマネージャーの豊倉 濃氏は、カスタマーサクセスの点で「チャーンレート」(解約率)、カスタマーサービスの点で「導入支援後のアクティベーションレート(どのぐらい使われているか)」という2つをKPIとして挙げた。さらに、カスタマーサクセスとカスタマーサービスの両方で共有するKPIとして、先に挙げた2つの指標の間に位置するヘルスチェック(HubSpotを使用して顧客が成長、成功できているかの確認)を契約更新の数カ月前に実施し、解約の兆候や成功支援のポイントを見極めるようにもしている。

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HubSpot Japanの豊倉 濃氏

共通KPIがあるからできるスムーズな組織連携

 それぞれの担当者は自身のKPIを追いつつ、隣のチームとの連携を重視している。マーケティングは営業に渡すリードの質を高めること、営業はマーケティングが渡したリードを迅速にフォローすることがお互いに求められる。営業に素早くフォローしてもらうために、土井氏はリストの共有タイミングを工夫したり、マーケティング部門の施策を営業部門と共有し、議論する場を月次で設けたりしている。杉江氏も「フォローした後の商談化ができたか否かだけでなく、そのお客さまの反応をマーケティングにフィードバックすることが重要」と語る。

 営業とカスタマーサクセス/サービスは共同で「解約の防止」を重視している。契約した顧客が早期に解約した場合、営業担当者の成績にも影響する。足元の数字ばかりを追いかけて顧客視点を忘れていると、すぐに解約されてしまいかねない。解約防止のために重視しているのはHubSpotと相性の良い顧客を獲得することだ。期待値が高く契約まではスムーズに進んでも、使ってみて「こんなはずではなかった」と失望されては長続きしない。そこで「利用開始前にヒアリングしてほしい項目をカスタマーサービス(導入支援)チームが営業と共有している」と豊倉氏は語る。時には契約前のミーティングにカスタマーサービス担当が加わることもある。

 カスタマーサービスとマーケティングとの協力に関しては試行錯誤を続けているところではあるが、土井氏は「既存顧客が満足しているポイントをまだ知らない人たちにも伝えることには注力している」と話す。満足度を定量的に表現しようとしても、他の人たちにはなかなか伝わりにくい。そのため、カスタマーサクセス担当者とマーケティング担当者がお客さまの成功事例を確認するミーティングを月次で設け、事例資料作成などを通じて顧客の生の声を定性的に伝え、理解を促すように工夫を凝らしている。

スモールスタートではなくスモールサクセスを

 社内の他部門と連携してビジネスを前に進める上では、HubSpotとして大切にしている哲学も重要な行動指針となっている。豊倉氏が紹介したのは「スモールスタートではなくスモールサクセスを軸に考え、行動する」という言葉だ。

 スモールスタートは良いアプローチだが、「始めるためのゴール設定やリソース配分」に留まり、「成功するためのゴール設定やリソース配分」ができていないケースも少なくない。今までスプレッドシートで管理していたリストを単にHubSpotのツールに移そうとしても、それだけで成果は得られない。そもそも専任のマーケティング担当者不在ではツール導入だけで手いっぱいになり、それを使って成果を出すどころではない。HubSpotはまずそれぞれの顧客の成功を定義することからはじめ、そのために自社内の各部門がやるべきことを考え、連携してフライホイールを回している。

 「Grow Better」という考え方もある。スモールサクセスを積み重ねて成長するのは素晴らしいことだ。しかし、成長すること自体を顧客への価値提供より優先してしまったり、成長を急ぐあまり社員が疲弊したりすることは避けたい。より良い方向に、より良い形で成長することを目指すのが、HubSpotの流儀だ。

 顧客のビジネスがうまくいってビジネスの規模が拡大すれば、顧客がやりたいことやツールに求める機能も変わってくる。HubSpotはSMBを主要顧客とすると述べたが、スタートアップがいつまでも小さなままでいるとは限らない。そこで現在では、組織の成長に合わせて最適なツールを選べるよう、「Marketing Hub」「Sales Hub」「Service Hub」「CMS Hub」の各製品群(Hub)において、上位エディションも選択できるようにしている。

 顧客が成功を積み重ねていれば当然、アップセルやクロスセルのオファーを提示するタイミングが来る。しかし顧客の状況を無視してより上位の製品を無理に売るようなことはしない。経済環境の悪化など事情があってツールへの投資を縮小せざるを得ない顧客には、一時的なダウングレードを含めた提案をすることさえある。無理な販売をした結果、顧客が一定期間内に解約すると、過去の営業成績からマイナスされ、昇進にも影響する仕組みになっている。優先するのはあくまで顧客なのだ。

HubSpotのそうした柔軟な姿勢は、顧客からも評価されている。豊倉氏によれば、HubSpotを解約した顧客が再び戻ってきた経験も1度や2度ではない。

全てがデジタルで完結するビジネスを実践するために

 HubSpotは商談も顧客のサポートもほとんどオンラインで実施している。デジタルの顧客接点を通じた非対面・非接触のコミュニケーションは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響でワークスタイルの刷新が求められる今日の日本企業にとって、避けて通れない課題でもある。

 B2Bマーケティングにおいて今後予想される変化の一つが、情報収集経路における一層のデジタルシフトだ。企業によってはこれまで補完的な位置付けでしかなかったWebマーケティングが大きく比重を増すと考えられる。ウェビナーやチャットのような新しいチャネルを使いこなす必要もある。各チャネルから収集したデータを統合管理し、次の一手に生かすことも重要だ。

 効果の高い施策を次々と展開し、マーケティング、営業、カスタマーサービスが一体となってフライホイールを回す上で、HubSpotが提供するツールは有力な選択肢になるだろう。無料で使えるCRMを軸に各種Hubを連携させて素早く顧客中心のシステムを構築するのだ。最近リリースされた「CMS Hub」を使えばWebサイトのコンテンツ管理も簡単にできる。

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HubSpotの製品群

 ビジネスのプロセス全てをデジタルチャネルだけで完結させるのはハードルが高いように思うかもしれない。しかし、HubSpotはこれまでもそれをずっとやってきた。

 杉江氏は、これからデジタルシフトを進めようとする企業に「学びのコンテンツを充実させることが重要」とアドバイスする。顧客は購入前から自己学習を続けている。オンラインで過ごす時間が増加すれば、そういったコンテンツの重要性はますます高まる。それを裏付けるように豊倉氏も「お客さまがオンラインに慣れてきた。加えて『HubSpot自身はどうやっているか』を聞かれるようになった」と語る。

デジタル中心、あるいはデジタルだけでの顧客体験の構築は、日本企業にとってチャレンジではある。HubSpotはそうしたデジタルシフトを進めようとする企業のために、SaaS用のKPIダッシュボードのテンプレートを無料で提供している。HubSpotのように成長したいと考える企業は、このテンプレートを活用し、まずは自社のKPIを見直すことから始めてみてはどうだろうか。

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提供:HubSpot Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia マーケティング編集部/掲載内容有効期限:2020年6月25日

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