「Oracle Data Cloud」とTrue Dataの連携は日本のプログラマティック広告をどう変えるか:オフライン購買データからの広告ターゲティング(1/2 ページ)
「Oracle Data Cloud」とTrue Dataの購買データが連携し、プログラマティック広告配信においてリアル店舗の購買データを活用したターゲティングが実現した。これで何が変わるのか。キーパーソンに聞いた。
あるスーパーマーケットで購買データを分析した結果、紙おむつとビールの売り上げに相関関係があることが分かった。データ分析担当者は、赤ちゃんのいる家庭ではママがパパに買いものを委託し、店に来たパパはついでに缶ビールを買って帰るからだという仮説を立てた。そして、おむつとビールを並べて売るようにしたところ、飛ぶように売れるようになった――。
データ活用に関する文献でしばしば紹介されるこの有名なエピソードの後半部分は作り話であるとされるが、データの中から人間の想像力の及ばないインサイトを導き施策に活用したいという思いは、多くのマーケターの共通の願いでもあるだろう。
広告の領域においても、データを活用したオーディエンスの発見とターゲティングの精度向上は急務の課題だ。いたずらにインプレッションを増やすよりも、データに基づいてできるだけ未来の顧客になりそうな人を選んで広告を見てもらいたいと考えるのは自然なことだ。
Oracle Data Cloudは、そうした広告主企業が外部データ(第三者データ)を活用して広告配信を最適化するために用意されたデータサービス群だ。現時点で世界100カ国以上におけるブランド広告主上位200社中199社はOracle Data Cloudを活用している。
Oracle Data Cloudは近年買収した以下6つのサービスを基に構築されており、人々の属性理解(Audience)と行動・考え方の理解(Context)、効果測定(Measurement)の3つの機能を有する
■Oracle Data Cloudを構成する最先端のテクノロジー
機能 | サービス名 | サービス内容 |
---|---|---|
Audience | Bluekai | DMP(Data Management Platform)。外部データの販売環境 |
Datalogix | オフライン購買データ(米国のみ) | |
AddThis | ソーシャルプラグインを通じて媒体社の顧客データ拡大 | |
Crosswise | チャネル・デバイスをまたぐユーザー行動を関連付け | |
Context | Grapeshot | ブランドにふさわしくないコンテンツやカテゴリーを避けて適 |
Measurement | Moat | ビューアビリティ、ブランド・セーフティ、botによる広告不正(アドフラウド)可視化し、真のエンゲージメントを追求するための効果測定 |
データに基づいたデジタル広告枠のリアルタイムな自動買い付け(プログラマティック広告)という観点から重要になるのはAudience機能だ。日本でもECの領域においては、人々の興味関心を知り購買に近い層を推定してコンバージョンを促すため、Oracle Data Cloudは活用されてきた。
しかし、現実的には日本ではまだなお購買のほとんどはオフラインで行われている。EC市場は拡大を続けているものの日本は諸外国に比べてEC化率が低い。経済産業省の発表によると物販系分野ではEC比率は約6%(2018年)にすぎない。
オーディエンスの理解を深めるためにはオフラインデータの活用が欠かせない。そこでOracleが選択したのが、データマーケティング企業のTrue Dataとの連携だ。True Dataは6000店舗5000万人、過去15年分のID-POSデータを保有する。これは日本における最大級のオフライン購買行動ビッグデータといっていいだろう。これを基にした統計データを活用することで、どこで何が誰に売れているのかを把握して、より精緻な広告ターゲティングが可能になったのだ。
Oracle Data Cloudが日本国内のリアル店舗購買データを連携するのは、今回が初めてのこと。サービスは既に12月から開始されているが、これにより具体的に何が変わるのか。Oracle Data CloudバイスプレジデントでOracle Data Cloud Internarional担当ゼネラル・マネージャーのマーク・アシュワース氏とTrue Data代表取締役社長の米倉裕之氏に聞いた。
Oracle Data Cloudを使う意義
――Oracle Data Cloudを活用することでマーケターにどのようなメリットがあるのかあらためて教えてください。
アシュワース Oracle Data Cloudは特に広告の領域における課題に特化した製品です。グローバルおよびローカルのDSPとも連携し、幅広く広告のエコシステムの中でデータを活用できるようになっています。
――広告とひとくちにいってもブランディングもあればパフォーマンス目的のものもあります。マーケティングファネルでいえば上か下か、Oracle Data Cloudはどういう使われ方があるのでしょう。
アシュワース 今回のTrue Dataとの取り組みの意義はまさに、ファネルの上から下まで網羅して行ったり来たりできるということです。キャンペーンごとに異なる目的・指標に合った使い方ができます。例えばブランドの認知度を上げたいという目的があったとして、既存のデータだけでなくTrue Dataから提供される細かいアクティベーションからターゲティングすることもできます。
――True Dataは全国のドラッグストアやス−パーマーケットのオフライン購買データを多く保有しています。それでいうと主に消費財(CPG:Consumer Packaged Goods)メーカーの利用を想定しているのでしょうか。
アシュワース CPGはわれわれにとって重要なセグメントです。今回のTrue Dataの取り組みにおいても注力分野の1つではあります。しかし、両社の関係が成熟する中で他の業界でもデータを活用することができるようになると考えています。
米倉 さまざまなデータを接続して重ね合わせる取り組みが進んでいます。例えばわれわれのデータソースをクレジットカード情報(個人を特定できないもの)と掛け合わせることで、教育にお金を使う人、旅行にお金を使う人というように、同じデータに違った見方ができるようになってきています。データの連携が進むほど、より立体的な見方が可能になります。
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