アテニアが実践 ブランディングからCRMまで、動画広告でどこまでできるか:サイバーエージェント流 動画広告の科学(後編)(2/2 ページ)
ファンケルグループの化粧品会社アテニアの広告担当者と語り合った、認知だけにとどまらない動画広告の可能性。
素材がタテ型の化粧品や飲料はスマホ全画面との相性が特にいい
加藤 ユーザーの購買につなげるためには、ネット内の動きを可視化させ、改善に向けたPDCAサイクルを繰り返すことがやはり重要ですよね。改善のためには、運用変数をたくさん持って可視化することで、結果として適切な投資や適切なクリエイティブ開発につながっていくのだと考えています。
冨山 実際に今回制作していただいたクリエイティブがこちらになります。離脱を防ぐために、冒頭の数秒にアイキャッチとして動きをつけ、商品ボトルが美しく見えるように陰影つけ、細部まで徹底して撮影を行いました。また、実際に商品を肌につける使用感、質感の良さが伝わるようモデルの表情にもこだわりました。
豊田 LODEOはタテ型の動画を特徴としているのですが、化粧品や飲料など商品自体がタテ型だと相性が良いのです。
冨山 その通りですね。結果としては、既存ユーザー、新規ユーザー共にリフトはUPしたのですが、特にWebサイト内で購入経験のあるユーザーのリフトが大きく、CVRが+21ポイント、購入点数が+1.8個とリフトしていました。LODEO以外にも何かしらの影響は受けているかもしれませんが、これだけの差がついたことは驚きでした。
新海 当初は、新規ユーザーの獲得を狙っていたのですが、既存ユーザーの態度変容につながっていたことは想定外でした。普段の自分の実生活に置き換えると、自分が買っているブランドの広告をついつい見てしまっているため、この結果は納得のいくものでした。通販会社の場合、広告は新規ユーザー獲得のために実施していくものという考えがあったのですが、今回の取り組みを通じ、動画広告は既存ユーザーの態度変容にも確実につながっているのだと気付きが得られましたね。また、動画という強みをあらためて実感して、弊社のWebサイトの中の動画コンテンツもこうしたらもっといいのではないかとヒントが見えました。
動画マーケティングの未来
豊田 貴社ならではのCRMとしての動画活用も新たに見えてきそうですね。
新海 動画の活用は模索中ですが、可能性は非常に感じています。静止画に比べて動画はスムーズに多くの情報を届けユーザーに理解してもらえるため、視覚に訴えていきたい化粧品だと尚相性が良いと考えています。今後チャレンジしてみたいと考えているのは、メイクのハウツーなどは動画との相性はよさそうですね。
加藤 動画の使い方もいうろいろ増えてきています。例えば、ブランディング用の動画のみならず、ハウツー動画をつなげて編集し、動画の前半と後半で訴求内容を分けているような動画を展開し、一度ブランディング動画に接触し、認知した人には2回目以降に接触した時にはハウツー動画を見せ、利用意向を上げることを狙うようなシナリオ配信に取り組む広告主も出てきています。
豊田 例えば、アテニアさんだと既存ユーザーへはハウツーを見せるとアップセルにつながっていくと思いますし、ユーザーによってコミュニケーションの設計を細かくしていくことがキーになりそうですね。ブランディングと販売促進で分けて動画を作成してみると、アテニアを知らない人にはアテニアのブランドメッセージや上質感を伝えることで意向を上げていき、既存ユーザーへは購入した商品をこんな風に使っていただくと肌が明るくなるなどの設計ができそうですね。
新海 はい。まさに弊社のような通販会社の場合、新規獲得のための広告予算としてプロモーションを動画に寄せた場合、これまでの獲得数を担保できるのかと、積極的な議論になりにくい。それをブレイクスルーするためにも、動画広告は短期的にも購買につながり、中長期でもうちのコアファンになっていただくために有効であると捉えるという、複数視点を持つことが大事と考えています。
加藤 そうですね。私たちも動画活用の目的はもっとさまざまな方向でバリエーションが増えていくと考えています。LODEOはこれまで、いわゆる認知や想起を向上させるブランディングの役割を担うことを目指していたのですが、例えば、販売促進などのセールスプロモーション目的に近い動画広告を作っていくことや、チラシに近いクリエイティブ開発を行ってみるなど、動画の在り方を360度いろいろな可能性を考えて事業の方向性を検討しています。
冨山 なるほど、動画の活用方法は無限ですね。うちにとってもプロモーションの目的に応じてたくさんの広告メニューをご提案いただけけるのはとてもありがたいです。ぜひまた新しい取り組みを一緒にチャレンジできたらありがたいです。
加藤 ありがとうございます。新しい取り組みを一緒にさせていただきながら、LODEOもプロダクトとして進化できるように頑張ってまいります。
執筆者紹介
加藤 徹
かとう・てつ サイバーエージェント アドテク本部 LODEOカンパニー 事業責任者。2004年にサイバーエージェントに中途入社し、インターネット広告代理事業本部にて営業、スタッフ部門に従事後、2014年にアドテク本部に異動。動画広告のネットワークであるLODEO(ロデオ)の事業責任者として事業運営に携わる。
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