SimilarWebと「マーケットインテリジェンス」に関するモヤモヤしたことを幹部に聞く:マーケティング領域を超えて用途が拡大(1/2 ページ)
Webサイトやアプリの競合分析ツールを提供するSimilarWeb。マーケティングにとどまらず応用範囲を拡大する「マーケットインテリジェンス」の現在について同社幹部に話を聞いた。
自社のWebサイトやモバイルアプリのパフォーマンスを競合他社と比較したり市場全体の動向を把握したりするツールを提供するイスラエル企業のSimilarWeb。世界ではAirbnb、Walmart、HSBC、eBay、adidasなど3000以上のグローバルブランドが採用するなど、企業の意思決定に欠かせないものとなりつつあるという。
SimilarWeb創業者のオアー・オファー氏はもともとジュエリーデザイナーである母親のデザインした商品を自社のWebサイトで販売していた。そこで自社の類似サイトを発見するためのツールを開発したことから、SimilarWebが生まれた。
同社のツールが可視化するデジタルの知見は「マーケットインテリジェンス」と呼ばれる。これを活用することでどのようなメリットがあるのか。SimilarWebがよく使われているのはどのような業界か。日本での展開はどうなっているのか。SimilarWeb CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)のキャリー・ラゾルチャク氏とマーケティング ソリューション担当バイスプレジデントのロン・ピック氏に聞いた。
マーケットインテリジェンスとは何か
――あらためて、SimilarWebはどのようなツールなのか教えてください。
ラゾルチャク氏 今日、多くの企業がWeb解析をはじめとする自社のデータを取得してビジネスに活用しています。しかし、マーケットにおける自社のポジションを正しく理解するためには、業界や競合他社のデータも取得する必要があります。それを担うのがマーケットインテリジェンスであり、それこそがSimilarWebの中核的な役割です。
――SimilarWebが特によく使われるのはどういう業種でしょうか。
ピック氏 小売業、EC、旅行、消費財、消費者金融などで多く使われる傾向にあります。これらの業種に共通するのは、ユーザーがデジタルに精通し、インターネットに触れる機会が多いことです。そのような領域においてこそ私たちの強みがあります。
ラゾルチャク氏 B2Bでの利用も増えています。例えば、2018年12月に日本で当社が開催したイベント「マーケットインテリジェンスサミット」では、DHLの成功事例を紹介しました。国際宅配便や運輸などを手掛ける世界最大級の国際輸送物流会社であるDHLは、SimilarWebを通してECのオンライントラフィックを追っています。SimilarWebのデータを通じてどのようにモノが流れているのかを把握し、適切な国際シッピングを展開できているのです。物流サービスのようなB2Bの世界でも、最終消費者の動向を把握しておくことは事業の成長に欠かせません。
――マーケットインテリジェンスという概念になじみが薄い人もまだ多そうですが。
ラゾルチャク氏 啓蒙活動は私たちの責務だと考えています。SimilarWebを広く知っていただくために、無料版の製品を提供しています。これは、日本でも初期から広くご利用いただいています。まず無料版を使っていただいて、デジタルチャンネルでどういうことが起こっているかを把握していただく。そこから、より深い分析をしたい方に有料版の「SimilarWeb」を提供しています。
――それがSimilarWebの収益モデルなのですね。
ピック氏 さらに、SimilarWebの利用の幅は広がっています。ビジネスが成長するにつれ、私たちが提示できるデータから、マーケティング以外にもさまざまなインサイトを生み出せることが分かってきました。例えば投資家は、私達のソリューションを通じて得られるデータを使って、各業種のマッピングをしてどのようなところに投資すべきなのかという、適切な情報を得ることができます。営業の領域であれば、オペレーションを支える部隊がリードを発掘するためにも活用できます。一方で、リサーチャーたちは、他社のトレンドがどのような傾向になっているのか、SimilarWebのデータを利用しながら戦略を構築しています。
ラゾルチャク氏 今説明したような切り口でマーケティング部門向けの他、リサーチ部門向け、営業部門向け、投資関連部門向けと、それぞれの利用に応じて独自のインタフェースを構築し、先ごろ新たな製品スイートを発表しました。それぞれの用途別にSimilarWeb側でデータを自動分析し、インサイトが見つかったらプロアクティブに通知を出すというものです。まずは日本語を含む主要5言語に注力して展開します。
――戦略立案や意思決定を支援するという意味では、ニーズはマーケティング部門だけにとどまらないわけですね。
ピック氏 さらにいえば、同じ部門でも役職や担当業務によって当然ワークフローも変わってくるので、見たい指標が異なります。マーケティング向けのソリューションでも、CMOから現場の担当者までそれぞれ見たいものを組み合わせていただいて、最適な形で使えるようになっています。
ラゾルチャク氏 各ワークフローに適した言葉で誰もが理解できるような流れを構築することが重要です。例えば私たちの主要顧客である広告代理店には、たくさんの広告主がひも付いています。その場合、広告主別にワークスペースを設置し、それぞれに向けて独自のインサイトを提示します。
――SimilarWebの競合となるサービスはあるのでしょうか。
ラゾルチャク氏 よい質問です。SimilarWebは幅広く使える特殊性を持った製品であり、常に特定の企業と競合しているということがありません。というのも、ユースケースや業種によって使い方が変わり、その時々で競合が変わってくるからです。
――企業がデータを通じてどのようなインサイトを得たいかによると。
ピック氏 最近では他のデータソースを組み合わせたいというニーズが高まっています。私たちがカバーできるデジタル以外の、例えばテレビの視聴率データや店頭のPOSデータなどを組み合わせたいというニーズがあります。また、広告だけでなくSFA/CRMなど、さまざまな領域でデータ連携は必要となるでしょう。もちろん、それらとAPI連携させることも可能です。
ラゾルチャク氏 ただ、私たちのビジネスの狙いは、無数のツールと連携することで高度なプロフェッショナル利用を促し収益を上げることではありません。むしろ重視しているのは誰もが簡単にデータを基にした分析ができるようになることです。さまざまなツールと連携を進めつつも、使いやすい形でお届けしたいと考えています。
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