サブスクリプションビジネスを成功させるにはマネタイズより「つながり」を重視しよう:今こそ本質を知る(1/2 ページ)
サブスクリプション化の課題とは課金であり、コストをコントロールしてユーザーが導入しやすい料金プランを用意すればいいと安直に考えていないだろうか。そこには大きな誤解がある。
所有から利用へ――。
製品売り切り型のビジネスから継続的にサービスを提供するサブスクリプション型への転換が、B2CのみならずB2Bの世界でも進んでいる。しかし、そこにはこれまでにない多くの課題も生じる。サブスクリプションビジネスを成功させるには、まずその本質を正しく知らなくてはいけない。
本稿では、2019年3月15日にNTTPCコミュニケーションズがパートナー向けに開催したイベントにから、兵庫県立大学教授の川上昌直氏の講演「サブスクリプションを支える『つながり』」と、それに続けて実施されたVAIOなど3社によるトークセッションの内容を要約して紹介する。
「サブスクリプション=定額制課金」ではない
「所有から利用へ」を語る際に、切っても切り離せないのが定額制課金である。定額制課金はサブスクリプションの魅力として真っ先に想起されるものであり、ローンやリースといった古くからある定額制課金の仕組みの延長線上にサブスクリプションがあると考える人も多いだろう。しかし、残価設定ローンを指してサブスクリプションと呼ぶのは大きな誤解だと川上氏は指摘する。
「実はサブスクリプションには定額制だけでなく従量制もある。例えばGEの航空エンジンは飛んだ距離の分だけ課金する。スペインのコメディー劇場では、顔認証の技術で笑った回数をカウントし、それに応じて課金している例もある。企業が注目すべきは、定額制であることよりもサブスクリプションというビジネスモデルそのものだ」(川上氏)
「Subscription」の動詞形である「Subscribe」は「申し込む」を意味するだけであり、そこに「定額制」の含意はない。そして、申し込むのはユーザーだ。
川上氏は「サブスクリプションとは、ユーザーが将来にわたって継続的に利用する意思を示し、なおかつ継続的に企業に代金を支払うこと。実はマネタイズではなくユーザーとのつながりの問題」と強調する。
成功する企業はユーザーとのつながりが強い
「企業の目的は顧客の創造」とはピーター・ドラッカーの言葉だが、ユーザーがいなければ企業の活動は成り立たないのは言うまでもない。
企業の存在価値とは、製品やサービスを提供することによって、ユーザーがその分だけ生活を向上させられることであり、B2Bでいえばユーザー企業のパフォーマンスを上げることにある。
「サブスクリプションで成功する企業は、ユーザーとのつながりが強い企業。つながりが強い企業はユーザーの購入後を重視する。サブスクリプションで成功するためには、購入以前から購入後のアップデート、アップグレードに至るまで、ユーザーの生活をしっかりと見届けられることが必要不可欠だ」と川上氏は語る。
多くの企業は売ることがゴールと考える。しかし、ユーザーにとってはモノを買ったり契約することは、スタートにすぎない。買ったモノを利用して使いこなすことで自身の課題が解決しない限り満足は得られない。
ユーザーの活動に寄り添うためには、これまでのように購入前後のタッチポイントに着目しただけでは不十分だ。特に購入後、ユーザーが利用し、ジョブ(ユーザーの課題)を解決し続け、卒業(廃棄)に至る過程は企業側からは見えていなかったが、今まで放置してきたこれらの「アンタッチポイント」においてこそ、ユーザーに手を差し伸べる必要があるのだ。
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