HubSpotに学ぶインバウンドリクルーティング事例:インバウンドリクルーティング入門 第2回(1/2 ページ)
デジタル時代の人材採用に求められる「インバウンド」の思想。今回はHubSpotの実践例に学びます。
第1回「なぜ人材採用にマーケティング発想が必要なのか」では、インバウンドリクルーティングの概念や注目される理由について解説しました。
インバウンドリクルーティングは、ペルソナを設計し、彼らが喜んでくれるような情報を発信しながら、中長期的なコミュニケーションを経て採用につなげる手法で、インバウンドマーケティングの考えを採用に適用したものです。
今回は、インバウンドリクルーティングの代表的な実践例としてHubSpotについて紹介します。筆者も、記事執筆に当たってあらためて調べてみて「ここまでやるのか」と驚くとともに、自社の採用にも取り入れたいポイントを見つけられました。
109ページにわたるカルチャーコード
米国ボストンに本社があるHubSpotは、今から14年ほど前にインバウンドマーケティングの考え方を提唱したブライアン・ハリガン(同社CEO)とダーメッシュ・シャア(同社共同創業者)が設立した会社で、インバウンドマーケティングのパイオニア的な存在です。
2人で創業したHubSpotは既にニューヨーク証券取引所に上場しており、従業員も2400人を超えるまでに急成長しています(2018年10月時点)。同社では数年の間に多くの人材採用をしていますが、採用においてもインバウンドマーケティングの考え方が強く反映されています。
HubSpotのインバウンドリクルーティングを、同社が公開している「HubSpot Careers」(外部リンク)のコンテンツを見ながら紹介していきましょう。
HubSpot Careersのトップページに入るとまず目に飛び込んでくるのが「HubSpot Culture Code」です。米国のIT企業では、就職を決める上で会社のカルチャーが重要視される傾向があり、カルチャーコードを公開している企業がほとんどです。
HubSpotのカルチャーコードをまとめた資料は109ページにわたります。カルチャーコードは大きく分けて7つありますが、この7つを正しく誤解のないように伝えるために、どういう意味なのか、どういう状態なのかを、1項目ごとに十数ページも割いて詳細に説明しているのです。
その中で、HubSpotが採用と評価、育成において重視するポイントとして挙げているのが「HEART」です。
- HUMBLE:謙虚
- EMPATHETIC:共感性
- ADAPTABLE:柔軟性
- REMARKABLE:卓越した長所
- TRANSPARENT:透明性
そして続く採用に当たってのメッセージに、ハッとさせる言葉がありました。
HubSpotは会社の未来を守るためカルチャーに100%マッチする人材以外は絶対に採用しません。
逼迫した状態では候補者のスキルと経験だけに注目しがち。そこに落とし穴があります。
採用の妥協は大きな負債となって会社の未来に影を落とします。
人手を増やすだけの採用は厳禁。
人手を増やして大量に抱えた仕事を押し付けたい。そんな動機の採用はNGです。
採用するのは新たな価値をもたらす人材。
今の私達には無い優れた何かを持っている人。採用はHubSpotに新たな価値をもたらすチャンスです。
私自身、採用においてカルチャーフィットは一番大切にしている部分ですが、カルチャーフィットしない人材の採用を負債とまで言い切って公開する覚悟に衝撃を受けました。そして、今ある仕事の人手として採用するのではなく、新たな価値をもたらす人を採用するという言葉にも、経営者として身につまされるものがあります。「業務拡大につき、人材募集」ではなく、新しい価値を生み出してくれる人を採用するという強いポリシーを感じます。
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