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パナソニックが実践する採用マーケティング、大企業にも「エンゲージメント」が必要な理由とは?相互理解を深めミスマッチを解消する(1/2 ページ)

好景気と少子化が企業間の人材獲得競争を激化させている。一方で、学生たちの情報感度は高くなった。そうした中、企業の採用戦略に求められるのがマーケティングの視点だ。パナソニックの取り組みをレポートする。

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 新卒採用は今、大きな転換期を迎えている。厚生労働省の調べによると、2018年3月卒業学生の就職率は過去最高の98%(4月1日時点)。超売り手市場で人材獲得競争が激化している昨今、求人広告を出したり求人企業が主催するイベントに出たりという、決められた手順に従ってアピールするだけでは、自社の求める人材を十分に確保できない。

 需給バランスの変化もさることながら、今日の採用難の背景としてもう1つ理解しなければならないのは、今の学生がデジタルネイティブ世代であるということだ。彼らは企業やマスメディアが発信するオフィシャルなコンテンツからネットの口コミ情報まで、あらゆるソースにアクセスする。企業の採用活動が始まるのは3年生の3月からだが、情報リテラシーの高い学生ほど、情報収集活動は早期化している。

 「学生を対象にしたある調査では回答者のほぼ全てが、3年生の夏休みが終わる頃には志望する企業のトップ20を決めているデータが出ていました。Googleのキーワードのボリュームを見ても『採用 社名』で調べ始めるのは1月です。3月にパートナー企業を通じた採用広報が始まるまでの間、アンダーグラウンドの情報だけで判断されても困るので、企業はもっと早期から、自社の正しい情報を出し続ける必要があります」と語るのは、パナソニックの杉山秀樹氏だ。杉山氏の所属は「採用ブランディング課」。日本を代表するグローバル企業の1つである同社が2017年1月に立ち上げた部署だ。


パナソニック採用ブランディング課の杉山秀樹氏

パナソニックの採用マーケティング

 「われわれが発信する情報がターゲットである学生にきちんと届くようにするためには、ターゲットのインサイトを把握した上で、最適なアプローチの仕方を考える必要があります」と杉山氏は語る。カレンダー通りの定型化したプロセスに乗っかるだけでは欲しい人材とつながることができない。そこで、採用にもマーケティングの視点が求められるようになったというわけだ。

 杉山氏らはまず、就活を控えた学生のインサイトを知るための調査に着手した。心掛けたのは、パナソニックに対する興味の有無に関係なく、純粋に彼らの悩みに耳を傾けることだ。「パナソニックという名前が出てくる人は、いわば顕在層。顕在層に対してマーケティングオートメーションのような仕組みを入れてナーチャリングすることももちろん検討課題にはなり得ますが、まずはそれ以前に、もっと解像度の低い、ぼんやりした関心を捉える必要があると考えました」(杉山氏)

 インタビューは1年をかけて行われ、出会った学生の数は1000人に及んだが、個別に深いニーズを探る一方で、より広いトレンドを知る必要性も感じていた。そこで導入したのが、スパイスボックスのソーシャルリスニングツール「THINK」だ。THINKは、SNS上の投稿データや話題となっているWeb記事データを抽出して、統計解析の手法により「何が語られているか」「何が読まれているか」を可視化してくれる。企業が自社や競合の評判を知りPRやマーケティング施策の策定に役立てるのが主な用途だが、採用市場にもそのまま応用できる。

 インタビューとソーシャルリスニングの2つの取り組みから見えてきたのは「キャリアへの不安」というインサイトだった。

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