クレディセゾンとオムニバスが描くリテールテックとマーケティングのこれから:決済データ×広告で何が変わるのか(前編)(1/2 ページ)
Amazonを筆頭とする巨大流通企業のテクノロジーや膨大な保有データによって、マーケティング競争の論理はどのように変化しているのか。これにライバルはどう対抗すべきなのか。
2018年10月23日、アドテクノロジーを軸にデジタルマーケティング支援サービスを提供するオムニバスはクレディセゾンと共同で「決済プラットフォーム×アドの『共進化』〜リテールビジネスにおけるデータ活用とは〜」と題したセミナーを開催した。
2017年4月にクレディセゾンはオムニバスの株式を100%している(関連記事)。いわゆる「GAFA」、GoogleやAmazon、Facebook、Appleなどの巨大プラットフォーマーが大きなシェアを持つ中、「決済」と「広告」を軸に、クレディセゾンが持つビッグデータ基盤「セゾンDMP」を活用したデータビジネスを強化することが狙いだ。
親会社と子会社の関係になった両社がセミナーを共同開催したのは今回が初めてのことだ。ここで両社はAmazonを筆頭とするリテールテック企業あるいはリテール系データホルダーの存在が業界に及ぼす影響や、それに対抗する方法について、ゲストも交えて多彩な議論を展開した。
今回は、第1部で行われたオムニバス代表取締役CEOの山本章悟氏とクレディセゾン デジタルマーケティング部の栗田宏美氏のトークセッションから、両社が今タッグを組んで取り組んでいることとその狙いについて紹介する。
Amazonの広告ビジネスが破壊するもの
両氏はAmazon Goなどの世界基準の最先端リテールテックや、アリペイなどの中国決済市場が現状どうなっているかを語り、日本国内での動きについても触れた上で、データを使って売り場とブランドが共進化するための実現可能な施策について議論した。
米国の調査会社であるe-MarketterのレポートではAmazonの広告売り上げがどのプラットフォームよりも成長しているという結果が出たが、実際の決算報告はその予測をはるかに上回った。こうした状況を踏まえ、山本氏は、これまでECの会社だったAmazonが広告業界に参入してきたことで大きな変化が生まれると考えている。
現在、米国ではAmazonの影響でリアルの店舗が瀕死の状態に陥っているといわれる。Amazonの市場価値はもはやリアルの小売で世界1、2位を争うWalmartとTargetと足し合わせても及ばない。流通系企業には「Death by Amazon(Amazon恐怖銘柄指数)」が付与され、ほとんどが悲観的な評価をされている。これは百貨店系列であるクレディセゾンとその子会社のオムニバスにとっても人ごとではない。
山本氏は、ECなどを手掛けて集まったデータこそがAmazonの強さの源泉だと指摘する。Amazonはデータを基にUIを絶えず改良し続け、Webやメールなどを通じて適切なタイミングでレコメンデーションを実施する。
Amazonは最近ではリアル店舗にも進出して「Amazon Go」をスタートさせているが、こちらも店舗をデジタル化して「Grab&Go(待たずにすぐ買える)」を実現し、最高の顧客体験を提供することに注力している。また、購入プロセスを簡素化する「Amazonダッシュボタン」や「Amazon Alexa」によるボイスコミュニケーションになど、「次の世界」へ向けた投資を着々と進めている。
さらに新たな動きもある。日本ではまだ目立った動きを見せていないものの、米国においてAmazonはプライベートブランド(PB)を保有し、メーカーとしての顔も持つようになっているのだ。商品のジャンルも多岐にわたっていて、電池やHDMIケーブルなどの家電グッズは「Amazon Basic」の名で、ペットボトル水は「Happybelly」、紙おむつは「mamabear」というブランドで提供している。
データがあるから、何を作ればどこで売れるかが手に取るように分かる。こうなると、Amazonは流通業のみならず、あらゆるメーカーにとっても脅威になってくる。しかもモノを作りつつ売り場まで持っているのだから手ごわい。そして、「Best Seller」をAmazonのPB商品が占めるようになったとき、広告ビジネスが影響力を発揮してくるというのが、山本氏の見立てだ。
レコメンドに表示されるのは売れ筋商品だから、自然とAmazonのPB商品がここを独占してしまうことになる。メーカーがそれより視認性の高い場所に自社商品を表示させるには、有料の広告枠を買わざるを得なくなる。「現状ではまだ、AmazonのPB商品は比率的にそこまで脅威になるほどではありませんが、徐々に伸びてくるでしょう。少なくとも減ることはない」(山本氏)
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