Quora共同創業者兼CEOに聞く、知識共有コミュニティーのビジネスモデルに必要なたった1つのこと:日本でも本格展開(1/2 ページ)
日本国内でも本格的にサービスを展開し始めた「Quora」。知識共有コミュティーの未来とそこで展開されるビジネス像について、Quora共同創業者兼CEOのアダム・ディアンジェロ氏に聞いた。
例えば量子物理学に関する疑問について専門家の見解を知りたいとき、インターネットの膨大な情報を検索しても答えが得られるかといえば難しい。専門的な知識を持つ人から質の高い回答を得られれば、無駄な検索を繰り返す必要はないはずだ――。実名性Q&Aサイト「Quora」は、そんな人々の欲求を満たすサービスとして、2010年に米国でスタートした。当時、日本でもFacebookやTwitterに続く「Next Big Things」となるサービスになると話題になったため、英語版でアカウントを取得したアーリーアダプターも少なくないだろう。
【訂正あり】本記事は、初出時より訂正した箇所があります。
Quoraには、旅行や映画など一般的な質問もあれば、ビジネスの指南を受けたい、専門家の指示を仰ぎたいといった相談レベルの質問も掲載されている。Quoraのプロフィールページには、実名と経歴、そして過去の回答と評価が掲載される。良い回答をすれば評価が上がり、無価値な回答をすれば評価が下がる。質問、回答ともに無料で利用できるQuoraだが、この仕組みによって、自然と回答の質が高くなり、それがQuoraの最大の特徴となっている。北米では、前米国大統領のバラク・オバマ氏やカナダ首相ジャスティン・トルドー氏、Facebook COOシェリル・サンドバーグ氏、Wikipedia創始者ジミー・ウェールズ氏など、回答者リストにそうそうたる名前が並ぶ。
サービス開始以降、日本ではあまりQuoraのニュースを耳にすることは多くなかったかもしれない。しかし、Quoraは英語圏において質の高いコミュニティーを育てることに集中しつつ着々とビジネス拡大のチャンスをうかがってきた。2016年には満を持して多言語化を進め、2017年11月には日本語版の提供も開始している。2018年6月には日本語版において、宇宙飛行士の野口聡一氏やエジプト考古学者の河江肖剰氏など著名な専門家に対して直接質問ができる「質問受付機能」を提供開始した。
Quoraが目指すものは何か。これらのサービスを無料で利用可能にするために、どのようなビジネスモデルを採用しているのか。そして、企業はマーケティングやPRの観点でQuoraのコミュニティーとどう付き合えばいいのか。Quora共同創業者兼CEOのアダム・ディアンジェロ氏に話を聞いた。
大規模になってもコミュニティーの質を落とさないために
――2010年のサービス開始後これまで、Quoraがどのように成長してきたのか教えてください。
ディアンジェロ氏 Quoraは世界中にいろいろな知識を共有するという使命を持って始めたサービスです。当初はシリコンバレーのテクノロジー系スタートアップ企業の人々が友達間で知識共有することを目的としてスタートしました。2017年6月には全世界でのユニークビジター数が月間2億人を超えています。他にも知識共有サイトはありますが、Quoraがそれらと異なる点は、コミュニティーの品質にこだわっているところです。
――Q&Aサイトにおけるコミュニティーの質とは、質問に対して適切な回答者が適切な回答を与える仕組みがうまく回っていることと理解していますが、しっかりとした知識を備えた回答者がQuoraで質問に答えるモチベーションとは何でしょう。
ディアンジェロ氏 人によってさまざまです。純粋に回答を楽しむ人、人を手伝いたい人、役に立ちたいという人もいます。英語版ではQuoraで質問に答えることで専門家としての地位を確立した人もいます。ただ、自分の評判のために回答をしている人は多数派ではありません。
――コミュニティーが活性化しているのはどういうジャンルですか。
ディアンジェロ氏 サービス開始当初はIT系の技術者がユーザーの大多数を占めていました。ユースケースとして考えたとき、常に変化する最新技術に関して学び続けなければならない人は多いため、技術関連のニーズは今でも大きいと考えます。しかし、今は映画や料理、旅行など、もっと誰でも興味を持つようなジャンルが大半です。
――2017年11月に日本語版をスタートしました。半年を振り返って、事業の進捗(ちょく)をどう評価していますか。
ディアンジェロ氏 非常にうまくいっている手応えがあります。2018年6月にはQuora日本語版における質問への回答数は年初の5倍になり、さらに毎月20%以上のペースで増加し続けています。日本語版のユーザーは、回答の品質が高いのが特徴です。特に、プログラミングやソフトなど技術分野での回答がうまく機能しているようです。また、旅行関連などでもコミュニケーションが活発です。
【訂正:2018年6月19日12時50分 初出で「2018年1月にはQuora日本語版における質問への回答数は従来の5倍になり」となっていましたが「2018年6月にはQuora日本語版における質問への回答数は年初の5倍になり」に訂正しました】
――Quoraは実名での参加を原則としていますが、日本人にも違和感なく受け入れられているのでしょうか。あるいは、日本ならではのカスタマイズを施している部分もあるのでしょうか。
ディアンジェロ氏 私は個人的に日本に10回以上観光に来ていますが、日本人は品質にこだわる文化を持っていると感じています。私たちのサービスはそうした点で日本人に非常に合っているものだと考えています。「日本のマーケットだからこうしなければならない」という考え方は、今の段階では持っていません。会社として、常に学び、改善していくことが非常に大切です。最初はその国の様子を見るために小さく始めて、柔軟性を持ちながら適応していくつもりです。
――日本でもコンテンツが充実してきたというお話でしたが、英語版ではさらに膨大な質問と回答の蓄積があります。これを多言語化して提供する可能性はないのでしょうか。
ディアンジェロ氏 基本的には考えていませんが、ユーザーが良いコンテンツを見つけて翻訳するという可能性はあります。将来的に機械翻訳でそれを提供できるようになるかもしれませんが、少なくとも現時点においては難しいでしょう。コンテンツの質を維持できなければ、Quoraとしてそれを提供することはできません。
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