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医療分野のB2Bデジタルマーケティング、GSKのプロモーション最適化事例「SAS FORUM JAPAN 2018」レポート(1/2 ページ)

世界有数の製薬会社であるグラクソ・スミスクライン(GSK)がプロモーションの最適化でアナリティクスをフル活用した事例を紹介する。

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 グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)は、英国ロンドンに本社を構え、従業員数が約10万人(日本法人の従業員数は約3000人)という巨大製薬会社である。事業の主力は医療用医薬品で、気管支ぜん息治療薬「レルベア」、慢性閉塞性肺疾患治療薬「アノーロ」をはじめ、さまざまな医薬品を医療機関向けに提供している。

 本稿では、2018年5月にSAS Institute Japan(以下、SAS)が開催した「SAS FORUM JAPAN 2018」でGSKの日本国内におけるマルチチャネルアナリティクス部門の責任者を務める西垣直彦氏が行った講演内容から、同社がさまざまな分析で得たインサイトを紹介する。

西垣直彦氏
西垣直彦氏

MR(医薬情報担当者)の活動はデジタル化でどう変わったか

 製薬会社の医療従事者向けの営業活動は、一般的な事業会社のそれとは大きく手法が大きく異なり、MR(Medical Representative:医薬情報担当者)が中心となって進められる

 日本では現在5、6万人いるといわれるMRの活動は、顧客である医師に製品情報を提供するだけにとどまらず、顧客が実際に製品を使用することで出てきた副作用に関する情報などをフィードバックする役目も担う。

 かつてのプロモーションは、このMRを中心としたディテール(医療従事者向けの説明)活動や学会、小規模セミナーの開催などが主流だったが、2000年頃からのテクノロジーの発展で、デジタルのプロモーションソースが開発された。GSKでもオウンドメディアの展開に力を入れてきた。

 今日の医療関係者はMRからの情報提供だけでなく、エムスリーやケアネットなどが運営する医療情報に特化したコミュニティーサイトやSNSなど、デジタルの情報源からも情報を得られるようになっている。このように環境が変化する中で、製薬会社は患者への疾患啓発を含め、どのように効果的なプロモーションを展開できるかに日々取り組んでいる格好だ。

 GSKでは、プロモーションの最適化を行うため、アナリティクスを活用している。国内では政策的に医療費削減が進められているが、製薬会社の利益確保という観点でいえば、これは逆風が吹いていることにほかならない。

 やみくもなプロモーションは医療従事者にとって情報過多の状況を招く。印象に残らないプロモーションはムダでしかない。グローバルな製薬会社といえども健全な経営を維持するには、コストの最適化は必須だ。また、医療従事者との良好な信頼関係構築と維持に努めるという意味でも、必要な情報を適切に提供するプロモーションの最適化は製薬会社にとって急務といえる。

 「医薬品プロモーションの肝は、医師や薬剤師に適切な情報を正確に早く伝えること。だから分析に取り組まなければならない」と西垣氏は語る。チャネルごとに効果を可視化し、それに基づいたリソースの再配分を行うことで、漫然と行いがちなプロモーションを最適化しようというわけだ。

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