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大阪ガス 河本 薫氏とDataRobot シバタアキラ氏が語る「AIの民主化」マーケティングや営業部門は始めやすい(1/2 ページ)

DataRobotは市民データサイエンティストの育成プログラム、プロジェクトコンサル、ツールの3つをパッケージングした「AI-Driven Enterprise Package」を2018年4月1日に提供開始する。これにより同社が目指す「AIの民主化」とは何か。

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 DataRobotの日本法人であるDataRobot Japanは2018年3月13日、機械学習自動化プラットフォーム「DataRobot」のライセンス最大50人分と、ビジネスアナリストや市民データサイエンティストの育成プログラム、さらにAIのビジネス活用に欠かせないプロジェクト推進のコンサルティングの3つをパッケージにした「AI-Driven Enterprise Package」を2018年4月1日に提供開始すると発表した。本稿では、発表に先立って開催された記者向けの説明会から、この新たなソリューションの特徴と、DataRobotが目指す「AIの民主化」について紹介する。

DataRobotの日本市場参入から1年

 DataRobotは、機械学習のワークフローを大幅に自動化し、分かりやすいユーザーインタフェース(UI)で提供するツールだ。同社には世界中のデータサイエンティストがデータ分析の技能を競うコンペサイト「Kaggle」でランキング1位を記録した人材が複数在籍しており、その知見がツールに埋め込まれている。つまり、DataRobotを使うことで、誰でも簡単にトップレベルのデータサイエンティストの予測モデルを使えるというわけだ。また、モデル生成だけでなく事業に実装し導入するところまで自動化していることも大きな特徴といえる。

 もう1つ、AIの民主化を目指す上でDataRobotが重要視しているのが「ブラックボックス化を防ぐ」という点だ。精度の高い予測結果が出ても、「なぜその予測結果になったのか」が説明できないモデルは使いにくい。DataRobotでは、生成した各モデルにおいて、どの特徴量がどの程度影響を与えたかをある程度可視化し、機械学習を「グレーボックス」化してくれる。

 日本国内でサービスを開始して1年。DataRobotは直販網を持たず、販売はパートナー企業を通じて行われる。システムインテグレーターや大手広告代理店など、パートナー企業は1年で10社に増えた。そのかいもあって、2017年だけで日本は同社にとって世界で2番目の市場に成長したという。導入企業には、大阪ガスや博報堂、リクルート、三井住友カード、パナソニック、ソフトバンクC&S、LIFULLなど、そうそうたる名前が並ぶ。

AIの民主化へ

シバタアキラ氏
DataRobotのシバタアキラ氏

 今回の発表の背景となる課題であり、DataRobotがさらなる成長に向けた鍵になると見ているのが「AIの民主化」だ。

 DataRobotのチーフデータサイエンティストとして日本市場を担当するシバタアキラ氏は、データサイエンティストに必要な要素として「数学統計の知識」「プログラミングスキル」「事業ドメインに関する知識」の3つを挙げる。理論を理解し、それを技術に載せ、実ビジネスに意味のある問題を解決することが求められているというのだ。しかし、実際にはこうした人材は「ユニコーン」に例えられるくらい希少で、なかなか見つからない。

 「データサイエンティストの取り込みには日本でも多くの企業が苦労をしている。事業部門主体で、非専門家でもAI活用ができないかと、非常に関心が高まっている」(シバタ氏)。

 データサイエンティストと同じスキルはなくても、ツールの力を借りることでデータサイエント並みの分析ができるシチズンデータサイエンティストを育てられれば、社内の多くの課題が解決できる。そこで、今求められているのが「AIの民主化」だ。

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AIの民主化への道のり《クリックで拡大》

 「LOB(事業部門)が主体となることでインパクトのあるテーマを実装まで持っていくことができる。それを成功させるためには“シチズンデータサイエンティスト”がたくさん必要になる。そのためにDataRobotのようなAML(Automated Machine Learning:機械学習自動化)ツールと、組織によるサポートがキーになる」とシバタ氏は強調する。

 AI-Driven Enterprise Packageには、DataRobotのライセンスとそれを使う人のコーチング、実際にAIプロジェクトを推進し実装する支援活動が含まれる。

 DataRobotでは実証実験はほとんど行わない。海外でも国内でも、実ビジネスで機械学習を運用してもらうことを実現してきた。AI-Driven Enterprise PackageにはDataRobot Japanが前出の日本企業と進めてきたプロジェクトを通じて得たノウハウを凝縮した。

 なお、顧客によってはより早く結果を求めるケースもあるので、実際の分析そのものをサポートするサービスもオプションで用意する。

まずはマーケティングや営業部門から始めてみる

 同社の顧客の中には、トレーニングの結果、事業部門の非専門家でもかなり高度な分析ができるようになっているケースもある。企業によっては既に、売り上げ予測や見積もりが成約する確度などを営業の現場の人が分析しているという。不良品の選別など生産管理やR&D(研究開発)におけるシミュレーション、金融機関における貸し倒れリスク判定、採用した人間のパフォーマンス予測などのHR(人事)など、幅広い業種や職種で導入が進んでいる。

 「始めやすく効果が出やすいという点で、まずマーケティングや営業から導入する企業が多い。データを使ってどのお客さんから売り上げがあるか、あるいは離反するユーザーは誰か予測するなど、テーマを具体化するところから一緒にやらせてもらっている。テーマを考える上で重要なのはアクション。離反分析でやめてしまう人が分かっても、やめさせないためのアクションがなければ意味がない。エンドを見据えた上でテーマを具体化することも、パッケージには含まれる」(シバタ氏)

 使いやすくかつ効果の出やすいところから始め、徐々に全社に機械学習の利用を進め、最終的には誰もが機械学習で自社の課題を解決できる体制を整えられるようにする。AI-Driven Enterprise Packageはツールを提供するだけでなく、それを使う人と支える組織を作ることに貢献する。同社では今後、DataRobotの利用を促進する一方で、パートナー企業を通じて特定の用途に特化したソリューションを提供することも予定している。

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