B2Bエージェンシーの世界選抜とグローバルマーケティングについて語り合う:庭山一郎の「欧州マーケティング紀行」 【後編】(2/3 ページ)
B2Bマーケティングエージェンシーの各国代表が集うIDN(InterDirect Network)。今回は同組織の役割や現在直面する課題について解説。
日本企業としてエグゼクティブ会議に初参加
今回のエグゼクティブ会議は、当社にとって初めての参加になること、そして多くのメンバーが日本市場にとても興味があるということで、会議の初日に私が30分のプレゼンテーションを行いました。タイトルは「Japan is no longer a country that is mysterious to you」、つまり「日本はもう、訳の分からない国ではない」というものでした。
欧州の人たちから見ると、日本は第二次世界大戦後の焼け野原から奇跡の復興を遂げ、瞬く間に世界の経済大国に上り詰めながら、マーケティングについてはほとんど語られることがなかった不思議な国でした。そこで、日本のB2Bマーケティングの現状とその背景、歴史、そしてこの数年間に起きた大きな変化とこの先にある日本企業のグローバルマーケティングの近未来まで、まとめてお話ししました。
コーヒーブレイクや夜のパーティーでは、参加者から「とても良かった」「日本のことがやっと分かった気がしたよ」「こんな風に日本のB2Bマーケティングを説明してくれたのはあなたがはじめてだ」と、ほめてもらいました。
欧州のクリエイティブは世界最高峰レベル
CRM/SFAにMA、DMPなどのマーケティングテクノロジーの数や、開発スピードなどにおいては、米国が世界の中心です。しかし、もう一方の重要な要素であるクリエイティブのレベルの高さにおいては、欧州にはいつも圧倒されます。
それは、Webデザインに限りません。企業のロゴやサイン、包装紙、パンフレット、さらには再開発の街並みやレストランの店舗デザインなどに至るまで、クリエイティブというのはその国の歴史や文化を反映するといわれる理由が良く分かります。
欧州の中でも総合的なレベルが高いのは、英国とオランダだと思います。英国はノーブルでスタンダードなデザインを得意とし、グリーンやネイビーブルーを使わせたら英国にかなう国はないでしょう。英国のノーブルなデザインに少しだけ欧州らしい明るさを足した感じがするのがオランダのデザイン(ダッチデザイン)です。何しろ「光の魔術師」と呼ばれたレンブラントやフェルメール、ゴッホを生んだ国であり、アムステルダムは芸術と運河の中に人が住んでいると言っても過言ではない街です。このダッチデザインは世界的にも注目されており、多くの企業がオランダのデザイン会社をプロジェクトに加えています。
そして、色使いのセンスで圧倒するのは、フランスです。デザインの傾向としては白の使い方が傑出していて、一目でフレンチデザインと分かるものが少なくありません。
古城や壁画などの古いモチーフを使うのがうまいのは、やはり圧倒的な歴史を持つイタリアやスペイン、そしてポルトガルです。一方、淡いトーンで優しく心地よい世界を表現するのはデンマークやスウェーデン。さらに、白を基調にした独特のデザインはフィンランドやノルウェーです。そして質実剛健で無駄のないのがドイツで、これが工業デザインで多く採用される理由でしょう。
こうしたクリエイティブの多様さも、IDNが持つットワークの強みです。米国企業が基本デザインをデンマークに依頼し、Webのコーディングはインドで、制作物などの詳細デザインはオランダで行うという事例を見ましたが、それは見事なキャンペーンが驚くほどの短納期と低コストで実現していました。
こうした異なる文化を持つ国からなるこのIDNの最大の特徴は、メンバーの仲の良さです。今は引退したファウンダーのバンデンバスキン氏のコンセプトが受け継がれ、規模よりも企業文化、役員の人柄などを選考基準にしていることがよく分かります。現在の代表であるフランスのギョーム・ヴィレモ氏も、IDNのカルチャーを何より大切に考えています。
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