嘉永2年創業 山本海苔店が取り組む「若者のお歳暮離れ」対策としてのO2Oマーケティング:老舗×ソーシャルギフト(1/2 ページ)
江戸時代から続く老舗海苔店が、スマートフォンで手軽に贈りものができるソーシャルギフトサービスを導入。その背景にある市場の変化と今後の展望について聞いた。
日頃世話になっている人へ感謝の意を表すために贈りものを届ける「お歳暮」「お中元」といった風習は日本人の暮らしの中に深く根付いている。本稿執筆中の12月はまさにお歳暮シーズン真っただ中だ。
しかし、この贈答文化が年々縮小しているといわれる。B2Bつまり企業間でこそお歳暮のやりとりはまだ残っているものの、親子や親戚、恩師や仲人といった人に個人でお歳暮を届ける機会が少なくなっているのは、読者にも心当たりがあるのではないだろうか。
矢野経済研究所が発表している「ギフト市場に関する調査結果 2016」によると、2016年のお中元、お歳暮の市場規模は小売り金額ベースで1兆8140億円で着地する見込みだが、縮小傾向は続いている。
この傾向を深刻に受け止めているのが、1849年(嘉永2年)創業の老舗で高級焼き海苔を製造販売する山本海苔店だ。贈答品の中でも長らく重宝されてきた海苔は、かつて年間80億枚生産されるうち16%は贈答品として消費されていた。しかし、バブル崩壊前の1985年をピークに市場は縮小し、現在は2%にまで落ち込んでしまっているという。
そもそもなぜ贈答品には海苔なのか。山本海苔店専務取締役 営業本部長の山本貴大氏は、次のように説明する。
「海苔は『運草(うんくさ)』とも呼ばれます。海苔の養殖は江戸時代から始まりましたが、その生態が解明されたのは1949年のことです。それまで、よい漁場探しは漁師の勘に頼るしかなく、『獲れたらラッキー』というわけです」
お歳暮やお中元に海苔が重宝されたのは、縁起物ということ以外にも理由があるという。山本海苔店のテレビCM(※)を見たことのある人ならイメージできると思うが、もともと贈答品は、風呂敷にくるんで自ら持参するものであった。そのため、持ち運ぶ際の軽さが重要になる。また、特定の時期に贈りものが集中するため、日持ちのしないものは避けるのがマナーとされた。その両方の条件を兼ね備えつつ、高級感もある海苔は贈答品の代表格だったわけだ。
※イメージキャラクターに女優の山本陽子さんを起用したCMは1967年から続いており、専属モデル契約年数の世界最長記録としてギネスブックにも認定されている。
「しかし、海苔を選ぶこうした理由は、流通や保存技術の発達によって、次々と失われていきました。即日配送が当たり前になると、重さも日持ちも気にする必要がなくなります。さらに、社会全体における『虚礼廃止』の流れもあって、個人でお歳暮を贈る人自体が減り、顧客層の高齢化が進んでいるのが現状です」と山本氏は打ち明ける。
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