「360度コンテンツ」「VR体験」を広告コミュニケーションにどう活用するか:事例で見るVRの訴求効果 前編(1/2 ページ)
「VR元年」といわれた2016年。広告コミュニケーションの領域にVRを活用しようという機運が高まっている。その具体的な方法を事例とともに紹介する。
はじめまして。物延 秀と申します。スパイスボックスでクライアントのデジタルコミュニケーション支援に携わっています。
デジタルテクノロジーが日々進化する一方で企業のコンテンツ発信が活発化し、生活者とのコミュニケーションにおける表現手段も多様化しています。中でも現在、最先端の手法として注目されているのがVR(Virtual Reality:仮想現実)です。当コラムでは2回にわたり、VRコンテンツの活用方法について、最新の事例を紹介しながら考察していきたいと思っています(後編はこちらから)。
2016年はVR元年
2016年はVR元年といわれた年でした。10月にはソニー・インタラクティブエンタテインメントが「PlayStation VR」の国内販売を開始し、話題となりました。また、VRを楽しむためのデバイスとして、PCやゲーム機に接続して使うハイエンド機から、独自のセンサーとコントローラーを備えたゴーグルにスマホ(スマートフォン)を取り付けて使用する中間性能機、そのゴーグルが段ボールなどの素材でできた安価(1個1000円前後)なものまで、さまざまなものが登場しています。
ハイエンド型のデバイスとしてはFacebook傘下のOculusが提供する「Oculus Rift」やスマートフォン端末メーカーのHTCがゲームメーカーのSteamと共同開発した「HTC Vive」、中間型としてはサムスンとOculusが共同開発した「Gear VR」が、そして安価な段ボール型としては、Googleの「Google Cardboard」やスパイスボックスの子会社WHITEが製造・販売する「Milbox」「MilboxTouch」などがあります。
特に安価型スマホVRゴーグルが登場したことは、「YouTube」や「Facebook」などのSNSプラットフォームが360度コンテツに対応したことと相まって、一般生活者にも少しずつVRコンテンツへの接触機会を広げています。
VRという新たなタッチポイントが生まれたことで、マーケティングの分野においても、AR(拡張現実)やMR(複合現実)を含め、一般生活者向けのプロモーション施策にVRコンテンツを活用しようとする企業が増えつつあるようです。
VRによるコミュニケーションにはどのような可能性があり、企業はそれをどのように活用していけばよいのでしょうか。以下では、国内および海外の事例を基に活用方法を分類してみたいと思います。
VRを活用した広告プロモーションの4つの「型」
まず、具体的な事例の紹介に入る前に、「VR体験」といわれるものの中身について少しご説明したいと思います。今回紹介するVRコンテンツには、VRゴーグルを使って視聴する没入感の高いコンテンツと、PCやスマホで360度コンテンツをそのまま視聴するものがあります。今回は、「VRを活用したプロモーション」を広義に捉え、双方を紹介しますが、実際にマーケティングでVRを活用する上では、体験者の没入感を優先するのか、なるべく多くの体験者を獲得するのかなど、目的に合わせて戦略的に使い分けることになると思います。
まずは、これまでに実施されたVR活用事例を目的・内容別で、以下4つのカテゴリーに分類して整理します。
- 空間訴求型
“特定の空間に入り込むような体験をさせる”コンテンツ。実写360度動画、あるいは実写に近い3DCGのコンテンツが多く、比較的シンプルな手法。 - 非日常体験(シミュレーション)型
実際に体験するには危険が伴ったり、さまざまな要因で体験不可能な非日常の世界を体験させたりするコンテンツ。実写360度動画、あるいは実写に近い3DCGで制作するケースが多い。 - イベント連動アトラクション型
プロモーションイベントの話題化を狙ったアトラクション型コンテンツ。視聴覚の体験だけでなく、ライドマシンへの搭乗や水滴、風、香り、物との接触など五感に訴えかけるような仕掛けと組み合わせることで、よりリアルな体験を作り出す。 - エンタメ訴求型
アニメ、映画、ドラマ、ゲーム+VRといった、純粋なVRエンターテインメントコンテンツ。ドラマやゲームの登場人物の視点でストーリーを体験させるものが多い。
今回はまず、1の空間訴求型について紹介したいと思います。
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