「いいね!偏差値」とは何か?:脱「広告換算」へ、PRの効果を科学する(1/2 ページ)
PRの効果を語るとき、必ず持ち出される「広告換算」という概念。数が全てではないと頭で理解していても「他にどうやってPR活動の成果を測るのか」と悩む担当者は少なくない。どうするか。
PRの効果測定は広告のそれ以上に困難といわれる。リリースした情報がメディアにどの程度掲載されたか完全に把握することが難しいし、個別の記事がどのくらいのページビュー(PV)を獲得したのかも、直接知ることはなかなかできない。このため、記事の掲載数など、測定可能な範囲で限定された情報だけを追うことになってしまいがちだ。
そもそも露出量だけがPRの評価指標になっていいのかという疑問もある。PRの効果についてはしばしば「広告費換算すると○○円相当」という言い方がされるが、PRの目的はただいたずらに情報を拡散させるだけではないはずだ。
「PR活動におけるKPIが曖昧で、プレスリリースを出すだけで効果測定まで至っていない企業が少なくありません。属人的な直感や経験則によって行われがちなPR活動を、データによって科学する必要があります」と話すのは、PR会社アウルのエディトリアルコミュニケーション(※)領域の研究チーム「AUR Research Institute(ARI)」で代表研究員を務める池田慎一氏だ。
※広告以外のコンテンツを通じたコミュニケーション。
池田氏はPR活動の価値を「カバレッジバリュー(露出量)」「コミュニケーションバリュー(態度変容、反響)」「エコノミックバリュー(売り上げ、問い合わせ)」の3段階に分けて説明する。
「PRの目的を達成するためには、この3段階で追っていかないといけないはずですが、効果測定はカバレッジバリューだけで終わってしまっているケースが多い」(池田氏)
一方で、昨今はソーシャルメディアの普及で受け手の反応が可視化しやすくなった。そこで、「Facebook」や「Twitter」など、ソーシャルメディアで獲得する「いいね!」の数を定量的な指標とする企業も多くなっている。いいね!という能動的かつ自発的なアクションを、記事のコミュニケーションバリューを測る指標として重視しようというわけだ。
だが、ここにも問題はある。いいね!は掲載される記事によって、付きやすさに差があるためだ。同じ情報を発信しても取り上げられる媒体によって反応が違う。
実際、ARIは2016年3月1日から5月末までの3カ月間に公開された記事の中から、「ビジネス」「グルメ」「IT」「旅行」「スポーツ」「女性」の6カテゴリーに属する60メディア3000本の記事を分析調査した。その結果、IT系のメディアでは記事1本当たりFacebookで平均83個のいいね!が付いたのに対し、ビジネス系メディアでは記事1本当たり平均314いいね!が付くなど、ジャンルごとに差が大きいことが分かったという。故に、いいね!の数だけを額面通りに受け取って反響のよしあしを判断することはできないと、池田氏は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 1447件のメディア情報を閲覧可能に:Web記事の“効果測定クラウドツール”が機能拡充
PR会社のアウルは2015年8月18日、マーケティング担当者向けにWeb記事の効果を測定するクラウドツール「indicator(インディケーター)」に新機能を追加したと発表した。 - 脱「広告換算」:結局どれだけ拡散したのか? Web記事の露出効果を可視化するツールが登場
PR・マーケティング事業を展開するアウルは2015年6月16日、マーケティング担当者向けにWeb記事の効果を測定するクラウドツール「indicator(インディケーター)」を発売した。 - 【連載】インターネット時代の企業PR 第25回:PRの効果は測定できるのか?
企業のPR活動の活動において、もっとも大きな悩みの1つに「効果を明確な形で測ることが難しい」というものがあります。果たして、PRの効果は測定できるものなのでしょうか?