B2Bのブランディング、「売るための仕組み」さえあれば本当にうまくいくのか?:B2B営業を成果につなぐブランド戦略(1/2 ページ)
直接売り上げに貢献しないブランディングなどお金のムダ。特にB2B企業には何の意味もない……。そんな風に思っている人に、「セールスの数字を作る」という観点からブランディングについてお話しします。
この数年、生活者にはスマートフォン、企業にはITシステムソリューションが随分と浸透しました。結果、マーケティング意識の高い企業では、顧客データを取得して顧客セグメントごとにカスタマイズしたeメールを送ったり、購買のタイミングを計算してクーポンを送付したりする施策が当たり前のように行われています。企業から顧客への直接的なコミュニケーションや営業・販促のアプローチに役立つ“売るための仕組み”そのものは随分と整ってきたといえるでしょう。
しかし、それと同時に、
- 営業・販促施策に力を入れているが、CPA(顧客獲得単価)や顧客当たりの売り上げ、収益が悪化している
- マーケティングオートメーションなど、ITシステムを導入したが成果に乏しい
- コンテンツマーケティングと騒がれているが、そもそも自社ブランドの何を強みとしてコンテンツにすればよいのか見えていない。そんな状況下でコンテンツを大量生産することに意味があるのか?
という企業側からの声を聞く機会も増えた印象です。
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弊社インサイトフォースは、企業のブランドおよびマーケティング戦略領域の支援に特化したコンサルティングファームです。そのため、マーケティングオートメーションのようなITツール領域や、コンテンツマーケティングの施策は、間接的に相談を受けることはあっても、直接的にサービスとして提供しているわけではありません。しかし、クライアント企業からの相談が増えたこともあってこれらの問題を深掘っていくうちに、本質的な課題として共通性の高いパターンが浮かび上がってくるようになりました。
この連載では、これら問題の真因と解決アプローチを書いていきます。
土壌(潜在顧客)が悪化すれば、収穫(獲得顧客)も悪化する
成長を続ける企業は、一般的には活発な営業・販促活動を得意としている企業が多いようです。しかし、ネットであれリアルであれ、営業・販促施策のみに力を入れ続けていると、いずれ優良な見込み客を獲得し尽くし、これまでよりも自社の商品やサービスに関心が薄く、自社の強みとマッチしない潜在顧客を無理やり掘り起こして獲得する割合が増えてきます。
これが一定レベルを超え、競合との競争環境も激しくなって取引条件が悪化してくると、顧客の獲得コストやLTV(顧客生涯価値)のような、収益に影響のある指標が悪化していきます。その結果、これまでのように顧客獲得に向けた営業・販促コストを掛けられなくなり、俗に“成長の踊り場”と呼ばれる、売り上げと収益の停滞期がやってきます。
言葉としては適切ではないことを知りつつ、顧客獲得のプロセスをあえて分かりやすく“刈り取り”と表現するなら、こうした顧客獲得コストやLTVが低下している状況は、刈り取りのための土壌がやせ細っているということになります。農業でも、あまりに短期的な生産性を重視して同じ土壌を繰り返し使っていると、いつしか収穫量が減っていき、生産性が落ちていくといいます。企業のマーケティングにおいても、これと同じ状況が起こります。自社の商品やサービスに好意的な理解や関心を示す潜在顧客の母数が減少し、顧客獲得の数が減ることで、獲得コストが上がり、獲得できてもリピート率が低下していく状態です。
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