コラム
「エンゲージメント」(前編)――消費者がブランドの物語を共有する一員になるための心理的約束:【連載】行動経済学で理解する次世代マーケティングキーワード 第1回
マーケティングを語る上で鍵になる概念を経済コラムニストの視点から理解するマーケター向け教養読みもの連載。まずは「エンゲージメント」について解き明かす。
経済学を専門とする私がマーケティングに興味を持ったのは、テクノロジーが可能にしたマーケティングデータの詳細な分析が、人間の行動分析の発展に大きく寄与していると感じ始めたからだ。
経済学には、理論を扱う領域と計量を扱う領域がある。本連載の核となる行動経済学は、実際に経済学的実験を行い、ある条件下での「人間のふるまい(行動)」を計量化して、その大まかな傾向を理論化・体系化する分野である。
行動経済学は1970年以前にまでさかのぼる歴史があるが、心理学を包含する分野だったせいか、経済学の世界では長いことマイナーな存在であった。しかし近年では、実験手法とデータ分析が飛躍的に洗練され、これまでの経済学において説明が困難だったことを実証的に解明する強力さを身に付けてきている。
このデータ(計量化)による行動分析は、ビッグデータ分析などの例を引くまでもなく、まさにテクノロジーの進化が可能にした現在のデジタルマーケティングの手法と重なるところが多い。データを解析して行動仮説を立て、それを即座に検証することをなりわいとするマーケターの皆さんには、その親和性の高さが分かってもらえるのではないだろうか。
さて、本題に入ろう。
エンゲージメントは片思いでは成り立たない
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