第3回 ブランドデータを活用したブランドエクスペリエンス:【連載】IOT(Internet of Things)時代のブランドエクスペリエンス(3/4 ページ)
前回は“さわれるブランドエクスペリエンス”が生活者に及ぼす影響の大きさを解説しました。では、“さわれるブランドエクスペリエンス”はどうすれば実現できるのでしょうか? 今回はブランドエクスペリエンスにおけるデータサイエンス領域にポイントを絞ってお話をさせていただきます。
ブランドデータの活用/組み合せによるブランドエクスペリエンス
ブランドデータを分析するといった活用方法や、他データや技術と組み合わせることで生まれるブランドエクスペリエンスの作り方もあります。例えば、Googleの「Google Flu Trend」です。これはGoogleの検索キーワードとインフルエンザの発生地域のデータを組合わせて解析することによって、インフルエンザのパンデミック予測を行うというサービスです。データをそのまま共有するのではなく、未来予測という新しい価値を取り入れたこのサービスは、ユーザーにGoogleらしい先進的なブランドエクスペリエンスを提供することに成功しています(世界のインフルエンザの流行を探る)。
続いて、ワコールの「ワコールラブエイジングミラー」。ワコール人間科学研究所のデータと、ユーザーの生活習慣に対するアンケートデータ、体型画像をデータを組み合わせて、女性のバストを中心とした10〜30年後の体型の変化のシミュレーションを行うインタラクティブデジタルサイネージです。数値化された生活習慣のデータと人間科学研究所の30年分の女性の体型データというブランドにまつわるユーザーの調査データを元に、サイネージで撮影された画像データのモーフィングを行い、未来の女性の体型を表示したという事例です。
屋外広告と組み合わせたBritish Airwaysの「#lookup in Piccadilly Circus」も面白いです。
サービスの情報である航空機位置情報と屋外広告GPSデータを連携させ、広告内に表示される男の子がその上空を飛んでいる飛行機を指差して、どの便でどの空港から飛んできたかを表示してくれます。
データの新しい体験活用方法=データフィジカライズ
そして、最近ではデータビジュアライズの先、データフィジカライズともいうべき事例が出現しています。これはスクリーン内の体験にとどまらず、スクリーンの外に飛び出し、リアル空間に体験装置を構築したり、前回お話したようなhapticやクロスモーダルなどの身体性を伴う体験に置き換えるようなデータの活用事例です。
最も有名なのが、最近広告賞などの受賞が続き、大きな話題になっているホンダのSound of Hondaです。
これはアイルトン・セナの走行データを元に当時の走りを光と音で再現したインスタレーションで、サーキットに設置したスピーカーと照明装置が走行データに即した形で次々に光り、出音していきます。もはやディスプレーの中でのビジュアライズではなく、リアルな場所に再現された、五感で体感する装置となっています。
最後に、本日朝日新聞社1Fで公開された、体の動きにあわせて情報を表示し楽しめるデジタルサイネージ「朝日新聞フィジカル」もデータフィジカライズの事例といえます。
これはスパイスボックスと朝日新聞社の共同プロジェクトになりますが、朝日新聞社に社会科見学に来る小中学生が楽しんでもらうように設計されています。
サイネージに向かって鳥がはばたくように人が手を振ると、人型のアイコンが上昇しその「高度」に合わせたニュースが表示されます。体を動かすことによって、新たな情報が得られる楽しさを感じてもらい、これまでニュースに登場した事物やできごとへの理解を深めてもらえるようにしました。
ニュースの新しい価値を提示する、朝日新聞ならではのブランドエクスペリエンスとなっています。
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