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クリテオの日本市場における成功の秘訣と今後の戦略とはリターゲティング広告の雄

日本の広告市場に現れ、瞬く間にリターゲティグ広告を広めた、仏クリテオ。Yahoo! Japanとの戦略提携により、ますます注目を集めるクリテオの日本支社 代表取締役 上野正博氏に日本市場における成功要因と今後の戦略について聞いた。

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クリテオのビジネス概要を教えてください。

 クリテオは、SEMと同程度のROIがある「パフォーマンスディスプレイアド」というディスプレイ広告商品を開発/提供しています。もともとクリテオのビジネスモデルは、レコメンデーションエンジンを開発し、ECサイトに対してソフトウェアを販売するというものでした。しかし、事業としてスケールするのが難しく「アウトサイド」(=サイトの外)のレコメンデーションをしてみようということになり、レコメンデーション広告事業を推進、成功することができました。日本オフィスの設立は2011年の2月で、7月から事業を開始しています。

クリテオが提供するテクノロジーの特徴を教えてください。

 まず、クリテオのリターゲティング広告の仕組みを簡単に説明しましょう。 例えば服飾系のECサイトがあるとします。ユーザーが赤いTシャツAの商品詳細ページを見て、このTシャツを買わずにECサイトを離脱しました。そして他のサイト、例えばYahoo!ニュースや価格.comといった弊社がバナー広告枠を購入しているサイトを訪問すると、そのバナー広告枠にこのTシャツAもしくは関連度の高い柄のTシャツのバナーが表示され、ユーザーがクリックするとTシャツの商品詳細ページに誘導されるというものです。

 一度サイトを訪問したユーザーをトップページに戻すのではなく、実際に見た商品詳細のページ、もしくは商品リストのページに戻すという概念がクリテオの考え方なので、他のリターゲティング広告に比べると非常に高いROIが出ます。リスティング広告のようなパフォーマンス広告ではCPCのモデルが一般的ですが、クリテオも同じように広告主に対し、CPC課金の形態を取っています。SEMはキーワード単位ですが、クリテオの場合、例えばアパレル関係の顧客だと、上着、Tシャツ、パンツというようなカテゴリーごとに入札価格を決定できる形式になっています。

 他のリターゲティング広告との違いですが、一般的な技術ではユーザーの行動履歴を解析します。Aさんは、ギャル系の服をよく購買し、東京のレストラン情報をよく閲覧しているので、恐らく首都圏在住の20代の女性だろうという仮説が立ち、グループAに入れられる。Bさんは旅行によく行き、ビジネス書をかなり購入されているので30代の男性であろうと仮説が立ち、グループBに入れられる。そして、グループごとに静的なバナーが配信されるというのが、一般的にリターゲティングと言われる広告配信方法です。一方、クリテオの場合は、グループ分けしません。A、B、C、Dと完全にユニークなWebブラウザの閲覧履歴に基づき、Webブラウザごとにはユニークなバナーを配信していくので、ターゲティングする粒度が異なるというわけです。

クリテオが広告主に提供しているサービスを教えてください


日本クリテオ 代表取締役 上野正博氏

 クリテオの広告配信サービスは、人口知能のエンジンの上に、3つのコンポーネントを搭載しています。1つ目がレコメンデーションの広告配信、2つ目が広告の買い付け(入札)、3つ目がバナーの自動生成です。これに併せて広告主が、弊社サービスの申し込みから広告配信を開始するまでに、3つのことをしていただく必要があります。1つ目は、クリテオのタグを広告主のページに設置してもらうこと。これでユーザーのサイトでの行動、すなわち商品/カテゴリレベルでの閲覧状況や購買状況のデータを収集します。2つ目は、商品情報をデータフィード形式(商品アイテムのリストをファイルにしたもの。さまざまな属性を指定することで、各商品アイテムを重複なく定義できる)で弊社に送ってもらうことです。商品情報というのは、顧客の(広告)在庫状況に合わせて、レコメンデーションするために必要な「商品の商品名」「ID」「価格」といった基本情報を指します。3つ目は、バナーの制作です。背景と商品写真をいただくと、データフィードの情報に基づいてパーツを自動ではめ込み、バナーを生成するという非常にシンプルなものです。弊社はタグ導入時の技術サポート、バナーのクリエイティブ作成、運用後の最適化までサポートします。

 運用開始後にデータを分析した上で最適化する作業は、パフォーマンスを上げるためにとても重要です。広告を配信し始めてからCookie履歴を100%ためるまでに約30日間かかかります。配信開始後、2〜3週間で最初の自動最適化が始まり、パフォーマンスが見えてきます。4〜5週目には担当者が分析し、広告最適化の戦略を考え、そのプランに基づいて設定を行う。2ヵ月弱ぐらいで、いったんは最適化された自動操縦に入るという感じですね。この「人によるプランニングの頻度」は、顧客によって異なりますが、商品の入れ替えが激しいサイトは頻度を高く、そうでないサイトは月に1、2回といったところでしょうか。もちろんこれはシーズンによっても違います。

 また、Cookieデータが蓄積されるほど、Aという商品を購入された方は、Bという商品を購入しがちだという傾向値が分かってきますので、広告の打率が上がります。完全に(ユーザーがクリックして)見た商品でなくても、傾向値で商品のレコメンデーションができるのです。実際、リテール業界すなわち総合通販サイトの場合、8割近いユーザーが実際見た商品ではなく、勧められた商品を購入しているというデータが出ています。ファッションの業界やトラベルの業界では約5割が、同じように推奨商品の購入に至っています。

クリテオのサービスに向いている業種、向いていない業種はありますか?

 クリテオの「パフォーマンスディスプレイアド」に適しているのは以下の3業種です。1つ目は物販を中心としたEコマース、2つ目は予約を中心とした旅行関係、3つ目は人材や中古車といった複数の商品情報を比較するようなサイトです。また、例外はありますが、私どもが営業先の対象としているのは次の3つの条件を満たしている企業サイトです。1つ目は、月間ユニークビジターが30万以上、2つ目が商品点数300から500以上、3つ目は商品情報のデータフィードがきちんと揃っているサイトです。このデータフィードは重要で、画像データがないと、バナー上にクエスチョンマークが出てしまい、クリック率が下がってしまうのです。また残念ながら、今のところブランド広告が目的の企業とは相性が良くありません。そういうわけで、最初から広告代理店に「顧客からはキャンペーン予算やブランディング予算ではなく、販売促進費/営業費をいただいて下さい」と依頼しています。その結果、現在グローバルで約3000社の広告主と取引をしていますが、リテンション(継続率)は95%以上を保っています。

クリテオが日本市場で成功したターニングポイント、あるいは成功要因を教えてください。

 1つは、SEMのマーケット自体が飽和状態であり、無理をして入札している顧客が多いことです。SEM担当者は、社内で売り上げ向上のプレッシャーをかけられますから、効率が落ちてでもさらに入札価格を上げ、(広告在庫の)ボリュームを取りに行かなければならない。このニーズに対し、弊社はパフォーマンスベースのディスプレイ広告という選択肢を担当者に提供できたわけです。

 もう1つは、技術の確かさです。私はオーバーチュアの社長だったことがありますが、クリテオの事業を日本でやってみて驚いたことの1つは、製品のプラットフォームが日本の顧客に対してもきちんと作動したことです。海外製品を日本で提供する場合、ダブルバイト(アルファベットと日本語の文字数に起因するシステム互換性の問題)などの問題がありますが、(クリテオのツールは)最初から思った以上にきちんと動きました。大手顧客へも導入しましたが、(トラブルもなく)ほっとしたというのが正直なところです。大手企業が導入すると、他の企業への導入はスムーズになります。というのは、マーケティング担当者はかなりの確率で競合サイトを見るので、担当者自身がユーザーとしてリターゲティングされ始め、クリテオのサービスに気づいていただけるのですね。これが、日本市場でのターニングポイントです。

日本市場と海外市場の違いを教えてください。

 データフィードの活用に関しては、日米で大きな違いが見られます。特にEコマースがいい例ですが、日本ではデータフィードを活用してトラフィックの流入経路を複数に増やしてゆくという概念が、あまり浸透していませんでした。一方、アメリカはショッピングサーチエンジンの大手だけでも7、8社はありましたし、5年以上前からAmazonもマーケットプレイス市場へ本格的に参入しています。グーグルもショッピングサーチの機能を無償で提供するようになりましたから、データフィードがないとトラフィックの獲得に関しては対応できない状況にありました。そのような状況下ではデータフィードの活用が当たり前で、米国ではその周辺サポートを行う企業や技術も出現していました。

 ショッピング横断検索サービスの日本市場での(クリテオ)導入は、思ったより少なかったです。価格.comは、商品の横断検索というより価格比較サイトですから、ちょっとジャンルが違いますよね。大きな理由としては、楽天のパワーが圧倒的だったということです。対抗馬としてYahoo!ショッピングや、Amazonのマーケットプレイスなどが追随したので、単独Eコマース企業が自社サイトに投資し、そこにユーザーを集めようという動きが他の国に比べて日本は弱くなってしまったと思いますね。いい、悪いは別ですが。

 私個人の話になってしまうのですが、前職ではショッピングサーチエンジンを作っていました。2006年から5年間でEコマース業界の顧客に対して、だいぶデータフィードの啓蒙はできたと思いますし、変化も見られました。他の業界の顧客には、去年から色々な啓蒙活動をしながら、少しずつ理解いただけるようになってきたところです。また、自社でデータフィードを準備することが難しい顧客に対しては、サイトをクローリングし、データフィードをきちんとした形にするという代行サービスの企業も出てきたので、今後日本市場も変わっていくと思います。

今後の戦略や商品、サービスのロードマップを教えてください。

 キーワードは、「新規顧客」「検索キーワード」「スマートフォン」です。ご存知の通り、現在提供しているクリテオの技術では、一度顧客のサイトに訪問したユーザーにしかターゲティングすることができません。そこで、新規顧客の獲得やノンアクティブのユーザーを再度アクティブにさせるような、オーディエンスターゲティングができる商品群の開発を進めています。ヨーロッパではすでに一部販売を開始しています。日本でも2013年中にはサービス提供する予定です。

 また、検索キーワードに連動したターゲティングの新商品も開発しており、ベータ版の提供をフランス、ドイツ、英国で特定の大手クライアントと進めています。この商品は、広告主のリファラーデータを使ってサイトに訪問した際のサーチキーワードを解析し、レコメンドをする方法です。例えば、「黒 セーター」というキーワードを検索したユーザーに対して、黒いセーターの商品をバナー上で見せるというようなやり方です。この取り組みでは、広告主のリファラーデータだけではなく、外部事業者のデータと掛け合わせて、少し高度なこともしています。例えば、ファッション業界ではよくあることだと思いますが、黒いセーターが流行っている場合には、スカートやワイドパンツをセットで買う傾向にあるというデータが存在しています。このデータに基づき、推奨商品をセットでバナーに表示させることができるのです。

 最後はスマートフォンをはじめ、ほかのデバイスへの対応ですね。スマートフォンのAndroidブラウザの広告在庫に対して、日本でのテスト配信を開始しています。HTMLバナーをフランスで開発しているので、近々日本でも配信開始予定です。

※この記事はExchangeWire Japanの「Interview:クリテオの日本市場における成功の秘訣と、今後の戦略とは?」の原稿を一部修正して転載しています。


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