「ユーザーデータで広告を最適化」のその先へ――AudienceScienceの最新アドテクノロジー:米AudienceScience プレジデント Michael Peralta氏インタビュー
「アドエクスチェンジの登場で初めてオンラインとオフラインの広告に本質的な違いが出てきた」――。最新のアドテクノロジー技術が可能にするオンライン広告の可能性を米AudienceScienceのプレジデント Michael Peralta氏に聞いた。
インターネット広告の歴史を辿ってみると、最初はオフラインでの広告と同じように直接メディアの広告枠を購入するパターンから始まった。次に登場したのがアドネットワークだ。アドネットワークは広告代理店と似たような役割を果たす。複数のメディアを広告配信先として抱え、広告主のニーズに合わせて配信先を決めるのだ。そして、インターネットメディアの幅が広がり、それぞれのインプレッションが持つ意味に注目が集まる中、数年前に登場したのがアドエクスチェンジだ。
「アドエクスチェンジの登場で初めてオンラインとオフラインの広告に本質的な違いが出てきた」――。こう話すのは、米AudienceScience プレジデントのMichael Peralta氏だ。AudienceScienceは、行動ターゲティング技術を駆使した広告プラットフォーム「Audience Gateway」を提供する企業である。
「クリックスルーレート(CTR)は時間や曜日によって変わる可能性がある。例えば、夜中のCTRは0.001で、夕方は0.1だとすれば、必然的に夕方のインプレッションに対する価格が高くなる。高い金額を支払ってもいい結果が期待できるのだ。逆に、夜中のインプレッションは安くても価値がないと判断し、その時間帯には入札せず広告を表示させないという選択肢もある」(Peralta氏)
AudienceScienceが提供するのは、ユーザーデータを元に広告を最適化するためのプラットフォームだ。「われわれのデータ管理システムで、まずユーザーがどのような属性を持つのかを判断する。それを広告販売システムと統合し、インプレッションに対してリアルタイムで入札できるようにする」とPeralta氏は話す。
同社のシステムは、広告を展開する際にターゲットを絞り込むことはもちろん、広告を打った後にもクリックしたユーザーのデータを解析し、同じ行動をとる可能性の高いユーザーに対して優先的に広告を表示させることも可能だという。
またAudienceScienceでは、あるサイトで完売してしまった広告枠を、他社サイトの枠を使って追加販売する仕組みも提供している。例えば、Aという新聞社がビジネスエアラインユーザーをターゲットとした広告枠をBという航空会社に販売したとしよう。B航空が特定の月の広告枠をすべて買い取ったとすると、この枠に他の航空会社の広告を出すことはできない。しかし、新聞社Aのビジネスエアラインユーザーがアクセスするサイトは、新聞社Aのサイトだけではないはずだ。他サイトを訪問した際も、このユーザーが新聞社Aのユーザーかつビジネスエアラインユーザーであるという属性に変わりはない。そこで、AudienceScienceでは、新聞社Aのサイトを訪問したビジネスエアラインユーザーが他サイトを訪問した際に、新聞社Aのユーザーとして認識させ、他サイトで別の航空会社が同じユーザーをターゲットとした広告枠を購入できる仕組みを提供するという。
「この機能により新聞社Aは、自社サイトでB航空が買い占めたビジネスエアラインユーザーをターゲットとした広告枠を、他社サイト上で、例えばC航空やD航空に販売することができる。つまり、自社サイトで広告を販売する以上の売り上げを上げることができる」とPeralta氏。AudienceScience Japan アジアパシフィック セールスディレクター 兼 日本支社 カントリーマネージャーの田中洋一氏によると、この仕組みはまだ日本では浸透していないというが、「一部の先端的なユーザーは興味を示している」とのことだ。
また、同社の技術を使えば、特定のユーザーに対して表示する広告の回数を複数のサイトに渡って制限することも可能だという。「例えばある広告主が、特定のユーザーに6回広告を表示させたいとしよう。さまざまなサイトに広告を出していると、ユーザーは異なるサイトごとに6回ずつ同じ広告を見ているかもしれない。しかし、われわれの技術を使えば、サイトAで3回広告が表示され、サイトBであと3回広告が表示された後は、サイトCを訪問しても同じ広告は表示されない」とPeralta氏は説明、「この技術を使って広告の効率性が50%向上した顧客もいる」と述べた。
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