第3回 売れない原因を突き止める方程式:【連載】日本の未来を切り拓くBtoBマーケティング
「売れない原因」を探すことからマーケティングの旅は始まります。営業スキルなのか? 価格なのか? 流通チャネルなのか? 今回は売れない原因を突き止める方程式を解説します。
売れない原因を突き止める
マーケティングが「売れる仕組みを作ること」であるなら、売れない原因を突き止めることも大切な仕事です。私が所属するシンフォニーマーケティングでは20年前から以下の方程式を使ってチェックしています。
売り上げ = 案件数 × 決定率 × 案件単価
この方程式には2つのポイントがあります。
1つ目は「1つの変数を上げるだけで効果は出る」ということです。
企業は目的変数である 「売り上げ」 を作りたい、あるいは思ったように上がらなくて困っています。ですから、この方程式を示すと、3つの説明変数それぞれに担当を付けて、同時に全部を上げようと考える人がいるのです。私の経験ではそんなことをする必要はないし、もし3つ同時に上げることに成功したら、それが製品にせよ人にせよ納品が間に合わないと思います。
説明変数同士の関係は「積」、つまり掛け算ですから、1つの説明変数を上げるだけで十分にレバレッジ(てこ)が効いて売り上げを上げることができるのです。
もう1つのポイントは、「どの説明変数を上げるにしても、そのことによって他の変数を下げてはいけない」ということです。例えば案件数を増やす目的で「案件の定義」を緩くすれば、決定率が低下します。それぞれの定義を変更してしまえば意味がないのです。また手っ取り早く売り上げを上げようと案件単価を上げれば、決定率が激しく低下し、悪くするとゼロになるはずです。掛け算ですからゼロがあれば答えはゼロにしかなりません。
私はこの理由で案件単価を上げることは極力避けるようにしています。
となると、残りの2つの変数、つまり「案件数」か「決定率」のいずれかを上げることで売り上げを上げなければなりません。
売れない原因は「決定率」にはない
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