プランなきマーケティングオートメーションの落とし穴:【連載】コンテクストマーケティング序論 第3回(1/2 ページ)
コンテクストマーケティングを実践し、Webサイトを売るための手段にするため、マーケティングオートメーション(MA)をどう活用していけばいいのか。また、何が落とし穴になるのか。
前回「手軽なツールの導入でマーケティングを余計に難しくしていないだろうか」では、ツールの選定に関する1つの考え方を紹介しました。実際の課題に対してパッチワーク的に新しいツールを導入する、というのも方法ですが、副作用が伴う場合もあるという内容でした。今回は、マーケティングツールとして多くの方が検討している「マーケティングオートメーション」(MA)を取り上げ、導入を成功させるための考え方と落とし穴について、ポイントを説明したいと思います。
マーケティングオートメーションの役割をおさらいする
既にMAについてご存じの方も多いかと思いますが、ここで簡単にポイントを復習してみたいと思います。
MAはマーケティング担当者が最も欲しいMarketing Qualified Lead(MQL)を得るための支援ツールといってもいいでしょう。MAを導入すると、Webサイトとメール配信を連動させたキャンペーンなど個々のプロセスを自動化できるようになります。
もう少し掘り下げましょう。例えば、Webサイトの資料請求フォームにアクセスしてきた訪問者情報を確認したいとき、取れるのはフォームに入力された情報だけでしょうか。実は、WebサイトではCookieを利用して訪問者が過去に参照している情報を確認したり、訪問者がどのIPアドレスからアクセスしているのか、またそれを基に地域情報や会社情報などを得たりすることができます。これにより、最初の問い合わせの段階でも、フォームに記載された以上の情報を得ることができます。
さらに、問い合わせに対して「資料請求ありがとうございました」というメールを自動的に送ったとして、その後メールを開封したか、Webサイトに再訪問したかといった情報も確認できます。そして、その行動に合わせてエンゲージメントレベルの設定まで行うのが、MAの標準的な定義です。
上記のような場合、MAツールには「リード管理」「メール作成・配信」「フォーム作成」、そしてWebサイトと連動させるための機能が提供されているのが一般的です。ユーザーのエンゲージメントのレベルを設定するためのシナリオを作成することで、単なるアクセス解析やデータ収集のツールから1歩進んで、ユーザーへのメッセージの出し方を自動化することができ、単なる問い合わせではないMQLを作れるようになります。
なぜMAをうまく活用できないのか
Webサイトからリードを獲得し、サイトを通じた売り上げ向上のマーケティング施策を強化することが、MAツールの活用シナリオとなります。従来のようにアナリティクスツールを導入してサイトの分析をするだけでなく、フォーム作成ツールを利用して簡単に問い合わせフォームを作るなど、単体のソリューションでは実践できない効果を得ることができるでしょう。
では、このようなツールを導入すれば誰もが精度の高いMQLを獲得することができるのでしょうか。実は、ここに落とし穴があります。
MAツールの活用に当たっては、もう1つ重要なポイントがあります。それはカスタマージャーニーの設計です。カスタマージャーニーとは何かということについては、第5回の記事で取り上げますので詳細は割愛しますが、ここでは大まかに言って、MAを活用するためのシナリオと考えてください。
さて、そのカスタマージャーニーですが、誰でも最初からこれをきちんと設計し、MAをうまく活用できるようになるのかというと、実はそうではありません。
2016年11月にサイトコアが開催したイベント「Sitecore Digital Marketing Summit 2016」の基調講演で、元GEヘルスケア チーフ デジタルマーケティングエバンジェリスト・グローバルリーダーの飯室淳史氏が、「失敗から学ぶ組織を作る」ことについて言及していました(関連記事:「『顧客中心』の組織作り、誰もやらないならマーケターがやるしかない」)。まさに、マーケティングとは試行錯誤であり、実践した結果を分析してはその結果を踏まえて次の改善、新しい施策を実践していくというPDCAの繰り返しです。そして、それはツールが変わっても普遍的なオペレーションです。
つまり、MAもあくまで施策あるいはツールの1つであって、実施に当たっては「マーケティングの戦略(プロファイルの獲得、コンバージョンの獲得など)」を策定し、実践できているかどうかを問い、できていなければPDCAで改善していくことが求められるのです。
それからもう1点、マーケティングを実践していく上ではユーザーエクスペリエンスの改善、コンテンツの拡充は必要なタスクとして発生します。プロファイルを取得した後、効果的なコンテンツを見せることができるのか。十分にコンテンツがそろっているのか。そういったことを常に考慮する必要があります。コンテンツが増えていけば、サイトのデザインの見直しも必要となるでしょう。
MAツールの導入を検討している場合、シナリオを考えることができないと、単にプロファイルを獲得してメールを送るだけのツールになってしまいます。カスタマージャーニーを設計してサイトの改善プロセスを回し続けることができれば、極端な話、ツールを利用しなくても効果を出すことはできるのです。逆に、従来のマーケティングのオペレーションを軽減させることだけを想定して導入してしまうと、十分な効果を出せない結果となります。
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