プランなきマーケティングオートメーションの落とし穴:【連載】コンテクストマーケティング序論 第3回(2/2 ページ)
コンテクストマーケティングを実践し、Webサイトを売るための手段にするため、マーケティングオートメーション(MA)をどう活用していけばいいのか。また、何が落とし穴になるのか。
老舗楽器メーカーの成功例
ここで、大手楽器メーカーが登録数増加を目的に自社の会員制サイトでMAを活用した事例を見てみましょう。
シンバルの世界的メーカーであるジルジャンは、創業400年という歴史を持つ伝統ある企業で、オーケストラのパーカッション奏者や音楽学校の生徒や講師、ドラム奏者が主な顧客です。ジルジャンは老舗でありながら、デジタルを含めたさまざまなチャネル展開にも積極的に取り組んでいます。
同社は、休眠顧客を呼び起こし活性化するキャンペーンをMAで実施しました。「行動履歴に応じたスコア付与」に基づき、「メール(アンケート回答や登録を促すもの)をパーソナライズ」して、「スコアに応じて配信コンテンツを自動変更」するというものです。
「行動履歴に応じたスコア付与」では、例えば製品のユーザー登録をした場合には100ポイント、最寄りの販売店を検索、または会員制サイトへ登録した場合は50ポイント、製品の口コミ評価を閲覧し製品を購入した場合は25ポイントなど、Webサイト上での行動をスコアリングして興味対象や興味の度合いを判断します。そしてこのスコアリングに基づき、顧客区分ごとにコンテンツを自動変更(パーソナライズ)して、ターゲティングメールを配信するのです。この施策は会員登録数300%増、トラフィック数47%増など、高い成果を生み出し、エンゲージメント強化に大きく寄与しました。
コンテクストに合わせた情報提供でWebサイトは優秀な営業マンになる
MAの考え方をきちんと踏まえてカスタマージャーニーの設計ができたとき、より効果を見込める施策は何でしょうか。それがパーソナライズです。
例えば、メールを送ったが未開封のユーザーがサイトを訪問した際、そのメールで紹介しているコンテンツをWebサイトに露出できるとするとどうなるでしょうか。一連のマーケティング活動において、Webサイトでの施策とメールでの施策が互いに補完し合えるようになります。このような施策は、訪問者のプロファイルに合わせてメールやWebサイトをパーソナライズする機能があって初めて実現することができます。
これが本連載のテーマとなる“コンテクストマーケティング”を実践するための基盤になります。コンテクストマーケティングの実践では、Webだけでなくメールも含めてチャネルとして利用できるかどうかがポイントになります。コンテクストマーケティングに関しては、次回の記事でより深掘りしたいと思います。
前回の記事で紹介した事例に登場する企業、Danone Nutricia(ダノン ニュートリシア)では、この要素を取り入れたマーケティング戦略を実践しています。パーソナライズによって、販売や入会登録、エンゲージメントによるコンバージョン率を19%から205%に増加させています。カスタマージャーニーの設計、そして訪問者のコンテクストに合わせたコンテンツを展開することで、非常に大きな成果を得ることができました。前述の事例同様に成果を挙げています。
コンテクストに合わせた情報をパーソナライズで表示できるようになると、Webサイトは従来のカタログサイトから優秀な営業マンのような存在になります。実際のお店で、店員からお勧め情報を得たときのことを想像してください。お客さまのニーズに合わせたパーソナライズされた情報であればあるほど、購入につながりやすくなります。このようなコンテクストマーケティングを実践することで、Webサイトはコストセンターからプロフィットセンターへと変わります。
執筆者紹介
原水真一
サイトコア セールスグループ プリセールスマネージャー。2000年1月にマイクロソフトに入社、Microsoft.com/japan の担当を7年、Microsoft MVP Program のプログラムマネージャーなどを担当。2010年7月からデジタルマーケティングプラットフォームのパッケージを提供しているサイトコアに入社、営業、マーケティング支援、プリセールス、パートナープログラムなどの業務を担当。2015年10月〜2016年3月まではFIXERでマーケティングなどを担当したのち、2016年4月にサイトコアに復帰。プリセールスを中心としつつ、日本でのビジネスをより大きくするために、さまざまな業務を担当しています。
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