宇宙からキャベツの供給量を予測? JAXA×電通が挑む「需給連動型」という新しい広告の在り方
電通、JAXA、JA嬬恋村が連携し、人工衛星データを活用し、農作物の生育状況や出荷量、市場価格の予測に関する技術開発と実証実験を進めてきた。3社は、データで導き出された供給量の予測を活用し、広告の在り方を見直す実験を始める。
キャベツの生育状況を宇宙の衛星データで把握し、供給量や価格の予測精度を高めていく──。
電通、宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)、嬬恋村農業協同組合(群馬県嬬恋村、以下「JA嬬恋村」)では、人工衛星データを活用し、農作物の生育状況や出荷量、市場価格の予測に関する技術開発と実証実験を進めてきた。
農作物は天候や生育環境によって出荷量が変化するため、需給ギャップが生じたり、価格が変動してしまったりする課題がある。また、広域の畑で継続的に状況把握をするために、これまでは経験豊富な生産者が足を使って、一つ一つの畑を確認するなど、負担が大きくなっていた。
実証実験では、衛星データを活用することで、畑の状況や生育環境を効率的に把握。出荷量や価格変動について、実際のデータと高い相関を示す高精度な予測を導き出すことに成功したという。
夏秋キャベツの出荷量が全国1位で、6月下旬〜11月上旬にかけて約1億6000万個ものキャベツを生産する(※)という嬬恋村。JA嬬恋村 代表理事組合長の黒岩宗久氏は「必要な量を必要なタイミングで配給できれば、持続可能な農業の実現につながる。伝統的な農業の知恵に人工衛星という新しい技術を組み合わせることで、キャベツ生産をより強く、より持続的なものとしていきたい」と意気込む。
※参照:嬬恋村の高原キャベツ
8週間前の情報を見てキャベツ・畑を分析
電通、JAXA、JA嬬恋村では、人工衛星データに加え、現地調査データ、市場データなどを組み合わせ、キャベツの収穫時期、出荷量、価格変動の予測精度向上に取り組んできた。
実証実験の結果、8週間前の情報を見ることで、出荷の情報を高い精度で予測できると分かった。キャベツが結球した前後から、生育環境を段階に分けて把握する。
本取り組みは、JAXAが民間事業者と共同で事業を創出するプログラム「J-SPARC」の事業共同実証の一環で実現。JAXAでは、キャベツの生育把握に光学衛星を使用している。「雲などの影響によりタイムリーな把握が難しいため、合成開口レーダデータを合わせて活用していく方針だ」と、JAXAの奥野真理事は説明した。
供給が多いときに販促強化 広告の新たな可能性
今後は、キャベツの供給量に応じた、広告や店頭販売の最適化に取り組む。予測結果を基に、キャベツの供給量が増えると見込まれる時期に広告配信を増やしたり、店頭の広告を強化したりして、購買を促進する施策を実行していく。一方、キャベツの供給が減るタイミングでは、広告や店頭販促の実施時期、展開規模、訴求内容などを見直していく。
「農作物は天候や生育状況によって供給量が大きく変動する。一方、生活者の需要は供給量とは関係のない文脈の中で変動するもの。昨今では、SNSでの発信で需要が急増することもある。結果として、供給が増えているときに需要が増えないと、フードロスが生まれる。逆に、需要が上がったが、供給できないという場合は、消費者は『買いたくても買えない』状況が生まれ、生産者からすると販売機会の損失につながる」(電通 統括執行役員 深田欧介氏)
これまで広告は、ブランドや商品、サービスの知名度を高めるために活用されるケースが多かった。今回の取り組みで、供給量に応じて需要を調整できれば、フードロスの削減に加え、価格の安定にも貢献できるかもしれないと、深田氏は展望を語る。
具体的な取り組みとしては、8月24日から、首都圏および関西の量販店約50店舗で、嬬恋村産キャベツの出荷量や価格に応じて、広告と店頭販促を連動させる「需給連動型広告モデル」の実験的市場投入を進める。
広告モデルの実験では、味の素が協力に名乗りを上げた。キャベツの需給予測に連動し「Cook Do」<回鍋肉用>のメニュー提案を店頭・広告で実施していく。
電通の深田氏は、同取り組みの展望を以下のように語った。
「広告、あるいは店頭販促を、供給と需要をつないで、社会全体の需給を良い状態に近づけるための仕組みとして捉え直していく──こうした仕組みが確立されれば、他の作物、他の地域にも取り組みを広げていきたい」
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