ワークマンのアプリが「あえてデータを取らない」理由 「地に落ちた顧客満足度」を引き上げられるか(2/3 ページ)
「地に落ちた顧客満足度の向上を目指す」──9月1日、ワークマンの土屋哲雄専務のコメントが注目を集めた。既存・新規顧客両方に課題を感じる中で、低下気味だった顧客満足度を引き上げるために、公式アプリの提供を開始した。この公式アプリにおいて、ワークマンは「顧客データの取得」や「ECへの送客」をKPIに置いていない。
アプリは「情報の羅針盤」 データ取得やEC送客を重視しないワケ
アプリでは、在庫検索の機能を用意。どの店舗に何があるのかがすぐに分かるようにし、新規顧客と既存顧客の不満や不安に応えられるようにした。他にも、店舗検索や人気製品の先行予約、取り置きサービスなどを提供する。
顧客満足度改善の施策にアプリを選んだ背景には、顧客が最新情報をまとめて受け取れる仕組みを作りたいという意図がある。
同社は店舗の業態やもともとの製品数が多い上に、年間約1000アイテムの新作を開発している。新商品の案内やお得情報などを公式情報として発信することに加え、近年はSNSを通じて顧客が発信する非公式情報も溢れ、どれが最新情報なのかが分かりにくくなっていた。そこで、優先順位の高い情報や最新の情報をアプリでまとめて発信することで、顧客にとっても情報を受け取りやすい環境を整備した。
「アプリは、情報の羅針盤のようなイメージです。シーズンも含めた推しアイテムやコラボアイテムなど、その時々で注目してほしい製品があるので、アプリではそうした情報が埋もれないように優先順位を再設計し、お客さまにとっても欲しい情報が欲しいときに手に入るように発信したいと考えています」(荻原氏)
アプリだけ見ておけば情報をキャッチできる状態を目指し、開発した。トップにその時一番打ち出したい情報、その下にキャンペーン情報、さらにその下に顧客に合った新着商品などを表示し、「優先順位」を意識する(提供:ワークマン)
アプリ開発においては、情報の見やすさや使いやすさを最も重視した。また、「取り置き」サービスを用意するなど、店舗への送客も意識。情報を受け取ってから実際に製品を手に取ってみることでその機能性を感じてもらったり、商品を取りに行ったときに別の商品を購入してもらったり、あくまでアプリは店舗での買い物体験をサポートする存在と位置付ける。
「機能性ウェアだからこそ、実際に五感で体感してもらうことが大切」(松重氏)
一方で、顧客データの取得やECへの送客は、現時点ではあまり意識していないという。実際、同社のEC化率は2%と、他アパレル企業と比較して低い。
「顧客データを取得すると、その管理コストが商品代金に乗ることになります。ワークマンは低価格であることも強みの一つなので、その優先順位は高くない。それよりも、まずはお客さまに使いやすい、便利だと感じてもらえるようにアプリを改良し、そうした地盤が固まってから、データの取得や顧客セグメントに合わせたマーケティングについて考えていければと思っています」(松重氏)
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